立命館大学は、ウエアラブルデバイス用の無線送電手法として、受電機との距離に応じて送電電力を制御する電力制御付き送電機を開発したこと、ならびに資生堂と共同で、レクテナ(アンテナ)、LED、光ファイバを一体化した小型受電機をつけまつげに取り付け、電池や配線なしで1.5m離れた場所から点灯できることを確認したことを明らかにした。

同成果は、同大 理工学部の道関隆国 教授らによるもの。詳細は英国・スコットランド グラスゴーにて開催された国際会議「IEEE SENSORS 2017」にて発表された。

これまで非接触給電方式としては、コイルやコンデンサによる磁界や電界変化で、機器の2次電池を充電するシステムが実用化されているが、電磁波で近距離から機器に直接給電して、その電力で駆動させる手法は、まだ実用化されていない。今回開発された受電機との距離に応じて送電電力を制御する電力制御付き送電機は、そうした機器の直接駆動を可能とするもので、人体と送電機間の距離が変動しても、一定以下の電界強度で人体に電磁波を放射する電力制御技術を搭載。これにより、人体が送電機に近づいた場合でも、自動的に電界強度を小さくでき、人体の電磁波に対する防御指針(61.4V/m)以下を常に維持することを可能とした。

人体と送電機の距離の測定には超音波センサを活用。測距データをCPUで処理し、一定の送電電力となるように制御を行っているという。また、送電アンテナには、パッチアレイアンテナを採用したほか、送電機の送電周波数としては、受電機のアンテナサイズを小さくすることを目的に、2.4GHz帯を採用したという。

実際に試作された光るひけまつげは、直径1mm、長さ30mmの発光型光ファイバにレクテナ(アンテナ、整合回路、および、整流回路)とLEDを組み込んだ光ファイバ一体型の小型受電機を採用したもの。LED回路を構成する受動部品を縦積みにすることにより、整合回路と整流回路のサイズを4mm×3mm×1.5mmまで小型化したほか、アンテナ線を光ファイバの先端部で巻きつけることで、アンテナサイズをファイバー長に収まるようにした。また、整合回路では、アンテナの一部をインダクタンスとして用いるガンママッチング回路構成とすることで、受動部品のインダクタンスを削減してさらなる小型化を実現したという。

  • 光ファイバ一体型小型受電機の構成イメージ
  • 実際に試作された小型受電機
  • 光ファイバ一体型小型受電機の構成イメージと実際の試作機 (提供:立命館大学)

実験の結果、送電機の送電出力10W、受電器との距離1.5mで、つけまつげに取り付けたLEDが、電池や配線なしに音楽に合わせて点灯することが確認されたとするほか、送電機と受電機の距離を変化させてもLEDの輝度の変化が認められないことも確認されたという。

  • 光るつけまつげ
  • 点灯実験の様子
  • 光るつけまつげと、点灯実験の様子 (提供:立命館大学)

なお、研究チームでは、今後は超小型ウエアラブルデバイス「光るつけまつげ」が化粧とリンクしたファッションとして広がるよう完成度を上げていくとしているほか、つけまつげ以外のウエアラブルデバイスへも展開していきたいとしている。

  • 試作した電力制御機能搭載送電機

    試作した電力制御機能搭載送電機から電力が送電されている様子 (提供:立命館大学)