• エッチング

前回は、半導体製造の主な8段階のうち第3段階であるフォトリソ工程について紹介しました。

ウェハ表面にフォトレジストで回路パターンを描いたら、不要な部分を除去して回路パターンのみを表面に残す必要があります。この第4段階となる「エッチング工程」が今回のトピックです。この工程は、フォトリソ工程と並んで半導体製造の重要なプロセスです。

  • エッチング

不要な領域を除去して回路パターンのみを残すエッチング工程

  • エッチング

エッチング工程は、ウェハ上に回路を描くリソ工程が完了した後に、不要な酸化膜を除去して半導体のパターンを残す工程です。液体、ガス、またはプラズマを用いて回路パターンと区別した不要な層を選択的に除去します。2020年3月に発表されたラムリサーチの「Sense.iプラットフォーム」は、チップ量産プロセスの生産性を向上し、革新的なセンサーテクノロジーを提供する、画期的な半導体装置です。

2つのエッチング方法

  • エッチング

エッチング工程は、エッチングに使用される物質によって大きく2種類に分けられます。液体を使用する「ウェットエッチング」と、化学ガスまたはプラズマを使用する「ドライエッチング」です。

ウェットエッチングは、特定の化学溶液を使用して化学反応によって酸化膜を除去します。それに対して、ドライエッチングでは、化学ガスとプラズマを使用して酸化膜を取り除きます。

この工程では、気体を超高温まで加熱することによって原子と分子を電子と正電荷を持つイオンに分離し、固体でも液体でも気体でもない物質状態であるプラズマを発生させます。宇宙の99.9%はプラズマでできており、プラズマは半導体製造に不可欠です。

化学溶液を使用するウェットエッチング

  • エッチング

化学溶液を使用して酸化膜を除去するウェットエッチングは、低コストでエッチング速度が速く、生産性に優れているという利点があります。その一方で、ウェットエッチングは等方性で、全方向に同一の速度でエッチングします。この等方性の特徴として、マスク(つまり感光膜)とエッチングされた酸化膜とは形状に差異ができてしまいます。そのため、精度の低さから微細パターンの加工は困難です。

ドライエッチング(1) 化学エッチング

  • エッチング

ドライエッチングは、エッチングの種類によって3つの方法に分けられます。1つ目は、エッチングガス(主にフッ化水素)を使用する化学エッチングです。しかし、化学エッチングにはウェットエッチングと同じように等方性という欠点があるため、微細なエッチングは困難です。

ドライエッチング(2) 物理スパッタリング

  • エッチング

2つ目の方法は物理スパッタリングです。プラズマからのイオンを利用する物理スパッタリングは、イオンの衝突によって酸化膜の不要な部分をスパッタする方法です。この方法は異方性であるため、横方向と縦方向のエッチング速度が異なり、化学エッチングよりも微細な加工が可能です。その一方で、イオンの衝突から生じる物理的反応のみを利用するため、エッチング速度が遅くなります。

ドライエッチング(3) 反応性イオンエッチング(RIE)

  • エッチング

最後に、3つ目の方法として反応性イオンエッチング(RIE/Reactive Ion Etching)が挙げられます。前述の2つの方法を用いるRIEは、プラズマを利用してイオン化された物理エッチングを進めながら、プラズマの励起で生成されるラジカルを利用する化学エッチングで酸化膜を除去します。3つの方法の中でRIEが最も高速で、イオンの異方性を生かすことによって正確で微細なエッチングが可能です。

ドライエッチングは、恐らくウェットエッチングよりも複雑であるという欠点がありますが、微細な半導体回路の歩留まりを向上させるために近年では広く使用されています。ウェハ全体でエッチングの均一性を維持し、エッチング速度を向上させることが極めて重要です。今日の最先端ドライエッチング装置は、最新のロジックおよびメモリチップに対応するために必要な高機能を提供します。

下記にエッチング工程に使用されているラムリサーチの装置と主な半導体用語集を掲載します。次回は、「成膜工程」によって半導体に電気的性質を付与する薄膜工程について説明します。

エッチング工程関連用語

  • プラズマ:固体でも液体でも気体でもない物質状態です。気体を超高温状態まで加熱した時にイオンが電子と正電荷に分離された、物質の第4の状態です。
  • 等方性:全方向に対してエッチング速度が同一の状態を指します。
  • 異方性:方向によってエッチング速度が異なる状態を指します。このエッチング工程では、望まれる方向(主にウェハ表面に対して垂直方向)においてのみエッチング速度が増します。

