マルチデバイスの利用を推進したり、大容量ファイルの共有を効率よく行う上で、ビジネスではオンラインストレージサービスが欠かせない存在になっている。そのオンラインストレージサービスの代名詞といえるのが「Dropbox」だ。

個人用途では人気のDropboxだが、法人向けには「Dropbox Business」が用意されている。しかし、個人向けとの機能の違いや、なぜ企業が法人向けを導入すべきなのかは、意外と知られていないかもしれない。

そこで本連載の1回目では、業務効率化やセキュリティ対策、コーポレートガバナンスに役立つDropbox Businessの機能と特徴をあらためて整理していきたい。

  • Dropbox Business

Dropbox Businessとは、どのようなサービスか?

Dropbox Businessは、いわずと知れたオンラインストレージサービス「Dropbox」のビジネス版だ。主な機能としては、クラウド上でファイルを安全にバックアップ、同期でき、PCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスからいつでもアクセスしたり、他のユーザーに手軽に共有することが可能。これらの機能をわかりやすいユーザーインターフェイスで操作でき、クラウドを意識することなく利用できる。

法人向けのDropbox Businessでは、Droboxの使いやすさはそのままに、無期限の復元やバージョン履歴、企業向けの管理ツール、チームフォルダなどのビジネスに最適な機能を備えている。

価格は、個人向け有償版のDropbox Proが容量1TBで1,000円/月であるのに対し、Dropbox Businessは1ユーザーにつき1,250円/月(ともに2016年10月時点)。利用可能な容量は、初期導入時は1TB/ユーザーだが、必要に応じて無料で追加でき、無制限の容量を利用することが可能だ。

ちなみに、大企業向けのDropbox Enterpriseも用意されている(価格は要問合せ)。同プランでは、Dropbox Businessの機能に加えて、スマートフォンなどのモバイルデバイスを統合的に管理できるエンタープライズ モビリティ管理(EMM)や、エンドユーザーと管理者向けの上級トレーニングが提供される。

業務効率化に役立つコラボレーションツール

Dropbox Businessの特徴のひとつは、オンラインストレージサービスの枠を超えたコラボレーションツールであるという点。たとえば、プロジェクトなどで社内外のユーザーと共同作業を行う際には、Dropbox上に共有フォルダを作成して他のユーザーを招待し、フォルダ内のファイルを共同編集したり、ファイルを随時フォルダにアップロードしていくことが可能だ。

また、メールでは送れないような大容量ファイルを共有したいときに、Dropbox上のファイルやフォルダの共有用URLを生成して、メールなどで送付することができる。共有用URLは、Dropboxのユーザーかどうかにかかわらずアクセスでき、閲覧ユーザーや有効期限、パスワードを指定することも可能。かつて大容量ファイルを送るときには、ファイル便などのサービスがよく使われていたが、もはやDropboxだけで十分といえる。

また、ビジネスシーンでは、複数の会社に一斉に見積りを依頼するといったことも多いだろう。そんなときに便利なのがファイルリクエスト機能だ。メールで見積りをもらうと、各社の提案は受信トレイの中でバラバラになってしまうが、ファイルリクエスト機能を使えば、Dropboxの1つのフォルダに各社の提案が自動的に集まるため、じっくり比較検討を行える。もちろん、Dropboxのユーザー以外にリクエストすることもできる。

さらに、WebブラウザやスマートフォンアプリからDropbox上のファイルを閲覧する際には、コメント機能を利用可能だ。修正箇所の指示や質問など、ファイルを共有しているユーザー同士のコミュニケーションを1カ所にまとめることができて便利。Webブラウザやスマートフォンアプリでは、プレビュー機能も利用でき、OfficeファイルやAIファイルなどを専用アプリ不要で閲覧することが可能だ。

そのほかにも、Microsoft OfficeやGmail、Salesforceといったサードパーティーの主要サービスとの連携機能も備えている。詳しくは、Dropbox Businessのコンテンツポータルサイトなどをご参照いただきたい。

Dropbox Businessならではの管理機能

コラボレーション機能のほとんどは、個人向けのDropboxでも利用可能だが、社員がDropboxの個人アカウントを仕事に使うことは、企業にとってリスクを伴う。社員がどのファイルを誰と共有し、どのように管理しているかを企業側が把握できないからだ。さらに、社員が退職したあとのファイルの取り扱いも大きな課題となる。

