ただし、解決策がないわけではない。扉が開閉する幅をより広く取れ、多くの車両のタイプに柔軟に対応できる昇降式ホームドアもその一つ。小田急も、2017年9月から2018年3月にかけて愛甲石田駅でこれの実証実験を行った。

小田急は2022年度までに、1日の利用客数が10万人を超える駅にはホームドアを設置する計画を、すでに発表している。その中には新百合ヶ丘、町田、本厚木など、特急停車駅も含まれるため、従来のタイプとは異なるホームドアを採用するなど、何らかの対応が取られることになる。

そして、車両面で初めて、ホームドアへの対応が取られたロマンスカーがGSEである。報道公開や試乗会の際、いささか違和感を覚えたのが、この車両の乗降扉の位置。インバウンド客の増加に伴い、必要性が増したラゲージスペースを4号車を除く各号車に設けたのはよいが、3・5号車については、これが客室外の車端部にあり、その内側に乗降扉が設けられていた。言うまでもなく、自分の荷物は自席から見える範囲において置きたいもの。その他の号車は客室内にラゲージスペースがあって安心感がある。

こういう配置となった理由として気がついたのが、ホームドア対策。つまり、車両のいちばん端に乗降扉を持ってこないための設計だった。3・5号車以外の号車は車端部に乗務員室やトイレ・洗面所が設けるため、乗降扉は「自然に」車端部を避けることができる。3・5号車にはラゲージスペースと客席以外、特別な設備はない。それゆえ、ふつうに設計すると、乗降扉は車端部になる。

  • 左:GSEの4号車には身障者用設備などが集中して設けられており、乗降扉は内側寄り。右:6号車はトイレ・洗面所、7号車は乗務員室が車端部にある

一方、片側4カ所に扉がある通勤型電車の車端部には乗降扉はなく、やや内側に寄っている。混雑に偏りが出ないよう、扉1カ所あたりの床スペースを均等にするための工夫だ。GSEの乗降扉の位置は、通勤型電車の扉位置に極力、合わせたと見なしてよいだろう。なお、身障者用の大型トイレや多目的室がある4号車は、車端部にこれらのスペースが広く取られているが、乗降扉の位置は、通勤型電車の車端から2ヶ所目の乗降扉と、それほどずれていない。

汎用性があるGSEの車体

GSEは小田急のシンボルとして、展望席がある先頭車両付きで製造されたが、ボギー車かつホームドアに対応できる設計となれば車体の汎用性は高い。EXEやMSEのように展望席がなく、途中での連結・切り離しに対応する貫通扉付きの先頭車を連結する可能性も、十分にある。

70000形「GSE」と名乗るかどうかは別にして、今後、登場してくる新しいロマンスカーはGSEの車体設計を基本とするつもりではあるまいか。設計に要する費用や手間は大きい。今後の標準と位置づけることも考えて、GSEは設計されたように見受けられる。