インターネットからメディアを再生する「リモートメディアストリーミング」

2つ目の新機能は、ライブラリを外出先からアクセスする「リモートメディアストリーミング」だ。先ほどのリモート再生は、LAN内の使用を想定して設計されているが、こちらは外出先などインターネットを介したアクセスが前提となる。一見するとセキュリティ面に不安を覚えるかも知れないが、同機能使用時は再生側および送信側で同じオンラインIDによる認証を必要するため、他者がネットワーク経由でデータを覗き見ることは難しいだろう。ここで必要となるオンラインIDは、執筆時点でWindows Live IDのみ。異なるオンラインIDを追加する仕組みも設けられているので、GoogleやYahoo!といった大手が参入するかも知れない。

なお、オンラインIDの一種であるWindows Live IDは、Windows Liveアプリケーションをインストールすると自動的にインストールされるが、Windows Liveを使用しない場合は、別途Windows Live IDアシスタントの導入が必要となるので、画面の指示に従って導入して欲しい。また、前述のようにWindows Live ID自身も必要なので、新しいWindows Live IDか、普段から使用する電子メールアドレスを関連付けておくといいだろう。以下の一連の手順を示すが、この作業を再生側および送信側となるWindows 7マシンのWMP12で実行すれば準備完了だ(図352~358)。

図352: WMP12を起動し、<ストリーム>ボタンをクリックすると表示されるメニューから<ホームメディアへのインターネットアクセスを許可>を選択する

図353: 設定を行なうダイアログが表示されるので、<オンラインIDをリンクする>をクリック

図354: Windows Live IDにある<オンラインIDをリンクする>をクリック。なお、オンラインIDプロバイダが存在しない場合は画面の指示に従って、Windows Live IDを導入して欲しい

図355: あらかじめ用意したWindows Live IDとパスワードを入力して、<サインイン>ボタンをクリック

図356: これでオンラインIDとWindows Live IDがリンクされた。<OK>ボタンをクリックしてウィンドウを閉じる

図357: 元のダイアログに戻るので、<ホームメディアへのインターネットアクセスを許可>をクリック

図358: これでリモートメディアストリーミングが有効になった。<OK>ボタンをクリックして設定完了

後は両方のWindows 7マシンをインターネットに接続し、WMP12を起動すれば、ナビゲーションウィンドウに一方のコンピュータが表示される。今回は異なるISPを用いて、FTTH経由でインターネットに接続するコンピュータと、ADSL経由で接続するコンピュータの2台を用意したため、パフォーマンスダウンは起きなかったが、動画の早送りなどは、一定時間待たされた(図359~360)。

図359: ナビゲーションウィンドウにある「kaz(buddha)」が異なるネットワークに存在する。アイコンにインターネット経由を示すオーバーレイアイコンがあるのでわかりやすい

図360: 後はローカルメディアと同じように操作すれば、メディアファイルの再生が始まる。ただし、クオリティはネットワーク帯域によって異なる

ここで問題となるのがネットワーク帯域。外出先で高速なインターネットアクセス環境を確保するのは難しく、高ビットレートを持つ動画ファイルや音楽ファイルのリアルタイム再生はおぼつかないことが多い。そのためWindows 7には、ストリーミング再生時に、対応するDLNAデバイスやネットワーク帯域状況に応じてトランスコードする機能が備わっている。今回はWindows 7に同梱するWildlife.wmvを連続再生させてみたが、今回配信サーバの役割を担ったコンピュータ(Intel Core 2 Duo T7600 2.33GHz)のCPU使用率は50%を超えることが多く、90%台に及ぶことも。もちろん外出時の使用を前提としているため、いくらCPU使用率が高まっても問題ないが、排熱処理が乏しいコンピュータの場合、注意が必要だろう(図361)

図361: 1回目の再生では90%台まで高まったCPU使用率だが、2回目はバッファリングが聞いたためか、占有時間も短くなっている

なお、リモートメディアストリーミングがうまく行かない場合は、WMP12の診断機能を試してみることをお薦めしたい。リモートメディアストリーミングでは、特定のポートを開けなければならないため、事実上UPnP対応のルータが必要だ。最近出回っている多くのルータはUPnPをサポートしているが、筆者はDHCPサーバを別途用意しているため、ルータのDHCP機能を無効にしている。そのためか、UPnP機能を使用できず、TeredoというNAT通信時にIPv4環境でIPv6を使用するコンポーネントが正常に動作していないため、当初うまく接続することができなかった。トラブルの原因は様々なものがあるため、ここですべてを解説することはできないが、WMP12のリモート機能使用時にトラブルが発生したら、同診断機能をお試し頂きたい(図362~365)。

図362: WMP12の<ストリーム>ボタンをクリックし、メニューから<ホームメディアへのインターネットアクセスを許可>をクリック

図363: 設定時と同じようにダイアログが表示されるので、<接続の診断>をクリックする

図364: するとご覧のようにシステム状態のチェックと、リモートホストのチェックが行なわれる。ここでは「Teredo」の検証が失敗しているため、問題が発生していることが確認できた

図365: 「ポートフォワーディング情報」をクリックすると、使用ポートが表示されるので、ルータのNATテーブルを書き換える方法もある