こうしたなか、デルのシンクライアントビジネスの新たな取り組みとして特筆されるのが、Dell EMC VDI Complete Solutionsだ。

Dell EMC VDI Complete Solutionsは、2017年5月に、米ラスベガスで開催されたDell EMC Worldで発表されたものであり、サーバーなどのインフラストラクチャとソフトウェア、シンクライアント端末、サービスを、エンド・トゥ・エンドで提供するVDIソリューションだ。VMware Horizonを活用し、「Dell EMC VxRail アプライアンス」または「vSAN ReadyNode」を基盤とし、単一メーカーからひとつのソリューションとして提供することができるほか、1ユーザーあたり、月額1700円から(300ユーザー構成、5年間利用)の低料金で導入することができる。オプションとして設定されているシンクライアント端末も、Wyse 3040の場合には、1ユーザーあたり月額500円での利用が可能だ。

「Dell EMC VDI Complete Solutionsは、デスクトップ仮想化およびアプリケーション仮想化テクノロジーを検討している企業に対して、統一されたサポートを通じて購入、導入、管理を容易にすることができるため、一般的に導入の障壁となっている課題を解消できる」とし、「セキュアな環境や働き方に柔軟性を持たせることができるシンクライアントを導入しようと考えても、初期費用が高いこと、管理が複雑化するといった課題から、導入に踏み出せない企業があった。だが、Dell EMC VDI Complete Solutionsを利用することで、ニーズにあわせて、柔軟に構成をカスタマイズでき、少ない初期費用で、インフラからエンドポイントまでトータルでのVDI環境構築が可能になる。しかも、検証および実証済みであることから、高い信頼性を維持しながら、短期間に稼働させることができる」とする。

Dell EMC VDI Complete Solutionsは、100ユーザーが最小単位だが、大手企業においても、PoCによるステップを踏んだ導入が可能になることを訴求する。

一方、デルでは、PC本体やソフトウェア、サービスなどを含めた月額課金による「PC as a Service」を展開しているが、Dell EMC VDI Complete Solutionsは、これとは別のものだと、ポウラ氏は位置づける。

「デルの公式の言葉ではないが」としながらも、「いわば、Solution as s Serviceといえるもの」と語り、「デルとEMCとの統合により、エンド・トゥ・エンドのシンクライアントソリューションを、月額課金という新たな仕組みで提供することができるようになった。これは他社との大きな差別化につながるものであり、デルのシンクライアントビジネスをさらに加速することができる」とする。

実は、ポウラ氏が所属する組織は、「クラウド クライアント コンピューティング」という名称であり、シンクライアントという名称は使っていない。この組織名は、シンクライアントを軸にして、エンド・トゥ・エンドのソリューションを提供することができる、デルのビジネススタイルを示したものといえる。EMCとの統合などにより、テクノロジーを軸に、ソリューション型企業へと転換を図るデルが、シンクライアントビジネスにおいても、ソリューション型企業へとシフトすることを名実ともに示したものといえるだろう。

そして、Dell EMC VDI Complete Solutionsは、「パートナー企業にとっても大きなチャンスになる」とする。

「Dell EMC VDI Complete Solutionsは、パートナーが独自に、コンポーネント、インテグレーション、サービスなどを追加できる柔軟性を持っている。パートナーにとっても新たなビジネスチャンスを生むことになる」とする。

同社では、パートナーに対するメリットとして、「シンプル」、「プレディクタブル」、「プロフィッタブル」の3点から説明する。

シンプルでは、シンクライアントの製品ラインアップの複雑さを軽減し、シンプルな構成や価格設定を提供。アプライアンス化により、迅速な製品化と、導入のための複雑さの軽減ができるという。

また、プレディクタブルでは、パートナーとのコミュニケーションの強化のほか、Dell EMCグローバルパートナープログラムと同様のプログラムを用意し、クライアントソリューショングループと同様のインセンティブとプログラムを提供。トレーニングの強化も図るという。

そして、プロフィッタブルでは、「Wyse製品は、Dell EMCパートナープログラムの最も収益性の高いクライアントインセンティブグループに属している」とし、さらに、サービスをはじめとして、収益性の高い複数のオプションを提供できるのも特徴だとする。

ポウラ氏は、「従来の箱売りのビジネスではなく、ソリューション型ビジネスが可能になるとともに、シンクライアントビジネスでも、グローバルで統一したパートナーフレンドリーなパートナープログラムを導入できる。売上げが拡大し、収益が高まり、付加価値により差別化ができる」と自信をみせる。

現在、クラウド クライアント-コンピューティング事業において、チャネルを通じた販売比率は80%に達しており、新たなチャネルパートナーも増加しているという。10月18日には、日本において、約30社のチャネルパートナーを集めたイベントを行い、システムインクデレータを通じたシンクライアントの販売チャネル拡大にも取り組んでいる。