鉄道でも飛行機でもバスでも、毎日同じ時間に運行する「定期便」と、特定の日あるいは時期に限って需要増に対応するために運行する「臨時便」がある。えてして、日ごろよく使う「定期便」に関心がいってしまうのだが、それはもったいないというのが今回のお題。

わかりやすい設定の便ほど混む

飛行機やバスはそれほどでもないが、鉄道には「看板列車はキリのいい時刻に出る」という傾向がある。といっても、途中駅は所要時間の関係があるからそうはいかず、基本的には始発駅の場合。

例えば、「もっとも遠方まで行く、停車駅の少ない特急は毎時00分に出る」といった具合だ。大阪駅の東海道線乗り場に行くと、アーバンネットワークの看板列車・新快速が日中、ピタリと「00分」「15分」「30分」「45分」に出ているのも同じだ。

日中ピタリピタリと15分ごとにやってくる新快速はアーバンネットワークのエースだが、速いうえにわかりやすいタイムスケジュールだけに混む

こういう設定のダイヤは覚えやすくて利用しやすいのだが、ちょっとした問題がある。どうしても、「覚えやすい時間の列車が混む」のである。たとえ目的地が途中の駅で、他の列車でも大差ない所要時間で着くのだとしても、ついつい覚えやすい「看板列車」に利用が集中する傾向が出てくる。

そういう見地から、東海道新幹線・東京駅の時刻表を眺めてみると、面白いことに気付く。「エース」のはずの博多行き「のぞみ」は毎時00分ではなく、毎時10分・30分・50分(これは一部の時間帯のみ)で、毎時00分は新大阪行き「のぞみ」である。以前は定石通りに博多行きの最速達列車が00分発だったので、博多行きに利用が集中するのを避ける狙いがあって現行の形にしたのは確か。

これと似た現象で、定期列車はえてして臨時列車より混雑しやすい。同じ路線を頻繁に利用する人ほど、「○○時△△分に××行きが出る」というのが頭に入っているから、そこから外れる便は視界の外になりやすい。また、時刻表をいちいち調べるにしても、自分が利用しようとする日に運行しているかどうかを確認しなければならない臨時便より、毎日運行している定期便の方が気分的にラクというのはある。

それに紙の時刻表だと、臨時便が定期便とは別のページにまとめられている場合がある。特に、スペースが限られる小型時刻表では、定期列車のページに臨時列車を押し込むと台割が大きく変わる可能性があるので、臨時列車あるいはその他のイレギュラーな列車を別のページにまとめる傾向がある。特定のイベントに合わせてピンポイントで運転する列車も似たところがある。するとますます、認知度が下がってしまう。

その点、小型時刻表よりスペースに余裕がある大判の時刻表、あるいはWebサイトで公開されている時刻表のほうが臨時便の見落としが少ない。そういう見地からすると、自宅やオフィスに備え付けておく時刻表は大判のほうが良いし、さらにWebサイトで最新情報を調べて補強すればなおよい、という話になる。

となると、臨時便のほうがチケットを取りやすいかも?

そんな傾向を逆手にとって、混雑する時期に新幹線の指定席をとる際、筆者は意図的に臨時列車を狙うことがある。最近はネット予約で事前申し込みをかけるのが通例なので、そこまで神経質にならないことが多いが。

いずれにせよ、前述した認知度の問題があるので、臨時便のほうがチケットを取りやすい傾向はあるのではなかろうか。複数の便を乗り継ぐ場面では、臨時便だと接続が悪くなる可能性があるので使いづらいことがあるかもしれない。しかし、臨時便で用が足りるのであれば、そちらに目を向けるメリットは確実にあるはずだ。

また、臨時便だとルートや停車駅などが通常とは異なったり、使用する車両や機材が通常とは異なったり、ということもあり得る。例えば、小田急から東京メトロに直通するロマンスカー「ベイリゾート」は限られた日にだけ運転する、有楽町線・新木場行きだ。

普段、地下鉄直通のロマンスカーは千代田線に直通しているのだが、「ベイリゾート」は東京ディズニーリゾートに向かう観光需要を狙って新木場に行く。千代田線と有楽町線は、普段の営業運転には使用しない回送用の連絡線(有楽町線・副都心線・南北線の車両を千代田線の車両基地で検査する際に使う)でつながっているので、こういう芸当ができる。

本来の設定目的が観光だったとしても、それがたまたま自分の仕事の移動と合致するのであれば、観光用だろうがなんだろうが、お構いなしに利用して悪いことはないだろう。車内で一人だけ雰囲気が違っていて浮くかもしれないが(苦笑)。

有楽町線の新木場に到着した「ベイリゾート」。運転する日は限られるが、うまく自分のスケジュールと合えば、普段は直通しないルートを直通するので便利だ