少子高齢化による労働人口の減少や、グローバル化により国際競争力が増す中、企業にとっては、より有能な人材の確保が困難になりつつあり、だからこそ、これまで以上に労働環境の改善と整備が迫られている。そんな中、現在注目を集めているのが「ワークライフバランス(WLB)」という概念だ。これは、労働者が十分な能力を発揮するには仕事と私生活のバランスが重要だとする考え方で、これからの企業はWLBの実現が優秀な人材の確保と維持のカギとなり、企業の競争力強化につながる経営戦略のひとつとしても捉えられている。

しかし、この抽象的な概念に対して企業が具体的に行うべき施策はこれまで明確に定まっておらず、経営戦略として企業が真摯に取り組みを行うには、あまり実用的ではないというのが現状だ。これに対して、WLBの普及推進を目的とした企業診断・認証制度を、財団法人21世紀職業財団がこの11月からスタートさせた。(財)21世紀職業財団は、1986年4月の「男女雇用機会均等法」施行を機に、法の趣旨を企業と社会に定着させることを目的に、労働大臣(当時)の認可のもとに設立された公益法人。その後も「育児・介護休業法」「パートタイム労働法」に基づく国の指定法人として、働く男女を支援するという観点から、仕事と家庭の両立を支援するための事業を20年以上に渡って実施している。

同財団により"社員を大切にしている企業"として認定された企業にはこのWLB認証マークの使用が認められる

今回、同財団が開始したWLBの認証制度は、人材活用のための2007年度新規事業として、年度はじめから準備が進められてきた。同財団がこれまで培ってきた女性労働者の就労支援という立場から、より一般性をもった取り組みとして新たに始められたものだ。具体的には、厚生労働省の両立指標などを参考に、学識者や企業関係者らによる助言の下、同財団で開発した"WLB度"のチェックシートをWebサイトで公開。各企業がWLB度の自己診断を行うための指標を提供し、さらに希望する企業に対しては、同財団内に設置されたWLB審査認証委員会が個別に審査をし、"社員を大切にしている企業"として認証を行う。

同財団によると、WLBを図る上で当面問題となっているのは、正社員の長時間労働だという。厚生労働省の調査では、30 - 40代の男性社員の4分の1が一週間の労働時間が60時間を超えており、これに加え、年次有給休暇取得率は46.6%と半数を下回っている。このような実態を受け、今回の認証制度では正社員の労働時間、休日、休暇に最も重点が置かれ、評価が行われるのが特徴だ。働きすぎによる疲労や意欲の低下、心身の健康状態の悪化は企業にとって深刻な損失をもたらすとされ、そのような現実に対して仕事時間と生活時間のバランスを不可欠だとするのがWLBの考え方だからだ。