――東京オフィスの中で、Doodleのテーマとなるアイデアはどのようなやり方で集めているのでしょうか?

福江:Googleスプレッドシートを使ってアイデアを募っていて、Google社員であれば誰でもアクセスできるようにしています。毎年、社内でボランティアを募ってDoodleチームを結成し、リストの内容についてさまざまな角度からの検討を行っています。

――アイデアはどれくらいの数が発案され、最終的に何案くらい残るイメージですか?

三浦:スプレッドシートには数百案載っていますね。その中からDoodleとして成立しそうな物を100案程度まで絞って、その中からさらに選び抜き、Doodleチームに制作を依頼する段階まで行くのは四半期に数点、といったところでしょうか。

――アイデアの発案が多い部署の傾向はありますか?

福江:部署ごとの傾向というのはあまりないのですが、新入社員はすごく喜んで参加してくれますね。彼らの中には、入社する前からDoodleが好きで、一ユーザーとして楽しんでいたという人が多いんです。ボランティアに参加してくれる人の所属部署も多岐に渡っているのですが、毎回必ず新入社員が参加してくれる流れがあるので、常に新しい風が入ってくるような、いいフローになっていると思います。

――これまでに採用された中で、特に反響が大きかった日本発Doodleは何ですか?

はやぶさの帰還に合わせて表示されたDoodle

三浦:反響が大きかった物は多いのですが、特に印象に残っているのは「はやぶさ」のDoodleですね。はやぶさが地球に帰ってくるというその日(2010年6月13日)に掲載しました。これは、はやぶさが地球に帰ってこれそうだという見込みが分かったときに、東京オフィスのエンジニアに宇宙が好きな者がおりまして、ウェブマスターのところへやってきて、「はやぶさが帰ってくるから、これを機会にDoodleを作れないか」と提案したんです。

はやぶさの帰還はエポックメイキングな出来事で、"何か新しいことにチャレンジして成功する"という部分に当社としてもシンパシーを覚えたものですから、作ってみようということになりました。当時、日本でDoodleを描いていたウェブマスターの川島優志が本社のチーフDoodlerと協力し、数日で描きあげて急いで載せた形ですね。通常のプロセスとは違った道筋で米国本社のチームにはやぶさ帰還の意義を説明し、理解を得て生み出されたことも印象に残っています。

――そのほか、日本の偉人に関するDoodleで印象に残っているものがあれば教えてください。

三浦:初めて人工雪の製造に成功した中谷宇吉郎博士の誕生日を記念したDoodle(2013年7月4日掲載)でしょうか。彼の誕生日が7月で、「夏に雪にまつわる偉人を取り上げるのはどうだろう」と一瞬思ったのですが、むしろ暑いときにちょっとひんやりした気持ちになってもらえるのではないかと思い、制作しました。人工雪の結晶の核としてうさぎの毛が最適だったというエピソードに基づいて、うさぎの顔をあしらった可愛らしいデザインになっています。

中谷宇吉郎博士の誕生日を記念したDoodle

――Doodleの題材のセレクトについて、意表をつくユニークなテーマが多く選ばれていると感じます。どういった観点でアイデアを集め、選定していらっしゃるのでしょうか。

三浦:まず大きな軸としては、Googleのホームページ上でこれを見てみたいと思うような「遊び心」ですね。あとは、例えば4~6月の間に出す物を決めるミーティングであれば、その期間に当てはまる記念日がある人物を参照して、ひとりずつイメージなどについて話し合い、その中から特にユーザーが見て楽しめそうなものを中心にいくつかピックアップしています。

――歴史的な記念日や、没後百年程度経過している偉人が選ばれる傾向が強いように思いますが、存命中の功績者についてはあまり取り上げない方針なのでしょうか?

福江:Doodleによって、「偉大な発明をした方のおかげで今の生活がある」などといった"新たな気づき"をユーザーに与えることを目標にしているので、没後時間が経過している偉人が多くなっているという面がありますね。ただ、Doodleはあくまでお祝いを趣旨とした物なので、「没後」という数え方はせず、「生誕何周年」かという表記をする部分は徹底しています。

存命中の方のセレクトを避けているわけではないのですが、今活躍されている方は、今後さらに偉大な業績を残すかもしれないですし、例えば現在活躍している映画監督を取り上げたとすると、公開中の映画の宣伝に繋がることもあるかもしれません。なるべく商業的な部分によらずニュートラルでありたいと思っていることもあり、現在のような選出傾向になっています。