NTTドコモでは、LTE-Advanced技術を利用した下り最大225Mbpsの超高速通信「PREMIUM 4G」を3月27日より提供開始。先日開催された同社の夏モデル発表会では、すでに発売されている「Galaxy S6 edge」「Galaxy S6」を含め、計7機種のPREMIUM 4G対応スマートフォン・タブレットが発表された。そこで本稿では、ドコモのPREMIUM 4Gの特徴について解説していく。

下り最大225Mbpsの「PREMIUM 4G」とは?

PREMIUM 4Gは、ドコモが3月27日より提供している、下り最大225Mbpsの高速通信サービス。その最大の特徴は、何といっても下り最大225Mbpsという高速通信。同社の従来のLTEサービスでは、下り最大150Mbpsとなっていたため、1.5倍高速化しているのだ。

2GHz帯と1.5GHz帯、または800MHz帯と1.7GHz帯をCAで束ねることで、国内最速となる下り最大225Mbpsを実現

PREMIUM 4Gでは高速化にあたり、次世代通信方式、LTE-Advancedの技術のひとつであるCA(キャリアアグリゲーション)を採用。CAとは、複数の周波数帯を束ね、帯域幅を拡大することで高速通信を可能にする技術のことだ。PREMIUM 4Gでは、2GHz帯と1.5GHz帯、または800MHz帯と1.7GHz帯という2つの周波数帯をCAで束ねることで、下り最大225Mbpsという超高速通信を実現している。

さらに4月21日からは800MHz帯と2GHz帯を組み合わせて、下り最大187.5Mbpsを実現するCAも開始されており、3種類の組み合わせによるCAを利用できることがPREMIUM 4Gの特徴となっている。下り最大225Mbpsという超高速通信により、たとえば、Webブラウジングやネット動画の視聴がさらに快適になるのはもちろん、大容量の動画のダウンロードなどもサクサクと行えるようになるはずだ。

トラフィックが集中する場所でも、安定した高速通信が利用可能になる「高度化C-RAN」を導入

また、PREMIUM 4Gでは、複数の基地局を集中管理する「高度化C-RAN」という新技術を導入。同技術では、広域エリアをカバーするマイクロセルのエリア内に、特に通信が混雑するエリアをカバーするスモールセルを追加し、マイクロセルとスモールセルの周波数帯を束ねて通信容量を拡大。これにより、主要駅や繁華街などの多くの人が集まり、トラフィックが集中する場所でも、安定した高速通信が利用可能になる。ドコモが実施したテストでは、トラフィック集中場所におけるPREMIUM 4Gの実効速度は、従来のLTEサービスと比べて70%向上したという。

2015年度内に下り最大300Mbpsサービスの提供を予定している

PREMIUM 4Gの対応エリアは、3月27日のサービス開始時点で全国22都道府県38都市。利用エリアは順次拡大しており、たとえば、東京のJR山手線沿線では新宿、池袋、品川など15駅で下り最大225Mbpsの高速通信が利用可能になっている。2015年度内には全国主要都市でサービスを提供予定だ。また、ドコモでは2015年度内に下り最大300Mbpsのさらなる高速化を予定しているほか、東京オリンピックが開催される2020年頃には、4Gの次世代となる「5G」の提供開始を目指している。

「VoLTE」はiPhone 6/6 Plusでも利用可能に

前述の通り、PREMIUM 4GはLTE-Advancedの技術を利用して、下り最大225Mbpsの超高速通信を実現しているが、スマートフォンのネットワークで高速化と並んで注目されるのが、LTEネットワーク上で高音質な通話ができる「VoLTE」だ。ドコモでは他社に先駆けて、2014年6月よりVoLTEサービスを提供している。

VoLTEの特徴としては、高音質通話に加えて、通話中でもLTEの高速データ通信が利用できることや、発着信のつながりの早さが挙げられる。また、VoLTE対応のAndroidスマートフォンでは、ビデオコールも利用可能になっており、高音質な音声と高精細な映像でコミュニケーションを楽しむことができる。

キャリア各社では、いずれもVoLTEサービスを提供しており、4月9日からは各社が扱う「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」でもVoLTEが利用可能になった。しかし、VoLTEサービスでは、高音質通話ができるのは、同一キャリアのVoLTE対応端末同士となっているため、いち早くVoLTEサービスを開始し、対応端末を多くラインナップしているドコモは、他社と比べて優位と言えそうだ。

KDDI・ソフトバンクのネットワークの最新状況は?

