PowerPointで作成したスライドをiPadやAndroidといったタブレット端末に表示させるには、少しだけ工夫が必要となる。最終回となる今回は、タブレットを使ってプレゼンを行うときのポイントについて紹介しておこう。

タブレットにスライドを表示する方法

本連載の読者の中には、『モバイル端末を使ってプレゼンできたら…』と考えている方も少なからずいるであろう。そこで、今週は、PowerPointで作成したスライドをモバイル端末で表示する方法について考察してみよう。

最も確実なのは、Windowsを搭載したノートPCを利用する方法である。この場合はパソコンにPowerPointをインストールできるので、何の問題もなくスライドショーを実行できる。ただし、タブレット端末に比べて本体のサイズや重量が大きくなってしまうことが弱点となる。

Windows RTを搭載したタブレット端末も「Office 2013 RT」がインストールされているため、特に問題なくスライドショーを実行可能だ。「Office 2013 RT」では、マクロやアドインなどの機能を使用できないが、PowerPointのスライドショーを実行する程度であれば問題なく活用できるだろう。

「Office 2013 RT」がプレインストールされたSurface RT

問題となるのは、iPadやAndroidといったタブレット端末を使ってプレゼンする場合である。これらの端末にはPowerPointファイルを閲覧する機能が標準装備されていない。よって何らかの工夫が必要となる。

一つの解決法として考えられるのは、PowerPointファイル(.pptx)を閲覧・編集できるアプリを追加インストールすること。ただし、どこまで使えるかはアプリによってマチマチであり、通常のスライドショーは実行できてもアニメーションには対応しないアプリも多いようである。また、WindowsパソコンとiOS、Android端末ではフォント環境が異なるため、文字のレイアウトが乱れてしまう可能性がある。

本家Microsoftからも、iOS版とAndroid版の「Office Mobile for Office 365」が発表されているが、このアプリを使用するにはOffice 365への加入が必要となるため、誰でも手軽に導入できるとは言い難い。また、日本国内向けには正式リリースされていないため、もう少し様子を見る必要がある。

iOS版のOfficeの紹介ページ(英語)

現時点において誰でも利用できる確実な解決法は、スライドをPDFや画像に変換して利用する方法となる。この場合は、タブレット端末に用意されているPDF閲覧アプリや画像ビューアーを使ってスライドショーを実行することが可能となる。どちらの場合もフルスクリーンでスライドを表示させることで、PowerPointのスライドショーと同様の機能を実現できるようになる。

スライドをPDFファイルに変換する方法は、前回の連載で紹介したとおり。スライドを画像に変換して保存する場合は、「ファイル」タブにある「エクスポート」を選択し、「ファイルの種類の変更」から画像ファイルの形式(PNGまたはJPEG)を選択すればよい。その後、「名前を付けて保存」ボタンをクリックすると、各スライドを1枚ずつの画像ファイルとして保存できる。

スライドを画像ファイルに保存

保存されたスライド

ただし、当然ではあるが、スライドに指定した「アニメーション」や「画像切り替え」は再現されない。PDFファイルの場合、スライドに指定したリンクは有効に機能するが、稀にリンクが正しくPDF変換されない場合もあることに注意しなければならない。いずれにしても、実際に動作を試しておく必要があるだろう。

タブレットを利用する意味も考えよう

最後に、「タブレットでプレゼンを行う意味」について考えてみよう。テレビのCMなどでは、タブレットを使ってスマートに営業を行っているシーンを目にすることがある。しかし、このような使い方は実際どうであろうか?

タブレットの画面サイズは大きくても10インチ程度しかなく、大人2人が画面を見るには決して十分なサイズとは言えない。企業を訪問して営業するときに、家族や友人のように2人が横に並んで座る、というのは少々考えにくい話である。机を挟んで対面した状況で、相手が見やすいようにスライドを示すには、片手でタブレットを持ち、もう一方の手で操作を進めていく必要がある。つまり、両手が塞がった状態でプレゼンを行うことになる。

このように考えると、「相手にタブレットを渡し、相手に操作してもらう」という形が最も自然なスタイルになると思われる。当然、この場合は操作方法をシンプルにしなければならない。「このタイミングでアニメーションを実行して……」なんて複雑な操作を要求するのではなく、「次のスライドに切り替えてください」といった程度の指示が精一杯であろう。それ以前の問題として、タブレットではアニメーションを再現できない恐れすらある。

そもそも、「紙の資料では何故いけないのか?」という疑問も残る。作成したスライドを印刷して手渡せば、バッテリーの残量を気にする必要はなくなるし、プレゼン後に相手の手元に資料を残しておくことも可能となる。「360度グルグル回して閲覧できます」といった使い方であればタブレットを使用する意味も考えられなくはないが、その「3Dデータは誰が作成するのか?」という問題が生じてしまう。

結局のところ、現時点においては、プレゼンでタブレットを有効活用するのは意外と難しいと思われる。「関連する情報をインターネットですぐに調べる」、「実際に使っている様子を動画で示す」などの用途にはタブレットが最適であるが、「プレゼンのスライドを表示する」という用途においては、まだまだ利点は少ないと思われる。「リンク機能を使って好きな順番でスライドを提示できる」ことが唯一の利点になるかもしれない。

タブレットが本格的に普及してからまだ間もないので、今後、便利な活用方法が提案されていくかもしれないが、しばらくは様子を見守る必要があるだろう。どのような状況にせよ、PowerPointの便利な使い方を学習しておくことに何もデメリットはないはず。本連載が、PowerPointの用途を広げる一助になれば幸いである。