会議を支援するAIの開発を進行中

ここからは、そうしたコンセプトに沿って作られた「近未来」のオフィス空間のプロトタイプ展示を見ていく。

イトーキというとオフィス家具の老舗のイメージが強いが、2014年から日本ユニシスと共同でAI開発に取り組むなど、ICT活用の研究を行っている。今回展示されていたのは「会議支援AI」を組み込んだミーティングスペースだ。

木で組んだパーティションに囲まれたミーティングスペース

AIが会議状況を認識し、適切と思われる情報を壁面のプロジェクションマッピングする

発話や会議の状況といった情報をログとして残していく

音声と映像を元に、会議参加者の表情や発言、ホワイトボードの書き込みを認識。会議の状態をリアルタイムに知覚。状況に応じて適した行動を選択し、例えば議題に関連性の高いニュース記事などの情報を壁面に表示するなどして場の活性化を図る。強化学習という手法を用いて、AIの働きかけが会議によい作用を与えた場合に報酬を与えることで、会議を繰り返すことで支援の精度が向上する。

ロボットがコミュニケーションを活性化させるラウンジ

「Lounge Work コミュニケーション」エリアでは、主にロボットを活用し、働く人同士のコミュニケーションを活性化させる仕掛けが展示されていた。富士ソフトのロボット「PALRO」が対話相手の顔を覚え、個々人に合わせた情報を提供したり、デンソーウェーブのロボットアーム「COBOTTA」が茶道の名人の動きを再現して抹茶を点てたりする。

社員同士の交流を活発化させる手段として、コミュニケーションパートナーロボットの「PALRO」(富士ソフト)が設置されている

デンソーウェーブのロボットアーム「COBOTTA」は、人と協働可能なロボットアーム。テレワークしている人の腕代わりとなったり、料理などのスキルを持つ人の動きを再現して動作したりすることができる

ランチョンマットに提供された料理の情報が多言語表示される

「いま使っている人」に合わせる個人ワークスペース

クラウドの発達などにより、ノートパソコンさえあれば仕事ができるという人もますます増えてきた昨今だが、パソコンだけでなく、働く人を取り囲むフィジカルな空間への工夫を提案したのが「ソロワークスタイル」の展示エリア。

IDカードに応じて個人設定を反映し、壁面に投影する

ひとりブレスト機能ともいえる支援システムは、IBMのWatsonを活用している

3面の壁が取り囲んだ中には、社員IDから発するビーコンで、都度利用者ごとにパーソナライズされた設定で画像・文字情報を表示。IBMの「Watson」を活用したブレインストーミング支援システムも搭載しており、デジタルな付箋にキーワードを書いて壁に投げ込むと、Watsonが関連すると思われるワードを自動的に生成する。

AIやIoT、ロボットといった注目のワードが目を惹くが、一貫した狙いとして、会議や執務など人間の仕事をテクノロジーによって支援し、"オフィスが労働者に対して働きかける"ようなしくみを提示している。なお、ここまでの展示は販売を想定したものではなく、参考出展となっている。