KDDIと新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)、テラドローン、セコムの4者は3月15日、神奈川県内のレジャー施設で記者会見を開き、複数のドローンを用いた警備の実証実験を行い、広域施設の遠隔巡回警備に成功したと発表した。

  • 実証実験の全体像

ドローンを活用した遠隔巡回警備とは

今回の実証実験はNEDOの「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」における「警備業務に対応した運航管理機能の研究開発」の一環として実施。

4G LTEのモバイル通信ネットワークを利用し、KDDIが構築したドローン専用基盤「スマートドローンプラットフォーム」を活用した。

同プラットフォームはドローン機体、3次元地図、運航管理、クラウドで構成され、モバイル通信ネットワークにつながったドローンの自律飛行や衝突回避など飛行ルート管理に加えて、ドローンが取得したビッグデータの蓄積・分析を可能としている。

目視外の長距離自立飛行が可能な「スマートドローン」(KDDIの通信ネットワークを利用することで、長距離で安全な運用を可能としたドローン)である俯瞰ドローン2機と巡回ドローン2機の計4機を利用し、広域施設の遠隔巡回警備を行う。

俯瞰ドローンは高感度カメラを搭載し、広範囲の状況を把握する。巡回ドローンは、スピーカー、赤外線カメラ、LEDライトを備え、不審者を発見した際に追跡し、不審者に対して「退去しなさい」と警告メッセージを発するなど、注意喚起ができる。

  • 俯瞰ドローン
  • 俯瞰ドローン
  • 俯瞰ドローン

  • 巡回ドローン
  • 巡回ドローン
  • 巡回ドローン

NEDO ロボット・AI部の弓取修二氏は「国としては2020年までに人口密集地域において物流をドローンで実施すること目指している。物流のドローンは活用の場としては有用なものだが、安全・安心な生活、セキュリティを担保するために活用することも重要な技術だ」と、強調していた。

  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構 ロボット・AI部の弓取修二氏

    新エネルギー・産業技術総合開発機構 ロボット・AI部の弓取修二氏

また、NEDO ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏は「プロジェクトは3カ年で実施するが、運航管理システムが大きな研究課題になる。気候状態などの情報を提供する情報提供機能、運航管理機能、衝突防止を主眼とした運航管理統合機能で構成されており、このパッケージを3年間で作り上げたいと考えている」と、意気込みを語っていた。

  • 新エネルギー・産業技術総合開発機構 ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏

    新エネルギー・産業技術総合開発機構 ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏

実証実験では、スマートドローンとしてプロドローン製のドローン4機に各機器を搭載し、運航管理室から施設内を遠隔監視。不審者の発見や注意喚起、不審火の発見、夜間警備などを実施した。

  • 実証実験のシステム構成

    実証実験のシステム構成

  • 行ルート表示卓、運航管理卓、信号監視卓、3D飛行ルート表示卓、監視カメラ卓、警備員配置卓、気象情報卓で構成した運航管理室の模擬

    飛行ルート表示卓、運航管理卓、信号監視卓、3D飛行ルート表示卓、監視カメラ卓、警備員配置卓、気象情報卓で構成した運航管理室の模擬

スマートドローンの特徴である目視外の長距離自律飛行を施設の警備に応用し、既存の防犯カメラで対処できなかった部分にドローンを活用。複数のドローンから届く映像を運行管理システムでは一元的に管理し、各ドローンのカメラ映像の制御に加え、遠隔で飛行ルートの変更をすることで、広範囲を対象に捉え、状況認識と対処が可能になるという。

これにより、ミッションの異なる複数のドローンを組み合わせることで広域監視の能力が向上し、大型施設などの警備が強化されるという。さらに、不審者の注意喚起や不審火の発見も可能となり、夜間警備のセキュリティ強化にもつながるとしている。

KDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部長の澤田拓也氏は「将来的には、われわれのモバイルネットワークを使い、警備のほか、鉄道、道路、電力と多様なサービスを提供し、ドローンの市場拡大に取り組む」と、将来的な展望を語った。

  • KDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部長の澤田拓也氏

    KDDI 商品・CS統括本部 商品戦略部長の澤田拓也氏

以下は、俯瞰ドローンで不審者を発見し、巡回ドローンが警告メッセージを出して不審者を退去させるまでの一連の動画。

2019年度半ばの商用提供を目指す

各社の役割として、KDDIは「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」における、警備業務に対応した運航管理機能の研究開発を推進。ドローンのLTE通信モジュールと運航管理システムを提供し、4G LTE通信ネットワークを活用した遠隔での自律飛行を実施。

テラドローンは、ドローン向け運航管理システム「TERRA UTM」、ドローン測量システム「TERRA MAPPER」を提供。警備用無人航空機の運航管理機能開発の実施主体を担い、複数機体の計画的運航の作成・管理、突発的運航の対応、空域の管理、情報提供機能との接続、機体および搭載機器の制御を行う運航管理システムを開発した。

テラドローン 執行役員 UTM事業責任者兼最高戦略責任者の金子洋介氏は「今回の運航管理システムは2つポイントがある。1つ目は3次元地図対応の運航管理システムによる高度からの空域の分割管理、2つ目は運航管理機能のAPI提供だ」と説明した。

  • テラドローン 執行役員 UTM事業責任者兼最高戦略責任者の金子洋介氏

    テラドローン 執行役員 UTM事業責任者兼最高戦略責任者の金子洋介氏

セコムは民間防犯用自律型小型飛行ロボット「セコムドローン」における、ドローン警備を手がけ、今回の警備アプリケーション開発の主体を担当した。

セコム 執行役員 技術開発本部長兼開発センター長の進藤健輔氏は「モバイルネットワークの利用により、サービスの提供がしやすくなるほか、複数のドローンによる警備の効果向上が見込める。これにより、安全・安心なセキュリティタウンが実現できると期待している」と述べていた。

  • セコム 執行役員 技術開発本部長兼開発センター長の進藤健輔氏

    セコム 執行役員 技術開発本部長兼開発センター長の進藤健輔氏

今後、継続的に実用化実験を行い、2019年度半ばの商用提供を予定している。さらに、既存の防犯カメラと併用することにより、広い範囲を昼夜問わず効率的に見守り、迅速な対応を行う高度なセキュリティ技術の実現を目指す考えだ。

  • 今後のロードマップ

    今後のロードマップ