各種センサ製品を取り扱うオムロンの汎用センサ事業部では、顧客や代理店などに技術情報等をサイトで提供しているが、運用にあたっていくつかの課題を抱えていた。これらの課題を早期かつ低予算で解決したのが「Google Apps」だ。オムロンがどのような課題に直面し、いかなる手段で解決したのか、オムロンの担当である森藤さんと開発を行ったベイテックシステムズの原口社長に話を聞いた。

情報公開サイトで生じた課題

制御機器やFA(Factory Automation)システムなどのIAB(Industrial Automation Business)を中心に、電子部品からヘルスケアまで幅広い領域をカバーするオムロンだが、その中でもファイバセンサ、光電センサ、近接センサ、ロータリーエンコーダーなどBtoB向けの各種センサ部品を取り扱っている部門が汎用センサ事業部だ。

数多くのセンサをラインアップしている汎用センサ事業部では、顧客や代理店などに技術情報、生産中止製品といった情報を提供してきた。しかし情報提供を続けるうちに、ここ数年でいくつかの課題が浮上したという。

オムロン 汎用センサ事業部
森藤まどかさん

このあたりをオムロン 汎用センサ事業部 森藤まどかさんは「以前のシステムは、表示までにしばらく時間がかかるレスポンスの悪さや、サイトの修正やカテゴリ追加に手間がかかるなどの不便といった課題が生じていました」と語る。

汎用センサ事業部ではこうした背景から、情報公開サイトの新設に向けて活動を開始した。まずは利用者側の意見を取り入れるべく、約半年の期間をかけて必要な機能などのアンケートを実施。続いて複数ベンダーのソリューションを比較し、現在の状況に最適なものを選定していった。

しかし、見積り依頼の段階で新たな問題が発生する。大半のベンダーからはデータセンター利用料やサーバ設置、データベース設定費用などを含めて数百万の見積書が届いたが、プロジェクト自体に『とりあえずやってみよう』というプロトタイピングモデル的な要素が強かったため、この費用捻出が難しかったのである。

そこで汎用センサ事業部は、Googleの提供するWebサービス「Google Apps」に注目した。Google Appsの場合、企業ユースに適した有料版「Premier Edition」のライセンス料金は99アカウント以下で1アカウントあたり年間50米ドル、100アカウント以上で年間6000円となる。もちろんデータはGoogleのサーバに格納されるため、データセンターやサーバ設置にかかるイニシャルコストも一切不要だ。

ただし、単純に安いだけで企業の重要なシステムを委ねるわけにはいかない。森藤氏自身はGoogleのメールサービス「Gmail」を利用していたが、Google Appsには触れたことがなかったので、「Google Apps Premier Edition」の正式販売代理店であるベイテックシステムズに協力を依頼した。