Windows XP Modeの設定

ここからはゲストOSのカスタマイズを行なうための設定ダイアログに関する解説を行なおう。ただし、ゲストOSが起動している状態では、設定内容を変更できないので、一度ゲストOSをシャットダウンしてから、設定ダイアログを呼び出す(図597~598)。

図597: Windows Virtual PCの<Ctrl+Alt+Del>メニューをクリックし、ロックダイアログの<シャットダウン>ボタンをクリック。これでゲストOSがシャットダウンする

図598: 設定ダイアログを呼び出すには、仮想マシンフォルダを開き、対象の下層マシンファイルを右クリックして、メニューから<設定>をクリックする

最初の「名前」は、ゲストOSに対する名前と簡単なメモを入力するためのセクション。「名前」の内容を変更すると、仮想マシンファイル名やWindows Virtual PCのウィンドウフレームに表示される名称に影響を及ぼすが、「メモ」は仮想マシンフォルダを表示した際に表示されるコメントに過ぎない。そのため「名前」はシンプルに、「メモ」にはService Packの適用状態や仮想マシンの目的、導入済みのアプリケーション名などを記載しておくといいだろう(図599)。

図599: 設定ダイアログの「名前」セクションでは、仮想マシンのファイル名やゲストOSに対するメモを記載できる

次の「メモリ」は、文字どおりゲストOSに対して割り当てる物理メモリ容量を設定するセクション。Windows XPであれば512MB、Windows VistaやWindows 7なら1GB(1024MB)ほど割り当てるといいだろう。ただし「使用可能なメモリ」の数値を以上の数値を割り当てることはできないので、必ず同値を確認してから設定する(図600~601)。

図600: 「メモリ」セクションでは、ゲストOSに割り当てる物理メモリ容量を設定できる

図601: 「使用可能なメモリ」に記述された数値以上割り当てると、警告メッセージが表示される

「ハードディスク1」から「ハードディスク3」までは、ゲストOSがHDDとして使用できる仮想HDDファイルの設定を行なうセクションだ。<変更>ボタンをクリックすると、既存の仮想HDDファイルに対して圧縮および結合操作が可能になる。前者は一見すると仮想HDDファイルを圧縮するように思えるが、単純に未使用領域を削除するというものだ。ファイルの書き換えが多いゲストOS用仮想HDDファイルに対しては有効な操作となるだろう。

また後者の結合は差分仮想HDDファイルをベースとなる仮想HDDファイルに統合するというもの。自動的に生成されるWindows XP Modeの仮想HDDは、ベースとなる仮想HDDファイルがProgram Filesフォルダにあり、各ユーザーはそれに対する差分形式の仮想HDDファイルを使用しているため、ゲストOSに対する変更内容を各ユーザーのゲストOSに環境に結合する場合に使用するとよい。なお、これらの操作は後述する復元ディスクが有効になっている際は、復元ディスクが削除する旨を示す警告メッセージが発せられる。ゲストOSに対する変更内容が破棄されてしまうので、注意して操作して欲しい(図602~606)。

図602: 「ハードディスク1」では、ゲストOSがHDDとして使用する仮想HDDファイルの設定が可能だ

図603: <変更>ボタンをクリックすると、仮想HDDファイルに対する圧縮もしくは結合の操作を行なえる

図604: 仮想HDDファイルの未使用部分を削除して、ファイル容量を軽減する圧縮機能。たまに実行すると効果的だ

図605: 仮想HDDファイルの差分ディスクと親ディスクを統合する結合機能。Windows XP Modeの場合、親ファイルはProgram Filesフォルダにある仮想HDDファイルとなるため、他のユーザー環境にも影響を及ぼす可能性がある

図606: 復元ディスク機能が有効な場合、仮想HDDファイルに対する操作を行なうと、復元ディスク情報を破棄する旨の警告メッセージが表示される

一方、ゲストOSのHDD容量が足りなく、新しい仮想HDDを必要とする場合は、「ハードディスク2」など異なるセクションで<仮想ハードディスクファイル>を有効にしてから<作成>ボタンをクリックする。また、既存の仮想HDDファイルがある場合、<参照>ボタンで選択することも可能だ。仮想HDDファイルの作成はウィザード形式で行なわれ、最初に種類の選択をうながされる。「容量可変」はデータが書き込まれる際にファイルサイズが増大する方式。利便性は高いが、ホストOS上にある仮想HDDファイルの断片化は進むので、定期的なデフラグ操作が求められる。「固定サイズ」は最初から仮想HDDで使用する領域をあらかじめ固定するというもの。最後の「差分」は変更内容を異なる仮想HDDファイルに保存する方式。Windows XP Modeの初期状態はこれだ。

