そうした中、ソニーがaiboを12年ぶりに復活させてきた。今回のaiboを見て、ソニーが「考えているな」と思わされたのが、aiboをあえてイヌ型として作り込んで来た点にある。動きやデザインがさらにイヌっぽくなっただけではない。

当然、今の技術をつぎ込めば、イヌ型であっても日本語会話機能を載せることもできるだろう。しかし、開発を担当したソニー AIロボティクスビジネスグループ長の川西 泉氏は「日本語を話すことはかなり検討した。前回のAIBOはイヌ型とは言っていなかったが、今回はイヌ型。なので、日本語は話さない」と話す。

11年前までのAIBOは「イヌっぽいロボット」だったが、今回は紛れもなく「イヌ型ロボット」という位置付けだ。イヌをロボット化したものであれば、日本語で会話できなくても仕方あるまい。しかし、こちらが喋ったことが少しでもaiboに伝わり、例えばこっちに向かって来たり、おすわりしてくれれば、飼い主としてはとても嬉しく、愛らしい存在になることだろう。

愛くるしい姿は「イヌ型」。愛着を持たせつつも、利便性に対する期待値を上げさせないようにした

ソニーが本格的なロボット事業に再参入するにあたり、人型ではなく、あえて12年前のaiboを復活させてきたのは、こうした「ユーザーの期待値を下げる」という狙いがあるのではないか。人は相手が「イヌ」だと分かれば、相手に求めるハードルは一気に下がる。しかし、こちらに何かしてくれた時の喜びは人に対するものの何倍にもなるはずだ。

aiboがなかなか進化しなくても「イヌだから仕方ない」で納得するし、逆に留守宅の見守りをしてくれたり、家電連携をするようになったりしたら、「なんて優秀なワンちゃんなんだ。うちのコはかわいい」という愛情がさらに増すことだろう。

ペッパーは「偉大な起業家である孫社長が惚れ込み、世界をリードするIT企業であるソフトバンクが放つ、未来の生活を変え、人々の感情を読み取ることができるロボット」というイメージが先行した一方で、中身は全くもってのポンコツだったために、ユーザーが「裏切られた」という感情に繋がった。

一方、ソニーは「aiboはイヌです。かわいいでしょ」というスタンスから入っているので、ユーザーの「ロボット」に対する期待値は低く、すんなりと生活に入ってくる可能性は高い。ただ、当然、ユーザーからすれば、ロボットに対して、飽きてくるタイミングが必ずやってくる。

その時、aiboはイヌというコンセプトを維持しつつ、「家族として離れられない存在」になるのか、「生活必需品」になるのか。いずれにしても、ユーザーを飽きさせない工夫が今後の課題となりそうだ。