アマゾン ウェブ サービス(AWS)と、そのパートナー企業が数々の事例を公開する一連のセミナー・イベント「AWS Partner Network、マイナビ セミナーシリーズ AWSの進化がもたらす新たな可能性 ~クラウドがビジネスの未来にあたえる4つのメリットとは~」。2017年11月10日 東京新宿にて、その第2回となる「BigData編 顧客満足度を向上させるためのビッグデータ活用術」が開催された。本稿では、当日行われた4つのセッションについて、それぞれの概要を紹介する。

「未来を変えるために過去を知る」パルコの施策

パルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林 直孝氏

パルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林 直孝氏

まず初めに登壇したのはパルコ 執行役 グループICT戦略室担当 林 直孝氏である。パルコでは、「24時間PARCO」をコンセプトに店舗に出店しているテナントとAWS とを連携した様々な取り組みを実施している。

例えばWebサイトでは、各店舗に出店しているテナントの「ショップブログ」がメインコンテンツとなっており、テナントのスタッフ自ら「お客様」に対して情報を発信できるようになっている。また、急増するスマートフォンからのアクセスに対応するため、2014年10月にはスマートフォンアプリ「POCKET PARCO」のサービスを開始。2015年3月からは全国展開もスタートしている。

「テクノロジーの進化がもたらすもの、それは拡張です。かつて接客と言えば、お店に来た方に向けて行うものでした。ですが今では、Webやアプリを使って、来店前から接客が始まっています。つまり“接客の拡張”が起こっているのです」と林氏は語る。もし、Webやアプリなどで「来店前接客」が行われているのなら、そこに集められた情報を可視化して分析を行えば、より効果の高い「来店前接客」を提供できるはず。

例えば、「POCKET PARCO」では、気に入った記事や商品をブックマークする「CLIP(クリップ)」という機能がある。これに関する情報を分析すると「記事が10クリップされると50日以内に当該ショップで1回の買上が発生し、50クリップを超えるとCV数が大幅に増加する」という分析結果が得られている。すると「記事をCLIPすればポイントプレゼント」といったCLIPを促すような施策を考え付くことも可能だろう。なおPARCOでは、新たな取り組みとして「POCKET PARCO」にAIを導入し、アプリのブログ記事フィードのレコメンデーション精度を向上させている。ちなみに、AI導入前と後の比較では、CLIP数が17%、売上が18%向上したという。

セッションでは、そのほかにもGPSを用いた来店促進施策、IoTやロボットの活用例など、パルコが実践する多種多様な「接客の拡張」事例が紹介された。

「過去は変えられませんが、未来は変えることができます。より良い未来を作り出すために、データを読み解いて過去を知る。それが、新たな接客の形を導くことになるでしょう」(林氏)

AWSビッグデータソリューション活用のコツ

クラスメソッド AWS事業部 ソリューションアーキテクト 八幡豊氏

クラスメソッド AWS事業部 ソリューションアーキテクト 八幡豊氏

2番目のセッションでは、AWSのプレミアコンサルティングパートナーであるクラスメソッド AWS事業部 ソリューションアーキテクト 八幡豊氏による「AWSの進化の歴史」と「AWSを用いたビッグデータ活用のソリューション」について解説が行われた。

AWSは2006年の「Amazon S3」リリース以来着実な進化を遂げている。特に2013年6月より東京リージョンにて利用可能となった「Amazon Redshift」は、ビッグデータ活用に適した大容量データを高速に処理できるデータウェアハウスとして、大きな注目を集め続けている。

ただ八幡氏によると、近年はデータの多様化と大容量化が進み、Redshiftの利用が「データ容量とノード数の増加」によってコスト増につながるケースも増えてきたそうだ。「そのため、今ではAmazon S3上のデータに対して直接クエリを実行できるAmazon AthenaやAmazon Redshift Spectrumを用いた構成を、一番に検討していただいています」(八幡氏)

このように、データの量や種類、そして分析方法などに応じて最適な構成を提案し、導入から運用までをサポートするサービスとして、クラスメソッドではAWS総合支援サービス「クラスメソッドメンバーズ」を提供している。また、オムニチャネルを前提としたマーケティングシステム構築のためのサービスとして、モバイルマーケティング支援用アプリ開発サービス「カスタマーストーリーモバイル」とBIツール「カスタマーストーリーアナリティクス」などがある。