高度な管理ツールを備えたDropbox Businessでは、このようなシャドーITのリスクにも対処できる。管理ツールでは、メンバーのファイルの追加や編集、移動や削除、共有など、あらゆるファイル操作のログを監視でき、社内外のユーザーとのファイルの共有状況も把握することが可能。

また、外部のユーザーとのファイルの共有を許可するかや、外部ユーザーにフォルダの編集権限を許可するかなど、メンバーがどのように共有を行うかを管理者が細かく設定することもできる。さらに、万が一、PCやスマートフォンなどを紛失した場合に、遠隔操作でデバイス内のデータを削除できるリモートワイプ機能も利用可能だ。

さらに、個人向けのDropbox Proでは、ファイルのバージョン履歴の保存期間が30日のところ、Dropbox Businessでは無期限にバージョン履歴が保存される。誤って削除や上書き保存を行ってしまったファイルなどを元の状態にいつでも復元することができる。

このほか、メンバーの招待や削除、パスワードリセット、2段階認証の強制などを行えるメンバー管理機能や、ユーザーを所属部署やプロジェクトでまとめて、ファイルへのアクセス権限をグループごとに設定できるグループ機能なども用意されている。

Dropbox Businessの利用事例

ここまでDropbox Businessの機能を紹介してきたが、それだけでは使い方をイメージできないということもあるかもしれない。そこで、Dropbox Businessの具体的な利用事例を見ていきたい。

Dropbox Businessは、大容量のデザインデータを外部とやりとりする広告業界のほか、図面を現場とやりとりする建設業界などでも多く利用されているという。ここでは、ある建築会社でのビル建設プロジェクトにおける使い方を紹介しよう。

その会社では、プロジェクトごとにDropbox上に1つの共有フォルダを作成し、社内外とのデータのやりとりに活用しているという。まず、設計フェーズでは、共有フォルダに建築士や施主を招待し、設計図やイメージ図のファイルを保管して、設計のすり合わせを行う。

  • 共有フォルダに建築士と施主を招待して、設計のすり合わせを行う

Webブラウザ版のDropboxにはプレビュー機能があるため、Illustratorなどを持っていない施主でも、イメージ図を閲覧でき、さらにコメント機能により要望などを書き込むことが可能。また、建築士にとっては、修正したファイルを何度もメールで送り直す必要がなく、上書き保存するだけでファイルをアップロードして、スムーズにやりとりができる。

  • 設計が完了したら、建築士と施主の共有フォルダへの接続を解除して、代わりに現場の監督と協力会社を招待

設計が完了したら、工事フェーズへと移り、ここで建築士と施主は共有フォルダから接続を解除。新たに現場の監督や協力会社を共有フォルダに招待し、完成した図面に加えて、工程管理表や品質管理シートなどを保管して工事を進めていく。工事が終わったら、現場の監督や協力会社も共有フォルダから接続を解除し、法律で決められた10年間の記録保管のために、管理部門がフォルダを管理するという。

  • 工事が終わったら、記録保管のために管理部門がフォルダを管理する

この使い方では、ファイルの置き場所は常に同じで、フェーズに応じて参加メンバーが変わっていくのが特徴。また、修正したファイルをメールでやりとりすると、どれが最新のファイルかわからなくなったり、ファイルが先祖返りしてしまうことがあるが、共有フォルダでやりとりすることで、いつでも最新のファイルを参照できるようになる。

ちなみに、最近の工事現場では、タブレットを使って図面を閲覧している。以前は、図面データを保存したNASを現場内のプレハブに設置し、タブレットからアクセスしていたが、夜間などにNASが盗難に遭うリスクがあった。しかし、Dropbox Businessの利用により、そのような盗難リスクも解消することができたという。

今回はDropbox Businessの機能と特徴、利用事例について紹介した。連載の第2回では、Dropbox担当者へのインタビューによって、数あるオンラインストレージサービスの中から、Dropbox Businessが選ばれる理由を解き明かしていきたい。

サテライトオフィス

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さまざまなビジネスモデルに最適なソリューションパッケージを開発し、ユーザー目線に立った戦略の企画・提案を行っています。業界No.1の導入実績を持つG Suite(旧Google Apps)をはじめ、Office 365、Dropbox Business、LINE WORKS、DMMの人型ロボット「Palmi」関連のロボットソリューション、ベトナムでのオフショア開発でのクラウドソリューションなど、クラウドコンピューティングに関わるビジネスの可能性を追求しています。



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