長すぎたWindows XPの"春"

Windows 7の開発がMicrosoftによって公式に認められたのは2008年5月だが、同社はこれまでOSのメジャーリリースを終えると、すぐに次世代バージョンの開発に取りかかっていた。現にWindows 2000がリリースされた2000年2月には、「Whistler(ウィスラー: 開発コード名)」に着手し、同年4月に開催されたWinHEC 2000では、早々とWhistlerの存在を認めている。では、Windows 7の開発がいつから始まったのかと言えば、話はWindows XPがリリースされた2001年まで遡らなければならない。

Windows XPの次世代OSとして開発に取りかかった「Blackcomb(ブラックコム: 開発コード名)」は、先進的な概念を取り入れ、まったく新しい技術やユーザーインタフェース(以下、UI)を提供する計画だったが、そのアイディアの実現に予想以上手間取った同社は、Windows XPとBlackcombの中間に位置する「Longhorn(ロングホーン: 開発コード名)」に着手。しかし、Longhornの開発も大幅に遅れ、当初は新ファイルシステムとして実装予定だったWinFSも、NTFS上のデータベースエンジンに格下げし、最後は開発中止という苦渋を受け入れた末にWindows Vistaのリリースに至った経緯がある。

艱難辛苦(かんなんしんく)の末にリリースされたWindows Vistaだが、マーケティング的には、お世辞にも満足行くものだったとは言い難い。これはWindows Vistaが求める高いマシンスペックもさることながら、5年にも及ぶWindows XPの長期運用が大きな仇となったのだろう。元々Windows XPは、Windows NT系OSが持つ安定性と堅牢性、Windows 9x系のマルチメディア機能や親和性の高いUIを併せ持ち、Windows 95に続く大ヒットOSである。もちろん使い勝手の悪い部分はあったものの、数多くのオンラインツールを用いることでデメリットを埋め、あえてバージョンアップするメリットを見いだすのが難しいほど安定するようになり、圧倒的なユーザー数を誇るのも納得できる話だ。

しかし、コンピュータの世界においては"十年一昔"どころか、1年前に新登場した技術も、気付けば新技術に取って代わることもしばしば。Windows XPは、2009年1月一杯を持って販売を終了し、PCパーツと一緒に購入可能だったDSP版も同年6月を持って販売終了。既にメインストリームサポート期間も終え、セキュリティ更新プログラムや有償サポートなどは引き続き提供されるが、セキュリティ以外の新しいコンポーネントや、Service Packの提供、無償サポートが提供されなくなる延長サポート期間に突入している(マイクロソフトプロダクトサポートライフサイクル)。