現在、経済産業省が中小企業向けのSaaSプラットフォーム構築する計画が発表されるなど、中小企業向けのSaaSに注目が集まってはいるが、実際の状況はどうなっているのだろうか。SaaS型会計ソフト「ネットde会計」を提供するビジネスオンラインの藤井社長にインタビューした。

年間利用料金は4万2000円

ビジネスオンライン 代表取締役 藤井博之氏

「まだまだSaaSに乗り出して生きているベンダーは少ない。ソフトウェアのSaaS化ができていない状況だ。既存ベンダーがいかにビジネスモデルを変えるか、新たにビジネスに取り組むベンダーはどうしたらいいのかということを考え、広めなければならない状況にある」と語るのは、ビジネスオンラインの代表取締役である藤井博之氏だ。藤井氏は、SOAでSaaS/ASP事業者のサービス連携を推進する団体である「SOABEX」の主催者でもある。

ビジネスオンラインでは、経理システム「ネットde会計」などをSaaS型のサービスとして中小企業向けに展開している。年間利用料金は4万2000円。企業と税理士が情報共有できるよう、会計事務所には2つIDが無料で発行される。インターネットに接続しているパソコンがあれば、わずかな予算で経理処理ができるという、小規模な企業向けのサービスだ。購入前に利用できる無料の体験会や相談サービスなどもあり、購入後には初期設定代行サービスや個別指導も用意されている。

1997年頃、JavaでASP型のプロトタイプを作成

中小企業が利用しやすいことを重視して作られた「ネットde会計」の原型となるものが誕生したのは、1997年のことだという。当時、藤井氏は中小企業を対象としたITコンサルティングを経験し、ごく小規模な企業にとってのIT化の難しさを痛感していた。

「家族経営のような本当に小さな企業では、わずか数万円のソフトウェアも導入できない。会計ソフトを購入しても、これまで税理士に任せていたものを自分でやるのは難しい。税理士側も、勝手にソフトを入れられたのでは対応できない。これが、中小企業のIT化が止まってしまう原因だと感じた。なんとか、ここをIT化したいと考えた」と藤井氏は語る。

税理士と中小企業が無理なく情報共有を実現できる環境を構築したいと考えた藤井氏は、1997年頃、ISDNの普及が進んだのを受けてJavaでASP型のサービスのプロトタイプを作成した。しかし、当時取引のあったIBMには受け入れられず、自身での提供を目指して2000年に藤井氏が設立したのがビジネスオンラインだ。