今回のバージョンで特に目につくのが概要の見せ方が工夫されているという点です。

先にも述べたように、Webアクセス解析とひとことで言っても様々な種類のデータが存在します。メニューをみればその多さに気付くと思いますが、できるだけ簡単にアクセスできて、さらに可能な限り多くの情報を見せるための工夫がされています。

以前はサブメニューを辿ってでしか得ることができなかった情報も、それぞれのカテゴリに概要ページができたことにより、ワンクリックで大まかなことが分かるようになりました。つまり、詳細のページへアクセスしなくても、概要ページを見てしまえば大まかなイメージがつきやすくなったわけです。さらにマイページは完全にカスタマイズが可能で、利用者が気になるデータだけをマイページに表示できるようになりました。こういった機能を盛り込むことで、利用者の役職やサイトの目的に応じて柔軟なレビューを即座に観覧することを可能にしています。

「マイレポート」はカスタマイズ可能な概要ページ。マーケティング担当、制作担当など、様々な分野に携わる人のニーズに、柔軟に応えることができるようになっている

即座にイメージを掴みやすくする工夫はこうしたサイト構成や機能だけでなく、グラフにも及んでいます。Flashで作られた今回のグラフは太い線で明確に描写されており、色の付け方も以前よりメリハリのあるものになりました。以前からグラフにはあまり数値や情報は表示されていませんでしたが、今回はグラフ内からそういった情報を一切省いており、マウスオーバー(もしくはマウスクリック)で表示させるしくみにしてあります。

正確な数値を即座にたくさん見せるのではなく、全体的な印象(イメージ)をみせることに力を入れているわけです。見た目を可能な限りシンプルにし、利用者がみなければならない情報を最小限に抑えることによって、概要ページに今まで以上に多くの情報を載せても、見やすくすることを可能にしています。

グラフのインタラクションも以前より分かりやすいものになっています。以前は、グラフのポイントになっている部分を正確にクリックしなければ見ることができなかった数値も、ポイント付近、もしくはポイントが配置されているY軸上にマウスをもっていくだけで数値が見れるようになりました。マウスオーバーしたポイントが、選択していることを示すかのように大きくなるといったエフェクトも、今までにはなかった改善点といえるでしょう。こうしたインタラクションは細かい部分ではありますが、実装するかしていないかで使い心地が随分違うといえるでしょう。

一元的な情報をみればそれで良いというわけではないアクセス解析では、様々な数値データと図を見る必要がでてきます。サマリーページには最も重要になるグラフが大きく表示されているのと、他にグラフのミニチュア版がいくつかページ下に掲載されています。これは情報過多になりやすいアクセス解析において、コンパクトに情報をまとめるために使われてるテクニックで、Sparklineと呼ばれています。情報デザインの第一人者、Edward Tufte氏が考案した用語で、数値やテキストなどといった多くの情報を有する通常の図とは異なり、最小限の情報でコンパクトにまとめた図のことを指します。

Sparklineは詳しい情報の提示が目的ではなく、図が表示している情報の概要やイメージを示すのが目的です。詳しくは分からなくても、全体の傾向を把握するのに便利ですし、コンパクトにまとめられているので、様々な種類の図を一度にみるのに有効な手段です。グラフの描写方法、そしてSparklineの採用をみても、今まで以上にサイトの全体像をスナップショットのように見れるようになったといえるでしょう。

マイレポートと概要ページには、大きなグラフだけでなく、サムネイルのような小さなグラフがいくつか表示されている。これをSparklineと呼び、情報の全体像を掴むのに便利な技法ということで採用したのだろう。Sparklineに関する詳しい説明は、Wikipediaの「Sparkline」の項を参照して頂きたい