ソニー・インタラクティブ エンタテインメント(SIE)は10月3日、同日付で社長 兼 CEOのアンドリュー・ハウス氏が会長に、現副社長である小寺剛氏が新しく社長 兼 CEOに就任すると発表した。ハウス氏は同日にソニー本社の執行役EVPからも退き、SIEの経営から身を引くことになる。

SIEの現在の主力商品は、みなさんもご存じPlayStation 4(PS4)。世界的なヒット商品であり、現在も好調を維持している。一方で、日本では「そんなに元気がないのではないか」と思っている人もいるだろう。今回の社長交代がどういう意味を持っているのか、そして、ソニーにおけるゲーム事業がどのような状況にあるか、改めて確認してみたい。

業績は好調、社長交代後も戦略は維持

今回の社長交代は、いかにも突然のことのように思える。社長交代、というといわゆる「引責」が頭に浮かぶが、少なくとも業績を見る限り、今回はそういうわけではないらしい。

8月1日に公開されたソニーの2017年度第1四半期(2017年4月1日~6月30日)決算では、SIEが属するゲーム&ネットワークサービス部門の売上は、前年同期比5.3%増の3481億円。利益こそ前年同期比69.7%減の177億円となったが、これは前年同期に、PS4向けゲーム「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」が発売され、全世界で870万本を超えるヒットになった影響。

今期はそれに匹敵する自社タイトルがなかった分、利益率が下がったわけだ。これは折り込み済みのことで、少なくとも引責につながるような話ではない。SIE側も「ビジネスの大きな方向性、戦略には変更はない」(SIE広報)としており、もちろん、経営体制変更に伴う変化はあるにしろ、当面はハウス体制下におけるビジネスの方向性が継続される……と考えて良さそうだ。

世界市場で好調なPS4、今後のカギは「開拓中の市場」が握る

では、PS4のビジネスの現状はどうか?

筆者は東京ゲームショウのタイミングで、アンドリュー・ハウス氏に単独インタビューしている。その時にも「PS4は好調で、想定通りに売れており、今年計画した数量は達成できる」と語っていた。SIEは現状、今年の6月までの販売台数しか公開していないが、2017年度6月までの販売台数は330万台。6月13日には、PS4の販売台数は累計で6040万台を突破している。2017年度の販売目標は1800万台で、ハウス氏の言葉によれば、これは概ね達成できる見通しと考えられる。

現在、PS4の販売の中心は海外だ。日本国内での販売台数は480万台(6月時点)で、現在は500万台を超えている程度と見られる。日本の話はまた後で述べるが、海外における好調さこそがPS4世代の強みであり、ソフトウエアの販売・ダウンロード累計数4億8780万本という数にもつながっている。

かつての勢いは見られないにせよ、着実に日本でもタイトルの拡充が進み、ハード販売も伸長しているPS4

ゲーム機としては任天堂の「Nintendo Switch」がヒットし、特に国内ではなかなか買えないほどのヒットとなっているものの、まだ発売1年目で累計販売台数にかなりの開きがあること、SIEと任天堂のゲームを買う人々は棲み分けており、直接的に市場を食い合ってはいないことなどから、少なくとも短期的には、海外におけるPS4の勢いに大きなブレーキをかけるものにはならないだろう。

日本国内についてはブーム的な盛り上がりには達していない。とはいえ、据え置き型ゲーム機としてはトップシェアであることに変わりはなく、ソフトも充実してきた。SIEジャパンアジアの盛田厚プレジデントは「日本のゲームファンが望むタイトルのうち、最低限揃えたいと思っていたものは揃えられたと思っている」と話す。

2018年1月には、大ヒットが見込まれる「モンスターハンター:ワールド」(カプコン)の発売を控えており、大幅に伸ばせるかはともかく、短期的に販売数量に急ブレーキがかかることは想定しづらい。

ビッグタイトル「モンスターハンター:ワールド」の発売が間近に迫る

では、PS4は最終的にどこまで数を伸ばすことを狙うのか? ハウス氏は「社内的な目標は、PlayStation 2(PS2)と同じ量」と語った。PS2は最終的に1億5000万台以上を出荷しており、世界で最も売れた据え置き型ゲーム機だ。PS2は発売から10年売れ続け、この数字を達成している。PS4は発売から4年未満で6000万台以上を売っているから、ペースだけで見れば達成の可能性がある。

一方でハウス氏は「PS2の時とは違う部分もある」という。