次世代無線通信向けの周波数割り当てを巡り、アッカ・ネットワークスの子会社アッカ・ワイヤレスとNTTドコモらは11日、総務省に特定基地局開設計画の認定(事業免許)申請を提出、今後の事業計画について説明した。同日には同じように免許取得を目指すKDDIらのグループやソフトバンクらのグループも免許を申請しており、次世代PHSでの免許取得を狙うウィルコムとともに、今後総務省による免許取得の審査が行われることになる。

免許申請日に記者会見を行ったアッカ・ワイヤレスとパートナー各社

各社が申請したのは2.5GHz帯の次世代無線通信向けとなる周波数帯域で、2社に割り当てられることになっている。アッカは事業企画会社としてアッカ・ワイヤレスを設立、今回同社が免許申請を行った。

現行の第三世代携帯電話事業者であるNTTドコモは、総務省が免許申請の条件としてあげた、いわゆる「3分の1ルール」に従い、アッカ・ワイヤレスに対して3分の1以下の比率で出資し、共同で免許取得を目指す。アッカ・ワイヤレスでは、仮に免許が取得できた場合その時点で資本金300億円を用意し、そのうち140億円(約47%)をアッカが、76億円(約25%)をドコモが出資するとしている。

サービス計画

さらに今回、アッカ・ワイヤレスのパートナーとしてTBS、三井物産、アイテック阪急阪神、京浜急行電鉄、朝日ネット、NECビッグローブ、ソネットエンタテインメント、ニフティ、フリービット、YRP事業開発研究所、JPモルガン証券、Ignite Group、DCMの13社が出資を決めており、今後、韓国Korea Telecom(KT)もパートナーとして出資する。

アッカ・ワイヤレスのパートナー

TBS代表取締役専務・城所賢一郎氏

KT専務取締役 携帯インターネット事業本部長・表鉉明氏

三井物産代表取締役 専務執行役員・伊藤博氏

フリービット副社長CFO・田中伸明氏

NECビッグローブ執行役員・古関義幸氏

Ignite Groupチェアマン・三井信雄氏

JPモルガン証券社長・グレゴリー・ガイエット氏

朝日ネット社長・山本公哉氏

ソネットエンタテインメント社長・吉田憲一郎氏

ニフティ取締役常務執行役員・小栗清剛氏

アッカ・ワイヤレスでは、通信規格として2.5GHz帯を使う国際標準規格IEEE802.16e(モバイルWiMAX)を採用、最大通信速度は下り40Mbps、上り5Mbpsを実現するとしている。データ通信の料金は定額制にする計画だ。アッカ・ワイヤレスの木村正治社長は、具体的な価格に関しては明言は避けたが、PHSを含む現状の定額制よりも「かなり安くできる」という。

アッカ・ワイヤレス社長・木村正治氏

NTTドコモ社長・中村維夫氏

アッカ・ワイヤレスの計画では、サービス開始は2009年3月、初年度で加入者数25万、売上高60億円、2013年ではそれぞれ500万加入、1,500億円を目指す。2012年には黒字化する。当初は首都圏の国道16号線内、大阪市、神戸市、京都市、名古屋市をカバーする。2010年には人口カバー率を50%までに引き上げ、2011年には全国展開を開始し、全国の総務省総合通信局が管轄する区域での人口カバー率は2012年ごろに50%に達する。2013年には70%程度をカバーする。設備投資額は2015年までに累計2,000億円を見込む。

対応端末に関しては、当初カード型端末とPCによるデータ通信をターゲットとし、09年にはモバイルWiMAXチップが内蔵されたノートPCにも対応する。その後2010年には、ゲーム機やデジタル家電などへの組み込み端末、2011年にはチップ内蔵の車載端末が増加すると見ており、こうした端末もターゲットとする。

端末・販売計画

端末の販売は、当初は店頭・ネット販売による直販だが、その後、MVNOによるサービスの提供を想定する。計画では、ユーザーはアッカ・ワイヤレスから「ID」を購入し、複数の端末で同じIDを利用できるようにする。特にユーザーが簡単に利用できるような仕組みを導入するつもりだという。

アッカはADSL・FTTHという固定ブロードバンド通信事業を行ってきており、モバイルWiMAXによってFMC(固定網と携帯網の融合)も狙う。ドコモは基地局の展開などで協力、さらにTBSのリアルタイムコンテンツの配信などで通信と放送の融合も目指していく。

アッカ・ワイヤレスではドコモの携帯、アッカの固定通信に加え、多様な事業者との連携で幅広いサービスを提供していきたい考え

アッカ・ワイヤレスでは、今回の各社とのパートナーシップで、オープンな水平分業モデルの実現を図る。ISPらがアッカ・ワイヤレスの回線を使ったMVNOによるサービスを提供したり、鉄道会社が車内や沿線のサービスとしてモバイルWiMAXを活用したりするなど、それぞれが力を合わせて「新たな事業分野、市場開拓を勧めていきたい」(木村社長)。それによって日本の通信事業の発展と拡大に寄与したい考えだ。

なお、無線技術やネットワーク構築、基地局の設置などで協力するドコモは、これまでモバイルWiMAXの実証実験も行ってきたが、今後はアッカ・ワイヤレスとのパートナーシップよる展開に切り替え、自社では下り速度最大100Mbpsに達する「Super 3G」の開発を進める。モバイルWiMAXに関してはMVNOとして提供、さまざまなネットワークを用意することで「多種多様なお客様に対応するのが重要」(ドコモ・中村維夫社長)という方針だ。中村社長は、携帯電話事業は周波数も逼迫しており、モバイルWiMAXと携帯電話のすみ分けは可能としている。