制度を作り、システムを導入し、トライアルも行った上での新制度導入だが、全社員を対象にしているものの、現在はまだ段階的な導入を行っている。それは、富士通が重視するポイントをしっかりと社員に伝えるためだという。

「基本的に全社員を対象としていますが、実際の導入・運用は本部単位です。本部ごとに利用するかどうかを決めてもらうのですが、組織的に、積極的に考えてほしいと伝えたところ、予想以上に希望する本部がありました。そのため、何を目的とした制度なのか、どういう風に社員のマインドを変化させてほしいのかといったことを伝えるために時間をかけて説明会を行ったうえで活用をスタートしています。」(永楽氏)

これはトライアルから見えてきた課題に対応したものでもある。管理する上司側も、オフィスを離れて働く労働者側も、勤務状態が見えないことに不安を抱く。時間管理や労働成果の見える化を実現するためにIDリンク・マネージャーⅡのようなツールも導入したが、成果の図り方等のマインドセットも重要だとわかったという。

「社員が事務所に出社しないことで不安を持つ管理職もいますが、その日にどんな仕事をどれだけやるのかということを事前に上司とコミュニケーションして、納期とクオリティを守って納品してもらえることが重要です。事前コミュニケーションとアウトプットをレビューすればよい問題で、作業の様子を近くで見る必要はないのですが、これにはマネージャーのマインドセットが必要になります。現在はテレワーク向けの説明会で、こうしたマネジメントのポイントを伝えています。」と佐竹氏は語った。

もちろん、実際に働く中で評価がしづらい、業務が行いづらいといった意見が出る可能性はある。そういった声は3カ月程度のスパンで拾い上げ、課題を共有することで解決を図って行く予定だ。

全社員がフレキシブルかつ効率的に働ける環境を目指す

展開が進めば、最終的に特段の事情があって導入を行わなかった本部を除いて、全社員がテレワークを行えるようになる。業務内容等によって向き不向きはあるため、チームや上司との話し合いは必要だが、基本的には生産性が落ちないのならば育児や介護といった事情のある人だけでなく、誰でも利用になる制度だ。

「私自身テレワークを積極的に利用してみましたが、思った以上に問題なく働けます。こういった制度は社員と企業の両方にメリットがなければダメで、企業のために社員に負担をかけるのもダメですが、社員だけが得をするものでもあってもいけません。その点、生産性を落とさずに柔軟に働けるというのは両者にメリットがあるものです」(佐竹氏)

誰でも使えるとはいうものの、自由気ままに働いてよいという意味ではない。たとえば、二日酔いがつらいから家で仕事をしたいというのでは困るが、交通機関に乱れがあるから効率を考えて家で作業をするというのはよい選択だ。

「むしろ交通機関が乱れている時などは、積極的に使ってほしいですね。日本人の気質なのでしょうが、弊社はいままで台風でも雪でもがんばって出社してしまう人が多くいました。時間をかけて不安定な状態で出社するので、時間も無駄ですし体力的にもロスが大きいです。テレワークを上手に利用して、そういう無駄をなくしたいですね」と佐竹氏は語る。

サテライトオフィスとして汐留本社に「F3rd Shiodome」という、富士通グループの社員が利用できるワークスペースが用意されている。こうしたワークスペースは、各事業所に拡大していきたいという。「必要があれば事業所以外の場所にも拠点を作るなどしたいですね」と佐竹氏は今後の展望を語った

汐留本社の「F3rd Shiodome」