石鹸(せっけん)などの製品でおなじみの花王のロゴマークには月のマークが使われていますよね。なぜ"月"なのでしょうか? また月にはどんな意味があるのでしょうか? 花王株式会社 広報部の伊藤有希さんにお話を伺いました。

最初のロゴマークは「吹き出し」付きだった

――花王のロゴマークには「月」が入っていますが、その理由を教えて下さい。

このロゴマークは、創業者の長瀬富郎(ながせとみろう)が考案したものが基になっています。1887年(明治20年)、初代の長瀬富郎は洋小間物商『長瀬商店』を開業しました。これが花王の始まりです。

――ということは、もう120年以上も続いているんですね。

最初のロゴマーク

はい。その長瀬商店で輸入品の鉛筆を扱っていたのですが、その鉛筆に月と星のマークがありました。これがヒントになって1890年(明治23年)に最初の月のマークができました。

このロゴは顔は左側にあって(右向きの顔で)、吹き出しに「花王石鹸」(かおうせっけん)の文字が入っていました。

――吹き出しの左上に入っているのは何でしょうか?

これは「×印の店印」を朝日の光で包んだ星をあしらったものでした。

――このデザインに込められた意図を教えてください。

当時発売した「花王石鹸」は、輸入品の化粧石鹸に負けない品質で、多くの人に使ってもらいたい、と意気込んで作った商品でした。このマークを「高品質の象徴にしたい」と考えたのです。

月の顔の向きが逆になる!

その後も月のマークは花王のマークとして使われ続けます。ここでロゴマークの変遷をご紹介します。

1897年(明治30年)版

1912年(大正元年)版

1925年(大正14年)版

1943年(昭和18年)版

・1897年(明治30年)版
月のキャラクターの表情が柔和になった感じで、吹き出しの中の花王石鹸の文字が読みやすくなりました。また、星の図案も星らしくなっています。

・1912年(大正元年)版
吹き出しと星の図案がなくなって、月のキャラクターだけになります。何か言いたげな表情になっていますね。この時期に、長瀬商店は「合資会社長瀬商会」になりました。

・1925年(大正14年)版
このバージョンで月のキャラクターの表情が笑顔になります。この年に「花王石鹸株式会社長瀬商会」という株式会社になったそうです。会社の発展を喜んでいる表情なのかもしれませんね。

・1943年(昭和18年)版
ここで、今まで右向きだった顔が劇的に左向きの顔になります! 1925年(大正14年)版を左右反転させて少し寝かせた感じです。なぜ左右が逆になったかというと、左向きの月はこれから満月に向かう上弦(じょうげん)の月で、その方が縁起が良いから、という考えからだそうです。

1948年(昭和23年)版

1953年(昭和28年)版

1985年(昭和60年)版

・1948年(昭和23年)版
男性の顔から女性の顔へと変わります! レトロモダンな感じですね。線の強弱のはっきりした、筆で描いたようなロゴマークになりました。三日月だけでなく、円形も描かれていますが、これは製品や広告に使ったときに三日月だけだとマークとして弱かったからだそうです。

・1953年(昭和28年)版
余分な線のない、シンプルですが親しみやすいものになりました。月のキャラクターも温和な良い表情をしていますね。戦後になって、製品の品種が増え、クリームや、そのほかの女性向きの製品なども多く発売するようになりました。そのため、月のマークもそれら製品に合ったものにしようという意図があったそうです。

・1985年(昭和60年)版
同年10月1日に「花王石鹸株式会社」から「花王株式会社」へ社名を変更。それに合わせてコーポレートカラーもそれまでのオレンジからグリーンになり、ロゴマークの色も変更されています。

そして世界のkaoへ!

――こうして並べてみますとずいぶん変化しているんですね。グリーンをコーポレートカラーにしたのはなぜでしょうか?

現在のロゴマーク

グリーンを選定したのは、当時の新スローガン「清潔で美しく、健やかな毎日をめざして」とのマッチングを考慮したことと、オレンジの補色であるグリーンに変更することで新しさも訴求できるためです。

――現在使われているロゴマークでは、1985年(昭和60年)版で「花王」となっていたところが「kao」になっていますね。

2009年に、コーポレートメッセージを「自然と調和する こころ豊かな毎日をめざして」に変更しました。このときロゴも刷新し、グローバルでのさらなる成長を目指すという意味を込めて、社名の表記を英語の「kao」としました。

いかがだったでしょうか。創業120年を超える長い伝統を持つ会社ですので、やはりロゴマークの変遷にも歴史があるわけです。それにしても顔の向きが変わっていたとは驚きですね。

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(高橋モータース@dcp)