6月13日、首都圏コンピュータ技術者株式会社(以下、MCEA)主催によるイベント「MCEAプロエンジニアフォーラム フリーランスと起業 -この時代を生き抜く4つのメッセージ」が都内の会場で開催された。MCEAはフリーランスで働くエンジニアと、エンジニアを必要とする企業とを結び、派遣とは異なる「共同受注」という形でエンジニアをサポートしてきた。昨年、そのビジネスモデルをブラッシュアップし、「PE-BANK」という名称で運営を行っている。同イベントは昨年に引き続いて2回目となり、多数のエンジニアや関係者が参加した。

冒頭、挨拶に立った同社代表取締役社長 齋藤光仁氏は、このイベントを毎年継続することで「エンジニアが自分の意見や成果を発表する機会にしたい」と、エンジニアに向けて積極的な参加を呼びかけた。また、働き方の多様化が議論されている現在、「フリーランスという働き方はこれから伸びていく。もっともっとみなさんが稼げる場を作っていきたい」と述べた。

首都圏コンピュータ技術者株式会社 代表取締役社長 齋藤光仁氏

また、同社ではエンジニアを対象にスキルアップを目的とした勉強会の開催や、資格取得のサポートも行っている。特に個人保護法の改正やマイナンバー制度の運用開始に向け、システム設計においてはITエンジニアにもこれらの理解と知識が求められることから、個人情報管理士や上級個人情報監査士といった資格の取得もサポートしていることが紹介された。

一般社団法人 日本個人情報管理協会 内山和久氏

ITエンジニアはセキュリティと個人情報・マイナンバーの取り扱いに精通していく必要があると述べる内山氏

自身の経験から起業する人へのエールとアドバイス

ファーストシステムデザイン 代表 秋田忠之氏は、自身がフリーランスから起業し、現在に至る間の経緯を語った。起業するのは簡単なことではなく、会社経営を続けるのはもっと難しいことだ。フリーランス時代に地道に築いていったクライアント企業とのつながりや信頼が設立初期の助けになったという。

ファーストシステムデザイン 代表 秋田忠之氏

その後、リーマンショックや東日本大震災など大きな痛手となる出来事に遭遇するが、秋田氏はそれぞれに対策を講じて乗り越えてきた。リーマンショックで一気に受託が減った際には、約1カ月で社員をSESの業務へ入れることができたという秋田氏。それができたのは「これまでの積み重ねが大事」と、日頃の信頼関係の重要さを述べた。

秋田氏が経験した出来事から、準備しておくべきこと

秋田氏が考える起業の面白さとは

秋田氏は「信用がついて、やりたい仕事ができるようになってくる。接触する人間が会社勤めの時に比べると格段に拡がる」と、起業することの喜びもまた大きいものであることを強く訴えた。

魅力的なプレゼンで「最初の一歩」を後押し

MCEA関西にプロエンジニアとして登録するOWASYS 代表 尾張孝吏氏は、昨年に続いての登壇。尾張氏はTwitter用マーケティングツール「ツイ助」を個人で開発したが、ある時点で事業化を決意。業務用に「集客ジェット」というサービスを開発。人前でしゃべることが苦手な尾張氏は営業を代理店に依頼するが、なかなか契約が取れなかった。結局自ら営業に行くことになり、最初は撃沈するが、プレゼンへの駄目出しを改善し、それを繰り返すうちに契約へ至ったという。

MCEA関西支店プロエンジニア OWASYS 代表 尾張孝吏氏

尾張氏「最初は聞く耳持ってくれなかった人が、聞いてくれるようになった。繰り返すうちにアイデアが出てきたりして、道が開けた。何か課題があるなら、どんどんチャレンジし続けること。重要なのは、最初の一歩を踏み出すことです。」

個性的な表現や起伏ある展開で人を惹きつけるプレゼン

テンポのよいトークとジョーク交じりのスライドを使い、会場を楽しませながら語る尾張氏。この経験をもとに、現在「プレゼンを上達したい人向けの勉強会」も開催し、好評を得ているという。

「いいでしょ」と言える人生は自分で選べる

ナレッジ・リンクス 代表取締役社長の三河賢文氏は、スポーツ分野を中心にしたフリーライターであり、メディア運営や中学校の陸上部指導、そして三児の父として多方面で活躍している。もともと企業に勤めていた三河氏が、起業に踏み出した最も大きな理由が「子供の成長」だという。

ナレッジ・リンクス 代表取締役社長 三河賢文氏

三人目の子供が生まれる時には、出産予定日付近にアポを入れず、家でできる仕事をしながら上の子供たちの面倒を見た。「この仕事でなければ三人目を生むことは考えられなかった」という。今は家で仕事をし、学校から帰ってきた子供に「おかえり」と言えることが幸せだと語った。

「自分自身の選択で人生はもっと楽しくなる」と主張する三河氏。大学時代の経験から「走るフリーライター」として独立し、その後の出会いや実績の積み重ねから、仕事の幅も広がっているという。

まずはアクションを起こす。小さな実績を重ねていくことから、想像しなかった世界が広がっていくという三河氏

三河氏「とにかくやってみることから始まっている。その行動が仕事につながり、どんどん自分の未来が変わっていく。仕事だけで人生が成り立っているわけではない。自分の人生を心から誇れるようになっていただければと思います。」

余生は必要無い、終身現役!多くの人生を変えた名講演「自分と未来は変えられる」

最後に登壇したのは、ヒューマンスキル研究所 所長の田中真澄氏。『積極的に生きる』と題し、これまでに7,000回を超える講演を行っている。全国の企業や商工会等に加え、近年では児童生徒を対象にした学校での講演にも力を入れている。現在79歳だという田中氏は、現役世代にも勝る力強い口調で「ものの考え方で人生が変わる」という持論を展開した。

ヒューマンスキル研究所 所長 田中真澄氏

田中氏「帰ったらすぐに"余生"という文字を辞書から消し、"終身現役"を書き加えてほしい。終身現役とは、定年のない何かのプロになること。人の生きがいとは、自分のやるべき仕事が待っているということです。」

そこで必要になるプロの"能力"は、知識・技術だけでなく、心的態度=心構えが最も重要と説く田中氏。心構えとは「心を作る習慣」であり、習慣は行動と考え方により作られる。前向きな行動と前向きな考え方を持つことが即ち積極的な心構えとなり、自分の能力となる。

「余生は必要ない。終身現役が最高の人生」と説く田中氏

古い言葉から現代に通じる価値を引き出す

田中氏「ポイントは3つです。早起きをすること。歩くこと。そして、あいさつ・返事・後始末のしつけ三原則。そんなこと、と思うかもしれませんが、それをバカバカしいと思っている人にはチャンスはありません。必ず誰かが見ていて、どんな時代も勤勉思考の人を世の中は応援します。」

そして、心構えは毎朝ゼロから磨き直さなくてはならないものである。つまり、「人生は今日が始まり」であると、田中氏は結論付けた。