ビクターのロゴマークには「蓄音器に耳を傾ける一匹の犬」が描かれています。かわいらしいロゴなので、皆さんも一度は見たことがあるのではないでしょうか? このロゴに描かれている犬について、ビクターエンタテインメント株式会社・広報担当の本松直樹さんにお話を伺いました。
由来はある一枚の絵
――ビクターのロゴには一匹の「犬」が描かれています。あの犬には何かモデルがあるのでしょうか?
犬のマークは、1889年にイギリスの画家フランシス・バラウドによって描かれた絵が由来となっています。
――元は絵画だったのですね。それはどんな絵なのですか?
この犬は「ニッパー」という名前の非常に賢いフォックス・テリアで、絵を描いたフランシス・バラウドの兄の飼い犬でした。しかし、ニッパーの飼い主だったお兄さんが亡くなってしまったため、フランシスがニッパーを引き取って育てることにしました。
あるとき、たまたま家にあった蓄音器で、お兄さんの声を聞かせたところ、ニッパーは蓄音器のラッパ(スピーカー)の前で耳を傾け、まるで懐かしい主人の声に聞き入っているようでした。
――かつての飼い主の声に反応したと。
そのニッパーの姿に心を打たれたフランシスは早速筆を取って一枚の絵を描き上げました。そのときの蓄音器は録音・再生ができるシリンダー式でしたが、その後、円盤式に描き替えられています。そして『His Master's Voice』(彼のご主人の声)とタイトルを付けたのです。
円盤式蓄音器の発明者が絵に感動してロゴに
――その絵がロゴとなるきっかけは何だったのでしょうか?
円盤式蓄音器の発明者であるエミール・ベルリナーが、亡き主人の声を懐かしそうに聞いているニッパーの可憐な姿に感動し、この名画をそのまま『米国ビクタートーキングマシーン』の商標として1900年に登録しました。米国ビクタートーキングマシーンは『日本ビクター』(現:『JVCケンウッド』)設立当時の親会社でした。
――113年も前に商標登録されているのですね。日本で使われるようになったのはいつなのでしょうか?
日本では、1927年の日本ビクター設立当初から商品に記されています。
――もう85年以上も親しまれているロゴなのですね。
この由緒あるマークは、日本ビクター(現:JVCケンウッド)の『最高の技術と品質の象徴』として深く信頼の歴史を重ね、現在は音楽エンタテインメント事業を手掛けるビクターエンタテインメントを中心に、広く音楽ファンに浸透しています。また陶器の置物や「ニッパーグッズ」として各種キャラクター商品を展開していますよ。
――単なるロゴではなく、ユーザーからの信頼の証しでもあるわけですね。ありがとうございました。
飼い主と犬とのストーリーが一枚の絵となり、それが蓄音器の発明者を感動させ、企業のロゴになる。ビクターのロゴマークはいくつもの物語が紡がれてできているのだと感じました。また、ニッパーのキャラクターグッズも展開されているとのことですので、そちらでもかわいらしいニッパーを堪能してみてはいかがですか?
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(貫井康徳@dcp)