株式会社スターフライヤーは、運航乗務員や客室乗務員の業務にiPadを導入し、紙書類を主としていた働き方を改革。併せてiPadを活用した検査体制の徹底により、ホスピタリティと安全性の向上に努めている。

業務負担の軽減と働き方の変化を実現したiPad導入

2006年、新北九州空港(現名称:北九州空港)の開港とともに羽田空港との路線運航を開始したスターフライヤー。世界的にも類を見ない黒色のジェット機、黒色ベースでまとめられたラグジュアリーな機内は、一度搭乗したら忘れることがない同社のシンボルと言える。

2018年、同社はそれまで紙だった各種書類等の電子化に着手し、iPad端末を導入。運航乗務員や客室乗務員各一人に一台を貸与することで、業務負担軽減と生産性向上を実現した。従来は、膨大な量の規程やマニュアルを持ち歩き、改訂のたびに印刷・配布が必要になっていたが、iPadの導入によってそれらは不要になり、手間とコストは大幅に削減されたという。

  • 運航本部 運航業務部 新貝孝士氏

運航本部 運航業務部の新貝孝士氏は「運航乗務員は、運航マニュアル等を必ず携行しなくてはなりません。従来はすべて紙で、約2,000~3,000ページ、重さはおよそ3kgにもなるため、大きなフライトバッグが必要でした。これを電子化し、iPadにまとめることで小さなカバンで業務に臨めるようになりました」とその成果を述べる。

  • 空港客室本部 客室部 乗務一課 兼 客室業務課
    アシスタントマネージャー 中村未来氏

客室乗務員の業務改善も進んでいる。空港客室本部 客室部 乗務一課 兼 客室業務課 アシスタントマネージャーの中村未来氏は「客室乗務員も約600ページあるマニュアルを使っていたため、フライト中に該当箇所を探すのも大変でした。しかし現在は、検索機能で必要な情報に簡単にたどりつけますし、動画解説もあり、とてもわかりやすくなりました。また機内販売商品の変更などの業務連絡も、紙で張り出されたものを出社後にメモをしていたのですが、現在はすぐに最新情報が手に入ります」と変化について語った。

更に、乗務員の勤務スケジュールも、もともとは紙に印刷して配布しており、変更が入るたびにやり直しが発生していた。しかしiPad導入によりそれらの工程はすべて省略でき、スケジュール変更時も即座に相互確認が可能になったという。

空の安全を守るアルコール検査システムへの取り組み

iPad導入で大きな成果を上げた業務はもうひとつある。それはアルコール検査だ。スターフライヤーは、飛行勤務前12時間以内の飲酒禁止と乗務前・後のアルコール検査実施を定めており、iPadを活用したアルコール検査システムにより、徹底した安全対策に取り組んでいる。

  • 安全推進部 アルコール対策室長 武内淳氏

アルコール検査システムを完成させたのが、安全推進部 アルコール対策室長の武内淳氏。同氏は「検査体制は、人が介在しながらもシステムによって安全を担保する必要があります。航空法の要件に合致し、記録が確実に残る、不正のないシステム構築を目指しました」と取り組みについて話す。

アルコール検査システムには、整備従事者と地上運航従事者用、運航乗務員用に2つの仕組みが用意されている。整備従事者と地上運航従事者の検査は1度で、事務所に備え付けのiPadにある検査アプリ「ALBLO」とタニタのアルコール検知器「FC-1000」を用いる。これをリモートでも可能とするべく、Teamsを活用。これによって、羽田空港などでの検査に北九州のスタッフが対応可能となり、集中管理による検査体制を確立した。

一方、運航乗務員は事前検査と法定検査の2度を経て、ようやく乗務を開始できる。事前検査はネットに繋がっていればどこでも実施可能だ。運航乗務員が所持するiPadの検査アプリと、Bluetoothに対応したタニタのアルコール検知器「FC-1500」を連動させて検査する。検査未済時やアルコール検出時には法定検査を実施できないようインターロック(自動制御)がかかる仕組みだ。iPadの顔認証で実施者の確認もでき、履歴は確実に残る。

