Configurable TDP(グラフ233~242)

最後に、Configurable TDPについてちょっと試しておきたいと思う。この機能はアナウンスされていたものの、当初テストに利用したBIOSではそもそも設定項目が無くて試用できなかったものだが、その後対応BIOSがリリースされたことで利用可能になった(Photo10~13)。

Photo10:ASUSTeKのA88XM-Aの場合。利用したのはBIOS 1102。AI Tweakerに"TDP Configuration"が追加された

Photo11:デフォルトはAUTO。この場合はそのCPUのデフォルトのTDP(A10-7850Kならば95W)

Photo12:設定できる最小TDPは45Wだった

Photo13:最大TDPは65W。この45W~65Wの間を1W刻みで変更可能

そこで、以下の3つのパターンでいくつかテストを行ってみた。 * TDPを45Wに設定 * TDPを65Wに設定 * TDPをAUTOに設定(95W)

まずグラフ234はSandraのArithmetic Benchmark。Java/.NETは省いて、Nativeの結果だけを示している。TDPがそのまま動作周波数に比例するわけではなく、実際のところTDPが下がるとむしろ性能/消費電力比は上がることもあって、45Wでも性能は2割落ち程度、65Wで1割落ち程度に収まっている。

ではアプリケーションベンチマークは? ということでグラフ235がPCMark 8の結果である。ここではOverallのみだが、大体どれも似た傾向で、Scoreにして5%(65W)~10%(45W)の下落で済んでいる事が分かる。

CPUメインだとそんな感じだが、ではGPUメインでは? ということでグラフ236~238が3DMarkの結果である。まずIceStorm(グラフ236)をみると、45Wの時よりも65Wの方がスコアが低下するという面白いケースがある。もっとも、負荷が上がるとこうした逆転現象は姿を潜めている。

これはCloud Gate(グラフ237)とかFireStrike(グラフ238)でも同じで、やはりこちらも65Wで5%、45Wで10%程度の性能低下で済んでいる。

では何でこんな事になるのか、というのを消費電力(グラフ239~242)をみながらちょっと解析してみたい。まずグラフ239がSandraのArithmetic Benchmarkを実施した結果である。95W、つまり定格ではあまり消費電力に細かな変化はないが、65Wだと細かな変化が出始め、45Wだとこの変動が非常に大きくなる。

グラフ240はグラフ239から待機時との消費電力の差を計算したものだが、特に45Wのケースではたびたび消費電力差が0W近くまで下がるのが分かるかと思う。

ちなみにこのグラフ240で平均値を求めると

  • 45WTDP:39.2W
  • 65WTDP:52.6W
  • 95WTDP:54.8W

となった。そんなわけでTDPがうまく調整されているのは分かるのだが、グラフを見ると例えば100~160秒で三つのケースでのピークの消費電力が殆ど変わらない事が分かる。要するにConfigurable TDPを変更してもピークの動作周波数は変わらず、ただし内部のタイマーで一定時間内の積算消費電力が閾値に達したら動作周波数を落とすという、割と荒っぽい実装であることが推察される。

同様にグラフ241が3DMarkのFirestrike Demoを実施中の結果だが、ピークの消費電力は120W強でほぼ全てが変わらず、ピークはTDP 65Wのケースが一番高かったりする。

こちらも待機時との消費電力差をとったのがグラフ242であるが、95Wのケースは比較的一貫したグラフなのに対し、45/65Wではかなり変動が激しい事が分かる。このグラフ242で消費電力差の平均値を取ると

  • 45WTDP:42.9W
  • 65WTDP:43.1W
  • 95WTDP:55.4W

となり、65Wにおける沈み込みが激しいが、これはGPU側をCPU側と同様に、煩雑に動作周波数を変更するのがうまくいっておらず、65Wの枠をフルに使いきれていない印象である。

このあたり、動作周波数の上限そのものを変えるといったもう少し柔軟な調整ができるようになれば、もう少しきっちりTDP枠を使い切れるようになるかもしれないが、現状ではちょっと荒削りという印象を受けた。ただ荒削りなりにちゃんと動作することも確認できた。