エコ運転・安全運転は実現できたのか?

では、一連の施策に取り組んだ結果はどうだったのだろうか。本当にテレマティクスシステムは効果的だったのかは気になるところではある。

内田氏は「2015年の年間ガソリン使用量は前年比7.5%減(232kl削減)の2857kl(原油換算:2551kl)と大幅に削減できた。具体的には、ガソリン代が2014年から3700万円のコストダウン、有責事故が前年比16%減、速度超過違反が同47%減となった。これは間違いなく、運転のクセを直す特効薬だということが分かった」と、手応えを口にする。

  • テレマティクスシステム導入後の効果

    テレマティクスシステム導入後の効果

その後、2016年は前年とほぼ横ばいの2854kl(原油換算:2549kl)となったが、2017年1月には2015年の実績が評価され、省エネ大賞(省エネ事例部門)を受賞するに至った。

1つ気がかりな点としては、テレマティクスシステムの導入が特効薬となり、省エネ大賞を受賞したことは大いに評価できるものの、継続して大幅に削減することは難しい側面があるということだ。

しかし、2017年は前年比5.3%減の2705kl(同:2414kl)、走行距離は同5.5%減(テレマティスクス上の理論値)、危険挙動が同20.2%減(速度超過が同30.5%減、急加速が同31.8%減、急減速が同12.1%減)と、V字での削減を実現した。

  • 省エネ大賞受賞後の効果

    省エネ大賞受賞後の効果

「あくまでも推論だが、省エネ対象の受賞により社員の環境マインドがレベルアップしたのではないだろうか。省エネ効果と安全運転の向上につながった」と同氏は胸を張っており、今年も期待したいところだ。

  • 省エネ大賞のトロフィーと賞状を持つ内田氏(左)と桜井氏

    省エネ大賞のトロフィーと賞状を持つ内田氏(左)と桜井氏

自社導入で得たノウハウを活用したサービスを提供

同社では、テレマティクスシステムの自社導入の成果を踏まえ、法人用車両管理サービスとして「SKYEYE DMS」を2015年12月から提供している。現在は、トラック用の「RYKCC 101H」、普通社用の「RYKK104」(RYKCC 103の後継機種として2月中にリリース予定)を揃える。

  • 「SKYEYE DMS」の概要

    「SKYEYE DMS」の概要

  • 「SKYEYE DMS」の利用イメージ

    「SKYEYE DMS」の利用イメージ

内田氏は「自社のノウハウも含めてサービスを提供している。システムはデータ収集と通知までのため、これをいかに活用して効果に結び付けるかというのは、われわれのノウハウを活用することで解消できる」と、意気込みを語る。

直近の導入実績は約2050台(2018年1月時点)で、運送業(埼玉県)や介護業(大阪府、神奈川県)、金属リサイクル業(神奈川県)などで活用されている。

特に、運送業のユーザーは571台に搭載しており、従来はドライブレコーダーを車両に搭載していたが、遠隔地から車両管理できないことや、運転マナーの向上と事故防止が課題になっていたという。

SKYEYE DMSの導入により、各車両の運行状況を遠隔地からリアルタイムに把握し、全車両の一元管理が可能になったほか、イベント機能により危険運転を把握することで的確にドライバーを指導することにつなげている。

自動車を業務で使用する企業としては、事故撲滅に加え、コストを圧迫するガソリンの使用量削減は至上命題だ。これまで、自動車の運行管理に苦慮していた企業にとってキヤノンS&Sの取り組みは「特効薬」になり得るかもしれない。また、特効薬とは言わず、課題解決に対する1つのヒントになるのではないだろうか。