法定検査では、まず乗務前に、第三者の立会のもと法定検査アプリを使用し、場所や時間を記録した上で検査を行う。そして乗務後、運航乗務員はコックピットからTeamsをつなぎ、リモートで立会者に検知器を確認してもらう。 このような仕組みによって、大掛かりなアルコール検査機器を導入しなくても確実にアルコールのない状態を確認できるようになった。

  • タブレット端末を活用したアルコール検査

「運航乗務員の検査システムにはとくに時間が掛かりました。国土交通省と相談を繰り返していましたが、iPadの世代が変わったり、当初使用していた検知器が使えなくなったりと、紆余曲折があったんです。ですが、『空の安全を守るためにしっかりと仕組みを作りたいので、協力してほしい』と運航乗務員へ説得を続け、ようやく完成までこぎ着けました」と、武内氏はその苦労をしみじみと語った。最終的にBluetooth対応の検知器を導入したことにより、検知器の個体識別が可能になり、不正のない確実な検査と、記録保存の仕組みを構築できたのだと言う。

セキュアな端末管理に欠かせないCLOMO MDM

運航本部のセキュリティ規程要件を実現するために、同社ではiPadの管理にMDM(モバイルデバイス管理)ツールを導入している。当初利用していた別のベンダーのMDMでは、端末ごとにApple IDを作り、一つずつ手作業でキッティングをしなければならないという課題を抱えていた。そこで端末入れ替えのタイミングでMDMツールの変更を検討し、最終的に導入したのが、当時トライアル運用が可能だったCLOMO MDMだ。

CLOMO MDMでは端末ごとにApple IDを設定する必要がなく、MDM側からキッティングを一括で実行できる。また、iOSアップデートの一定期間抑止・初期動作不良の対応といった技術的な支援も手厚い。

「紛失時にロックをかけたり、場所の特定ができたりといったセキュリティ面の利点はもちろんですが、“新しく配信した規程やアプリケーションが正しく到達しているか”といった確認ができるのもメリットが大きいです。電源がしばらく入っていない端末があれば、正しく情報が共有できなくなってしまいますので、安全性を確保し、かつ円滑に業務を進めるためには、すべての端末ステータスを確認する必要があります。こういった管理はMDMがなければ実現できなかったことです」(新貝氏)

前述のアルコール検査の仕組みも、CLOMO導入により実現できたのだという。「CLOMO導入の目的は、マニュアルの電子化が主でしたが、アルコール検査アプリの配信にも使えるのではないかと思い至りました。MDMを使わずにアプリで検査体制を整えるというのは、アルコール対策室の限られた人数で対応するのは難しい。たとえば、常に飛び回っている運航乗務員と直接会って端末にアプリをインストールするといったことは現実的ではありません。ですが、CLOMOで端末管理を行う仕組みを作ったことで、『このタイミングでネットワークにつないだ状態にしておいて』と頼んでおけば、あとはMDM側から端末設定ができるようになりました」

安全な空の旅を実現するためには多くの人の関わりが必要だ。それだけに航空業界は効率的に人を配置する工夫を進めている。

システムへの依存度が高まるにつれ、たとえばTeamsが使えないといった緊急時の代替手段の整備も求められることになるかもしれない。だが「このような変更を行う場面においても、CLOMO MDMがあればすぐに実現できる。これは強み」と武内氏は評価する。

規律遵守の意識変化も実感

iPadを活用した電子化により、従来は飛行機に必ず数冊乗せていた各種マニュアルもいまは不要になった。また、機体のスペックといった情報を差し替える作業も自動化されている。

新貝氏は「各社が状況を航空局にフィードバックし、さらに改善が進むという好循環で、いま航空業界全体が変わっています」と語る。また武内氏は「システムの導入によって他の空港の状況を把握しやすくなり、異常を察知しやすくなりました。また乗務員にも常に見られているという意識が生まれ、規律遵守の意識がより強くなったと感じます」と変化について述べた。

電子化を果たしたスターフライヤーが提供する安心で安全な空の移動、そしてこれからのホスピタリティ向上に期待したい。

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