さまざまな仕組みのロボットが出場

本格的な制御を実装していたのは、「Spirit 2」(チーム名:山口自動機械)と「フランくん」(チーム名:technoRAT)。

Spirit 2は、オリジナルの機体に、SoftKinetic製のToFカメラ「DS325」を搭載。画素数はQVGAで、このセンサからの深度情報を使い、床や対戦相手の判定を行っていた。メインの制御プログラムはIntel製のスティックPCで動作しており、これとは別に、サーボ制御用に近藤科学のKCB-5も搭載していた。

Spirit 2の頭部に搭載されているのがToFカメラ。非常に小型だ

生データ(左上)とポイントクラウド(右)。テーブルの境界が分かる

【第1回ROBO-ONE auto】1回戦(YOGOROZA vs Spirit 2)

フランくんは、近藤科学のKHR-3HVがベース。可視光カメラとRaspberry Piを搭載し、OpenCVで画像認識を行っていた。対戦相手の判定には、色相の分布を利用しているそうで、接近時などに特徴点を取得する。センサとしては、距離判定用のToFセンサも搭載。そのほか、ロボットの動作を生成するために、Zynqボードも搭載している。

フランくんの頭部にあるのがカメラで、首の小型基板はToFセンサ

トラッキングの様子。特徴点を抽出し、対戦相手を認識する方式

【第1回ROBO-ONE auto】1回戦(フランくん vs コビス)

また、本戦で優勝経験もある実力者の「ガルー」(チーム名:くまま)、「Metallic Fighter」(チーム名:森永)、「シンプルファイター」(チーム名:zeno)などは、ロボット用コントローラにPSDセンサを直結し、GUIベースのツールを使って、動作を制御。非常にシンプルなやり方ではあるが、これだけで自律動作できるというのは参考になるだろう。

これは「ガルー」。腰と右手にPSDセンサを搭載している

コントローラは近藤科学のRCB-3で、ソフトはHeartToHeart3を使用

「シンプルファイター」は、前後方向に2個ずつPSDセンサを搭載

コントローラはヴイストンのVS-RC003で、ソフトはRobovieMaker2だ

【第1回ROBO-ONE auto】2回戦(AdamantAT vs ガルー)

【第1回ROBO-ONE auto】準決勝(SunShot vs シンプルファイター)

「オートマトン」(チーム名:オートマタ)は、ToFセンサと超音波センサを搭載。超音波センサは左右両側にあり、回転するギミックで素早く周囲360度を調べられるようになっていたのが面白かった。

「オートマトン」の超音波センサ。センサだけを素早く回せる

胸のToFセンサが圧巻。6つも並んでおり、広範囲を一挙に探索

ちなみに筆者も「バンボー・オート」(チーム名:バトル・バンブー)として出場しており、KHR-3HVベースの機体をリモートブレインで制御していたのだが、こちらの仕組みについては別途レポート記事で詳しく紹介する予定なので参考にして欲しい。制御プログラムはPythonで作り、計3個のPSDセンサを使っている。

筆者の「バンボー・オート」(右)は、シンプルファイターと対戦して敗退

今後の盛り上がりに期待

そして第1回大会の結果であるが、優勝は「コビス」(チーム名:ビスコ)。コビスは1回戦から、ひたすら旋回して対戦相手が近づいてきたところを攻撃するだけだったのだが、これは本当は移動して相手を探すようになっていたのに、PSDセンサが誤検出してこうなってしまったとのこと。ただ、結果的にはこれが有効だった。

優勝ロボットの「コビス」。両肩に合計6個のPSDセンサを搭載

1つのユニットで、前・横・後を見ている。制御はRCB-4のみ

【第1回ROBO-ONE auto】決勝戦(コビス vs SunShot)

ほかの多くのロボットもちゃんと攻撃を出せるところまで作ってきており、初回のイベントとしてはまずまずの結果だったと言えるのではないだろうか。ただ、全試合を通して、"名勝負"といえるような咬み合った試合が無かったのはやや残念なところ。機体がうまく動かなかったり、なかなか出会わなかったり。このあたりは次回に期待だろう。

そのほかの試合はコチラを参照(筆者のYouTubeチャンネル)

筆者が課題と感じたのは、5kg以下という今回のレギュレーションが適切だったかどうか、ということだ。2足以外のロボット競技やソフトウェア側のコミュニティの人が参入する場合、市販のロボットキットをベースにすると簡単だが、これではパワーが違い過ぎる本戦仕様のロボットにはまず勝てない。

この5kgというのは、おそらくKinectやNUCなどをそのまま搭載できるような本格的な自律ロボットを想定してのことだろうが、それは資金的にも能力的にも、個人には敷居が高すぎる。従来のROBO-ONE以外の分野からの新規参入を促すためには、市販機ベースの自律部門があっても良いかもしれない。

「オッディ」(チーム名:Nse)は、ヴイストンのRobovie-Xがベースだった

その一方で、個人的には、高度に知能化された5kg級ロボットによる本格的なバトルをすごく見てみたいとも思う。そのためには、メカが得意でバトルのノウハウが豊富なROBO-ONE勢と、ソフトが得意な他分野の人たちによるチーム化も期待したいところだ。

近年、AIは急速に進歩。将棋や囲碁の世界では、トッププロでも勝つのが難しくなってきている。現在、autoは自律機に限定されるが、本戦は自律でも操縦でも出場できる。いずれはROBO-ONEでも、自律機が人間並みに強くなり、自律vs操縦の白熱したバトルが見られるようになるかもしれない。まずは9月に予定されている第2回大会に注目だ。