プロファイリングでオーディエンス+位置情報を組み合わせたターゲティング

ユーザープロファイリングには、位置情報とモバイルアプリの種別、第三者のマーケティングデータを組み合わせて行う。これらの情報から基本属性としての年代や性別を推察した上で、アプリの利用履歴や行動履歴のフットプリントと複数のデータを掛け合わせて分析を実施するのだ。

具体的には、路線価の高い地域に住んでいると思われる人を「富裕層」、空港をよく利用する人は他の情報と組み合わせて「旅行者」や「ビジネストラベラー」、移動が少なく生活系のアプリを多く使う人を「主婦層」などと標準オーディエンスに割り振る。

基本属性と標準オーディエンスを組み合わせてターゲットの絞り込むことが可能 (資料 : AdNear)

「例えば、朝10時に住宅地で音楽系のアプリを起動し、午後には大学のとある場所でTwitterアプリを利用し、夕方は新宿でファッション系のアプリを起動した……というような動きを、ある程度の期間にわたり見ます。その上で、この人は学生で女性だろう、とプロファイリングするのです」と語るのは、AdNearリージョナル ディレクターである猪谷久氏だ。

アプリの利用状況と位置情報を組み合わせてユーザーの行動を特定、プロファイリングを行う (資料 : AdNear)

プロファイリングであるため、正しいという保証はないが目安にはなる。そして、これを利用することでターゲティング広告の配信を実現するのだ。「女性の学生に対して配信したい」や、「20代~30代の男性で大阪と東京に住んでいる人をターゲットにしたい」「特定店舗から2km圏内の主婦層に情報を送りたい」といったクライアントの要望を叶えられる。

AdNearリージョナル ディレクター 猪谷久氏

猪谷氏は、「サービスを展開するにあたって重要なのはローカライズですが、マイクロアドプラスは、リアルタイム系の配信ツールという実績を持っている企業であり、自社でも商品開発を行っているというのが魅力だと思います。このパートナーシップの提携により、将来的には、マイクロアドの保有する豊富なCookieデータとの掛け合わせなどインテグレーション商品の開発等にも期待しています」と述べる。

まずは日本へのローカライズを行うということで、すでに情報収集は開始されている。2015年1月時点、日本でフットプリントを取得した累計ユーザー数は3550万以上で、このうち60%程度がアクティブユーザーだという。特定キャリアや特定アプリではなく、幅広いアプリのユーザーから情報を取得して分析できるのも大きな強みといえるだろう。

広告効果をリアルタイムに見られる「ダッシュボードやヒートマップ」

導入事例は海外を中心に豊富で、国内でもすでに先行事例があるという。ここでは、インドネシアのピザハットが導入した事例を紹介しよう。

ジャカルタの80店舗から、周囲5km圏内にいる消費者に向けてジオターゲティング広告を配信した。一律の広告ではなく、地域に応じて近くの店舗を表示したほか、配信時間帯に応じて毎日異なるオファーをモバイルサイト上で提供したところ、店舗への集客に貢献できたという。

「新製品発売にあたって、新製品が購入できる店舗の近くにいる人をターゲットに広告を配信して成果を出した事例などもあります。国によって異なりますが、この先何メートルで店舗があるというふうに具体的な距離を表示するとより効果があるなどの傾向もあります。日本ではどのようなものに効果があるのか、これから検証が必要ですね」と猪谷氏は語る。

キャンペーン実施時には、その効果をリアルタイムに確認できるダッシュボードがあることも大きな特徴だ。広告配信に対し、どの程度のクリック数があったのかといったことはもちろん、実際にユーザーがどこで反応しているのかを可視化できる。

「中には、ターゲットにした地域とは離れた場所へ移動してから広告を見て反応してくれるという人もいます。そういった動向も地図上に表示し、ヒートマップで確認できます」と猪谷氏ははモニタリングツール的な側面もアピールした。

広告効果をリアルタイムで把握できるダッシュボードを提供 (資料 : AdNear)

クリックした場所が見えるヒートマップでユーザーの動向も把握できる (資料 : AdNear)

日本市場の求める「詳細でビジネスに活用できるソリューション」として展開

猪谷氏は、日本市場の特徴として、消費者のインサイトを理解するのにより詳細なデータを希望するのではと説明する。

「日本では商品が同質化しやすい市場だと思うので、企業は消費者がどういうことを考えているのかや、何が潜在的なニーズなのかということを、常に深く探ろうとしていると思います。消費者のインサイトを探るための新しいデータの活用に関して、日本は非常に高いニーズを持っていると感じています」(猪谷氏)

日本市場に長く取り組んできた角谷氏もこれには同意しており、単純に効果が出るというだけではなく、どういう形で効果を上げるかといった細かな設計が求められる傾向があるという。

AdNearでは都市や都道府県レベルではなく、個別の駅やスポットを基準にした配信指定ができるほか、過去の位置情報をカスタムオーディエンス情報として活用することも可能。細かな指定に加えて、過去の位置データも活用できるあたりが日本企業のニーズに応えるものになりそうだ。

「どういう人が、どこで広告に反応したのかということを計測できるので、女性向けだと推測していた製品が男性に受けていたことや、リテンションが取れた場所は想定したエリアと異なっていたといったデータなども取得可能です」(角谷氏)

「単純なターゲティング広告の配信ではなく、具体的な場所と時間に落とし込まれたターゲットの仮説検証を繰り返すことにより、定性調査や定量調査よりもリアルなデータを基に、ターゲットのインサイトをつかむことができるます。ユーザーの行動を可視化することで、クライアントにとって、他のチャネルでも活用できるより立体的なターゲット像が構築できるフィードバックも行えればと考えています」と角谷氏は語る。

日本企業の求める詳細なユーザーインサイドの分析や、細かいターゲティング広告の配信などを実現するための開発は、両社がパートナーシップを提携した目的の重要なポイントでもある。日本で展開するAdNearのサービスは、単純な位置情報を活用した広告配信ではないのだ。地域や職種などによってどうニーズが変わるのか、広告の効果に差は出るのかといった細かな分析も含めて、企業が本当に知りたかったことを知るための手段という側面もある。

「AdNearは、位置情報を有効活用したオーディエンスデータをビジネスで実際に使える形で提供します。新しいものですから、まずは試していただきたいですね。モニタリングツール的側面をもつ広告配信ツールですので、試すことで見えてくるものがあるとおもいます」(猪谷氏)

マイクロアドプラス 第1セールスユニット チーフアカウントプランナー 角谷佳祐氏(左)とAdNearリージョナル ディレクター 猪谷久氏(右)