使用スタイルにあわせて種類を選択すると、仮想HDD名や保存場所の設定をうながされる。「名前」はファイル名にも適用されるため、わかりやすい名称を付けるとよい。また、場所は初期状態でかまわないが、初期状態ではホストドライブに作成されるので、ゲストOSの使用頻度が高い場合、物理的に異なるHDDを用意し、そこに作成した方が全体的なパフォーマンスも安定するだろう。最後に仮想HDDファイルのサイズを入力すれば作成完了となる。この手順は後述する独自仮想環境の作成でも使用するので、覚えておいて欲しい(図607~611)。

図607: 仮想HDDファイルを新たに作成するには、異なるセクションを選択し、<仮想ハードディスクファイル>をクリックして有効にしてから<作成>ボタンをクリック

図608: 仮想HDDファイルの種類を「容量可変」「固定サイズ」「差分」のいずれかから選択する。今回は<容量可変>をクリックして先に進む

図609: 仮想HDD名を入力し、作成場所を確認してから<次へ>ボタンをクリック

図610: 「容量可変」「固定サイズ」の場合、仮想HDDファイルの容量を指定する。前者は最大値、後者なら適度な数値を入力して<作成>ボタンをクリック

図611: これで仮想ディスクの作成が完了となる

「ディスクの復元」セクションに設けられた同機能は、文字どおり元の仮想HDDに変更を加えず、仮想マシンへの変更を別ファイルに保存し、必要に応じて以前の状態に戻すか、現行の変更内容を適用するか選択できるというものだ。前述の「差分」はベースとなる仮想HDDファイルと変更を加える差分用仮想HDDファイルに分かれているが、復元ディスクはファイル管理を意識せず、適用と破棄、いずれかを選択するため、仮想環境ソフトウェアに搭載されているスナップショットを連想するとわかりやすい。なお、同機能は初期状態では無効になっているので、有効にしたい方は<復元ディスクを有効にする>をクリックしてチェックを入れて欲しい(図612~614)。

図612: ディスクの復元機能は初期状態で無効になっている。有効にするには<復元ディスクを有効にする>ボタンをクリック

図613: <変更の破棄>ボタンをクリックすると確認をうながされる。<続行>ボタンをクリックすると、復元データファイルに格納されているゲストOSへの変更内容が破棄される

図614: <変更の適用>ボタンをクリックすると、復元データファイルの内容が仮想HDDファイルに統合される

「DVDドライブ」セクションでは、ゲストOSでホストOSのDVDドライブを使用するか、ISOイメージファイルをマウントするか選択することが可能。「COM1」セクションでは、ゲストOSに対するシリアルポートのサポートを、ホストOSのシリアルポートもしくは名前付きパイプかテキストファイルから選択できる。「ネットワーク」セクションは、ゲストOSで使用するネットワークのWindows Virtual PCと一緒に導入されるVirtual PCネットワークフィルタドライバを用いたNAT接続か、物理的なネットワークデバイスに直接アタッチするか、仮想マシン同士で閉じたネットワークを形成する内部ネットワークのいずれかを選択可能。通常は設定を変更する必要はないが、どうしても正常に動作しないときや、危険性を伴うアプリケーションの検証を行なうときに変更するといいだろう(図615~618)。

図615: ISOイメージファイルをマウントするときは「DVDドライブ」セクションで、<ISOイメージを開く>をクリックし、<参照>ボタンでISOイメージファイルを選択する

図616: シリアルポートの設定は「COM1」「COM2」セクションで設定可能。最近では使用する場面も少ないが、古いデバイスを活かすときに活用できる

図617: ゲストOSが使用するネットワークアダプターのアタッチ先を選択する。通常は<共有ネットワーク>のままでよい

図618: デバイスやリソースの共有を実現する「総合機能」の設定を行なうセクション。こちらも通常は有効にしておこう

「統合機能」セクションでは、ホストOSのデバイスやリソースをゲストOSと共有するための統合機能に対して設定が可能。初期状態では各ストレージデバイスと、クリップボード、プリンタ、スマートカードが有効になっている。ゲストOSでサウンド再生が必要な場合は、同セクションで<オーディオ>を有効にしておこう。「キーボード」セクションでは、[Win]キーを用いたショートカットキーをホストOS/ゲストOSいずれに適用するか選択が可能。ドロップダウンリストの既定値である<全画面表示のみ>の場合、仮想マシンがウィンドウ表示ではホストOS、全画面表示ではゲストOSで使用できる。「ログオン資格情報」セクションはセットアップ時に行なった、ゲストOSへのログオンパスワードに関する設定。「自動公開」セクションはゲストOSのアプリケーションを、ホストOSとなるWindows 7のプログラムメニューに並べる設定を行なう。最後の「閉じる」セクションは既に述べたので、ここでは割愛する(図619~621)。

図619: [Win]キーを用いたショートカットキーの適用先をドロップダウンリストから選択する

図620: ゲストOSに自動ログオンするためのログオン資格情報。パスワード自体はWindows 7の「資格情報マネージャー」で管理される

図621: ゲストOSのアプリケーションをWindows 7のプログラムメニューに表示する「自動公開」機能。<仮想アプリケーションを自動的に公開する>が有効になっていないと動作しない