「私たちが提供するサービスは、短期間低コストでのスモールスタートが可能です。ビッグデータ活用のコツは早く始めることであり、早く始めれば、それだけ知見もたまっていきます。AWSには様々なサービスがありますが、それらはサービス開始後でも追加できますので、最初はあまり作り込まず、スモールスタートで始めて改善を続ける。それが一番のコツです」(八幡氏)

TCO効率の良いビッグデータ活用ツールとは

マイクロストラテジー・ジャパン シニアセールスエンジニア 瀬田浩伸氏

マイクロストラテジー・ジャパン シニアセールスエンジニア 瀬田浩伸氏

3番目のセッションに登場したのはマイクロストラテジー・ジャパン シニアセールスエンジニア 瀬田浩伸氏である。同社が提供するBIプラットフォーム「MicroStrategy」は全世界で4,000社を超えるユーザーを持ち、データディスカバリーやエンタープライズアナリティクスにおいて高い評価を得ている。ちなみに、セッション1に登場したPARCOもMicroStrategyのユーザーである。

セッションでは、AWSを上で稼働するMicroStrategyの導入事例をもとに、最適なTCO (総所有コスト)を導くツールの選定基準についての解説が行われた。

例えば、とあるネットサービス企業において、データを分析するBIツールとは別であらたに、売上実績や顧客データをもとにキャンペーン登録から販促システム連携までを自動化する「キャンペーン・マネジメントツール」の導入を検討していた。だが、BIツールとして導入されていたMicroStrategyにも、「キャンペーン・マネジメントツール」で要求される機能が一通り揃っていたことが判明。結果、1つのライセンス料でまかなえることとなった。

また某アパレルメーカーでは、MicroStrategyを用いて、ユーザー向けのモバイルアプリを開発している。

これらの事例のように、MicroStrategyは単なるBIツールとしてではなく、ビッグデータを活用する様々なプラットフォームとしての役割をも担うことができる。このように、MicroStrategyを多角的に利用すれば、高額な専門ツールのライセンスを購入することもなく、最適なTCOを導くことにもつながるだろう。

「ビッグデータは一箇所に貯める」データレイクに最適な「Amazon S3」

アマゾン ウェブ サービス ジャパン プロダクトマーケティング エバンジェリスト亀田 治伸氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン プロダクトマーケティング エバンジェリスト亀田 治伸氏

最後のセッションに登壇したのは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン プロダクトマーケティング エバンジェリスト 亀田 治伸氏である。セッションの冒頭では、AWSを利用した、Amazonの新しい取り組みが紹介された。画像認識で商品を把握するレジのないコンビニ「Amazon Go」、Amazonの倉庫で商品を運ぶ自走式のロボット「Amazon Robotics」、そしてセミナーの2日前に発表されたスマートスピーカー「Amazon Echo」などは、まさにビッグデータアーキテクチャの進化によってもたらされたものと言ってもいいだろう。ただし、これらの運用には、音声、画像、言語、位置など、多種多様で膨大な量のデータが用いられるため、いままでのようなELT処理ではとてもまかないきれない。

「そこで今、注目されているアーキテクチャーがデータレイクなのです」と亀田氏は語る。

データレイクとは、Web、モバイル、センサー、カメラなどから集まった雑多なデータを、必要な時にはファイル形式を横断して取り出すことができる、溜まり場のようなもの。そして、このデータレイクとして最適なストレージこそ、Amazon S3である。

何が必要なデータなのかは、実際に分析してみないとわからない。単独では無意味に思えたデータでも、他のデータと関連付ければ思わぬ知見が見つかることもある。だが、いざデータを活用したいと思っても、データ自体がなければ、何もできない。

「ですから、まずは貯める。ただし、バラバラに貯めてしまっては関係性が見えてこないので、一箇所に貯める。そうすれば、新しい知見が得られる可能性も高まります。その貯める場所として、安価で高い堅牢性を誇るS3は最適です。一旦、S3にデータを貯めて、あとは様々なAWSのサービスを使い、必要な時に必要なデータの利活用をする。これがオススメです」(亀田氏)

もはやビッグデータ活用において欠かせない存在となったAWS。セッションに登壇した各社のホームページでは、今回紹介したもの以外にも、様々な事例やデモなどが掲載されている。興味のある方は、それらもご覧になって新たな知見を得ていただきたい。

[PR]提供:クラスメソッド、マイクロストラテジー・ジャパン、アマゾン ウェブ サービス ジャパン