ドコモのPREMIUM 4GとVoLTEについて見てきたが、ここで他社のネットワークの最新状況についてもおさらいしておこう。

KDDIでは、「au 4G LTE」として2GHz帯、800MHz帯という2つの周波数帯でLTEサービスを提供している。同周波数帯をCAで束ねることで、下り最大150Mbpsの高速通信サービスを提供しているほか、一部エリアでは下り最大225Mbpsのサービスを提供開始している。また、同社の最新スマートフォンでは、傘下のUQコミュニケーションズが提供するWiMAX 2+も利用可能。WiMAX 2+は2015年2月よりCA技術を導入しており、通信速度は下り最大220Mbps。au 4G LTEおよびWiMAX 2+に対応する端末の場合、これらの2つのネットワークから接続するネットワークを自動的に選択する仕組みとなっている。

また、KDDIでは2014年12月よりVoLTEサービスを開始しており、同時にVoLTE対応端末も提供している。ただし、同社のVoLTE端末では、LTEまたはWiMAX 2+のみ利用でき、3Gには非対応となる。また、au版iPhone 6/6 PlusでVoLTEを有効にした場合、同様に3Gが無効化される。auでは、800MHz帯LTEの人口カバー率を99%としているため、多くのエリアでは問題はないと思われるが、LTEエリア外では通話やデータ通信が利用できなくなることには注意が必要だ。

一方、ソフトバンクでは、2GHz帯と1.7GHz帯、900MHz帯LTEの「SoftBank 4G LTE」、TD-LTEと互換性のあるAXGPネットワークの「SoftBank 4G」を組み合わせた「Hybrid 4G LTE」を提供している。LTEの通信速度は下り最大112.5Mbpsとなっており、今夏以降、一部エリアからCAによる下り最大187.5Mbpsを実現するとしている。また、AXGPの通信速度はCA対応で下り最大165Mbpsとなる。

ソフトバンクでも2014年12月よりVoLTEサービスを開始している。現在のところ、同社のVoLTE対応端末はiPhone 6/6 Plusを含めて4機種のみとなっているが、2015年夏モデルの4機種もVoLTEに対応する予定。また、同社では3Gエリアで高音質通話が利用できるHD Voiceも提供しており、VoLTE対応端末に加えてiPhone 5/5s/5cなどで高音質通話が可能になっている。

KDDI、ソフトバンクのネットワークと比較した場合、ドコモのPREMIUM 4Gは、2GHz/1.7GHz/1.5GHz/800MHz帯という4つの周波数帯を、3種類の組み合わせのCAで束ねていることが特徴だ。とりわけ、トラフィックが集中する都市部で、下り最大225Mbpsまたは下り最大187.5Mbpsという高速通信を実現していることが強みと言える。他社もCAによる高速化を進めているが、2015年度内に下り最大300Mbpsサービスの提供を予定しているなど、ネットワークの対応ではドコモが一歩先へ進んでいる印象だ。

夏モデルではPREMIUM 4G対応7機種を発表

ドコモが5月13日に発表した2015年夏モデルでは、PREMIUM 4Gに対応するスマートフォン5機種、タブレット2機種の計7機種がラインナップされた。また、これらの機種を含めて、スマートフォン・タブレット全10機種は、すべてVoLTE対応となっている。

PREMIUM 4G対応スマートフォンは、「Xperia Z4」(左)、「ARROW NX」(右)など計5機種

PREMIUM 4G対応スマートフォンは、「Xperia Z4」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)、「Galaxy S6 edge」「Galaxy S6」(サムスン製)、「ARROW NX」(富士通製)、「AQUOS ZETA」(シャープ製)の5機種。このうち、Xperia Z4、Galaxy S6 edgeは、3キャリアすべてから提供されるため、PREMIUM 4Gをはじめとするネットワーク面がドコモ版の差別化要素になりそうだ。

また、虹彩認証システムを搭載したARROW NXをはじめとして、生体認証機能を備えた端末も4機種用意され、ネットワークだけでなく機能面も充実している。これらに加え、Android搭載のフィーチャーフォン2機種もラインナップされており、今年のドコモの夏モデルは興味深い端末が勢揃いしたと言える。

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本稿で紹介した通り、ドコモが3月27日より提供している次世代通信「PREMIUM 4G」は、LTE-Advanced技術により下り最大225Mbpsを実現したことに加え、トラフィックが集中する場所でも安定した高速通信が利用可能になることが特徴となっている。同社では2015年度内に下り最大300Mbpsサービスを提供する予定。今後もドコモのネットワークへの取り組みは注目だ。