キャラクターで見せていく映画

深川栄洋
1976年 千葉県生まれ。専門学校で映画制作を学び、卒業後『ジャイアントナキムシ』(1999年)、『自転車とハイヒール』(2000年)でPFFアワード入選。オムニバス作品『自転少年』(2004年)で商業監督デビュー。その他の監督作品に『狼少女』(2005年)、『真木栗ノ穴』(2008年)『60歳のラブレター』(2009年)、『半分の月がのぼる空』(2010年)、『白夜行』(2011年)などがある。最新作は2011年2月11日(金曜・祝日)公開の『洋菓子店コアンドル』

洋菓子店を舞台に、そこで働くパティシエたちや周囲の人々の姿を描いた映画『洋菓子店コアンドル』が2011年2月11日(金曜・祝日)より公開される。この作品を監督した深川栄洋監督に話を訊いた。

――最近の深川監督は、原作ものが多い印象がありますが、今回はオリジナル作品です。どのような経緯でこの作品を監督することになったのでしょうか。

深川栄洋(以下、深川)「『蒼井優さん主演で映画を作らないか』という企画が撮影1年前にありました。プロットで、蒼井優さんがお菓子職人を演じるというのがあり、それに興味を持ち、やらせていただくことになりました」

――深川監督の『狼少女』や『真木栗ノ穴』とは、かなり系統の違う作品ですね。

深川「そういう意味でも、面白く監督できました。この作品は、ストーリーラインもとてもシンプルです。最近、ストーリーや構成で見せていく映画が多いのですが、この作品は色々なキャラクターで見せていく。それをやりたかったというのがあります」

――今回は、キャラクターからお話を膨らませていった感じなのですか。

深川「そうです。撮影当初、脚本が練りこまれていない部分もあったのですが、キャラクターでお話が膨らんでいき、最終的に撮影中に70ページ前後脚本に変更がありました。そういう現場での瞬発力で作っていった映画です」

――登場キャラクターがみなさん個性的で、良い意味で日本映画の伝統的なプログラムピクチャーだという印象を受けました。

深川「それは、凄く嬉しい感想ですね。物語のための、ドラマやキャラクターだけではなくて、往年の『社長』シリーズや『男はつらいよ』シリーズのような作品をやりたかったんです。僕の心の中だけのテーマですが、『洋菓子店コアンドル』は女版『寅さん』というイメージもありました」

『洋菓子店コアンドル』

伝説的な天才パティシエでありながら、辛い過去を抱えてケーキ作りを辞めた十村(江口洋介)。恋人を追い鹿児島から上京してきたなつめ(蒼井優)は、東京で評判の洋菓子店「パティスリー・コアンドル」で住み込みの職人見習いとして働くこととなる。十村やコアンドルを取り巻く様々な人々との出会いや交流によって、なつめはパティシエとして成長していくのだった
(C)2010「洋菓子店コアンドル」製作委員会

――キャラクターで見せるためには、パティシエという職業や、お菓子作りの過程、完成したお菓子などを、しっかりと描く必要があったと思います。

深川「ケーキが、江口洋介さんや蒼井優さんに次ぐもうひとつの主役といえる映画です。そこで、『特別なケーキ』というのを意識しました。なつめの地元である鹿児島にはないケーキということで、九州にあるケーキを実際に調べもしました。その上で、今回描こうとしたのは、僕らの知っている懐かしいケーキではなく、『こういうケーキってあるんだ』、『これを食べてみたい』ということを感じられるようなケーキです。ケーキ業界のトレンドの中でも、最先端のものを、採用しました。ちなみに、映画に登場するケーキは、既存のケーキと、映画オリジナルのケーキが混在しています」

――ケーキ撮影のエピソードを聞かせてください。

深川「ケーキは冷えていて美味しいものがほとんどなんで、撮影では苦労しました。長時間ライトを当ててしまうと溶けてしまうので……。撮影用に同じケーキを1日数百個用意したこともありますし、ライティングでも女優さんと同じくらい気を使いました」

――ケーキは全て本物だったんですね。ケーキだけではなく、映画の説得力という意味で、作る姿も大切だったと思うのですが。

深川「主要キャストの皆さんには、職人の動きを特訓してもらいました。蒼井さんは、本当に劇中のなつめ同様に上達してくれて、プロの先生の目から見ても、『本当に数カ月修行した職人のようだ』という評価をいただきました。また、ケーキ作りのシーンでは、手元だけの描写でも、一切吹き替えなしで、蒼井さん本人が演じています」

この映画のもうひとつの主役はケーキ。撮影には全て本物のケーキが使用された
(C)2010「洋菓子店コアンドル」製作委員会

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