各工程別のエッチング装置

MEMSなどの深堀用途

  • エッチング

エッチング技術は、あらゆる集積回路(IC)の製造に必要で、チップの複雑な構造の加工に用いられます。MEMSの製造工程では、大型キャビティや高アスペクト比(HAR)のディープトレンチなどの物理的構造を形成する多様な構造を削り出すために使用されます。ラムリサーチのDSiEシリーズは、クリティカル・非クリティカルを問わず、MEMS、パワーデバイス、受動素子、センサー、トランスデューサなどさまざまなシリコンの深掘り用途に対するプロセス制御を可能としています。

絶縁膜エッチング

  • エッチング

絶縁膜エッチングは、絶縁体にパターンを加工して、半導体デバイスの導電部の間にバリア層を形成します。最先端のデバイスでは、こういった構造を非常に深くかつ薄く加工でき、高感度な複合材料を扱うことが可能になります。目標とするエッチングプロファイルから原子レベルで僅かにずれるだけでも、デバイスの電気特性を損ないかねません。ラムリサーチのFlexシリーズは、クリティカルな誘導体エッチング用途に向けた機能を実現しています。

電気的活性物質の形成

  • エッチング

コンダクターエッチングは、半導体デバイスの部品に使用される電気的「活性」物質を形成します。このような微小な構造においては、わずかなばらつきでさえもデバイス性能を左右する電気的不具合を引き起こす可能性があります。実際、このあまりにも微細なエッチング工程は、物理学および化学の基本原則の限界を押し上げるほどのものです。ラムリサーチのKiyoシリーズは、これらの導電体を精密かつ一貫して形成することを可能しています。

高効率化

  • エッチング

エッチング技術は、半導体デバイスのトランジスタ、コンタクト、および金属配線構造を形成するパターンを削り出すために、あらゆる半導体デバイス製造工程で使用されています。MEMSやパワーチップを含む一部の新興市場では、複数の種類のデバイスを使用しており、これらのデバイスの中には、最新の技術ノードに比べるとパターンが大きくてさほど複雑でなく、また新素材が使用されているものもあります。そのため、製造に関して従来とは異なる要求事項があり、新しい生産管理方法が必要になります。ラムリサーチのReliantは、生産性が実証されたソリューションであり、これらの用途に必要な信頼性の高い性能を実現しています。

クリティカル部分のエッチング

  • エッチング

プラズマエッチングは、半導体デバイスに望まれる形状とパターンを作り出すために物質を選択的に除去します。デバイスが拡張し続ける中、要求される形状特性を実現するには、精密で再現可能なエッチングが必要です。感度の高い新素材と複雑なアーキテクチャはさらに難題をもたらします。KiyoおよびFlexプロセスモジュールから進化させたSense.iシリーズは、こういった形状を精密にかつ一貫して形成するために必要な機能を提供します。Sense.iは、クリティカルおよびセミクリティカルなエッチング用途に差別化された技術と用途を重視した機能を提供します。また、この新しいシステムアーキテクチャは、これから10年以上にわたり、ロジックおよびメモリデバイスの進化ロードマップに対応するために必要な生産性と再現性も実現します。

Lam revolutionizes chipmaking with Sense.i, a groundbreaking etch system

ディープシリコンエッチング

  • エッチング

ウェハ深部までシリコンやその他の物質を除去するために使用されるプラズマエッチング工程は、ディープシリコンエッチングと総称されています。このようなディープトレンチ、シリコン貫通ビア(TSV)、およびその他の高アスペクト比(HAR)形状は、複数の素材を順次エッチングすることで形成され、新素材が登場するたびにエッチング工程を変更します。こういった構造は絶縁体か導体であることが多いため、目標とする仕様から少しでもずれると、デバイス性能を損なう可能性があります。ラムリサーチのSyndionシリーズは、シリコン深掘り用に最適化されており、工程を素早く切り替え、精密なエッチング加工を達成するために必要なエッチングの深さとウェハの面内均一性を制御することを可能としています。

メタルエッチング

  • エッチング

メタルエッチング工程は、導線および電気配線の形成など、集積回路(IC)を形成する個々の素子を接続する上で重要な役割を果たします。また、この工程は、従来のマスクには細かすぎる形状の形成に使用されるメタルハードマスク(MHM)への穿孔にも使用されており、これによって形状のさらなる微細化を可能にします。ラムリサーチのVersys Metalシリーズが、これらのニーズに対応しています。

(次回は2021年1月に掲載します)