本連載では、これまで、ヤマハのルータ「RTX830」やシンプルL2スイッチ「SWX2100-5PoE」を使って、VPNをはじめとしたネットワークを構築してきました。また、ヤマハのネットワーク機器に搭載されている管理機能の「LANマップ」を使うと、WebGUIからネットワーク機器の設定、ネットワーク異常の確認ができることも紹介しました。

「LANマップ」などの管理ツールは、ネットワークを見える化することで運用管理の面倒な作業を減らし、ネットワーク管理者の負担を低減させるだけでなく、心理的な重荷も削減させることも理解いただけたのではないでしょうか。

ヤマハは、こうしたネットワーク管理の負荷低減を目指す新たな仕組みとして、ネットワーク統合管理サービス「Yamaha Network Organizer(YNO)」を提供しています。このサービスは、ネットワーク機器をクラウドベースで監視・管理することを可能にするものです。

今回は、この「YNO」の概要を紹介しながら、ネットワーク見える化の新たな形を見ていくことにしましょう。

ネットワーク機器の監視・管理をクラウド経由で可能に

従来、ネットワーク機器を監視・管理する方法は、ルータやスイッチが接続しているLAN内の端末のブラウザから、ネットワーク機器に搭載されているWebGUIにアクセスするというものでした。さらに数年前までは、ネットワーク管理といえばコマンドラインを使った方法が一般的でしたので、グラフィカルにデータが表示され、そこから設定変更ができるだけでも、運用管理のハードルを大きく下がったと思います。「YNO」はそれをさらに進化させます。

YNOは、ネットワーク機器の情報をすべてクラウド上で管理します。そのため、「ルータの初期設定のために現地に出向く」「初期設定をしたルータを送付する」といった作業が不要になります。機器設定などの作業は、遠隔からYNOのWeb管理画面上で簡単に行えます。

ゼロコンフィグで手間削減と安全性向上を実現

それでは、YNOによって遠隔からどのような操作が行えるのか、以下に紹介しましょう。

ネットワーク機器の情報管理

これまで、ネットワーク機器を監視・管理する際は、ネットワーク機器が接続されているLAN内の端末から、ブラウザを使ってWebGUIにログインするか、SSHでアクセスしてコマンドを叩く必要がありました。

しかし、YNOを使うとネットワーク機器の情報が自動的にクラウドに集約され、一元管理することが可能となります。特に、拠点が遠隔にまたがる組織では、ネットワーク機器の情報管理が煩雑になりがちでしたが、YNOを導入することによって、情報管理をシンプルにすることができます。

ネットワーク異常の一元把握

YNOのダッシュボード画面には、「ステータス一覧」「アラーム一覧」が表示されます。

ステータス一覧では、機器の接続状態や、トンネル、WAN回線の接続状態を把握できます。アラーム一覧では、発生した異常の詳細を一覧で把握できます。機器の異常などの発生をメールで通知する機能により、ネットワーク異常の発生にいち早く気づくことができ、ネットワーク障害の拡大を防止できます。

複数機器設定の自動化

従来、ネットワーク機器のファームウェアをバージョンアップするために、ネットワーク管理者が遠隔拠点に出向くことがありました。YNOでは、ファームウェアバージョンアップやコマンド実行を、Web管理画面上から実行できます。これらの作業は事前にスケジュールを設定可能なので、作業負荷の低減につながります。

LAN環境把握

YNOには、ルータに搭載されている「LANマップ」の1機能である「一覧マップ」が搭載されています。複数拠点の一覧マップを表示できるので、LANに存在する端末の稼働状況の把握が容易です。

GUI Forwarder

YNOで管理するルータ(RTX830やRTX1210などの対応機種)のWebGUIを、YNOの画面内で表示できます。これによって、ルータのWebGUIで行っていた設定・管理をすべてクラウド上で実施できるようになります。さらに、「LANマップ」も表示可能なため、ルータ配下のスイッチや無線アクセスポイントの設定・運用まで、YNOを通して実施できます。

ゼロコンフィグ

ルータの初期設定情報(ファイル)をYNOに保存しておくと、簡単な操作で、現場のルータへ設定情報を配信し、配備することができます。これにより、ルータの初期設定のために現場に赴くことや、事前にキッティング作業を行うことが不要になります。さらに、設定ファイルを持ち歩く必要がなくなるので、安全性が高まります。

今回は、ヤマハが提供するクラウドベースのネットワーク統合管理サービス「Yamaha Network Organizer(YNO)」の概要を説明しました。YNOを利用するには、基本ラインセンス、および、管理するネットワーク機器の台数分のライセンスが必要ですが、それに見合う価値があるサービスだと思います。

次回は、このYNOを使ってゼロコンフィグにトライしてみたいと思います。VPNを構築することができるでしょうか。