広島大学は2022年2月4日、もみ殻からLEDを開発した、そんなプレスリリースを発表した。

研究成果は2月7日発刊のアメリカ化学会のサステナブル化学・環境科学の学術誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering (IF=8.198)」のオンライン版に掲載された※1

いまや日常生活でなくてはならない存在となったLEDだが、本当にもみ殻からLEDを作ることができるのだろうか、そんな疑問を抱いてしまう。では、この広島大学が開発したもみ殻由来のLEDとはどのようなものなのか、今回はそんな話題について紹介したいと思う。

もみ殻から開発されたLEDとは?

もみ殻からLEDの開発に成功したと発表したのは、広島大学 大学院理学研究科の寺田詩歩氏、同先進理工系科学研究科の植田朋乃可氏、自然科学研究支援開発センターの齋藤健一教授らの研究グループ。このもみ殻で開発したLEDは、オレンジ色に発光し、しかも発光効率が21%と高効率のものだという。

では、もみ殻からなぜLEDを作ることができるのだろうか。もみ殻とは、ご存知の通り、お米の殻の部分。

実は、このもみ殻の20%は、ガラス(SiO2)なのだ。ご存知だっただろうか。

では、もみ殻からどのようにしてガラスを抽出するのだろうか。まず、もみ殻を酸処理して、無機物の不純物を除去する。酸処理したもみ殻をガスバーナーや電気炉などで焼くことで、ガラスを得ることができるのだ。このガラスをマグネシウム(Mg)の粉末と混ぜて加熱して酸化還元反応させ、多孔質性のシリコン粉末を得ることができるのだ。

下の図を見ていただくと視覚的に理解しやすいだろう。

  • お米からもみ殻、ガラスなどが抽出される

    お米からもみ殻、ガラスなどが抽出される(出典:広島大学)

(a)は稲穂、(b)はもみ殻と構成成分を表したイメージ図、(c)はもみ殻、(d)はもみ殻から得たガラス、(e)はシリカを還元して得たシリコン粉末、(f)は電子顕微鏡で見たもみ殻ガラス、(g)はシリコン量子ドットを表している。お米から想像もできないものを得ることができるのだ。

では、もみ殻から抽出したシリコンをどのようにLEDにするのだろうか。まず、量子ドットを作る。量子ドットとは、大きさが数nmで発光する半導体の微粒子。

多孔質シリコンを薬品を使って化学エッチングで酸処理し、ナノサイズまでサイズを小さくすることで作るのだ。そして、生成物に紫外線を照てるとオレンジ色の光が発光される。この生成物の表面の水素をデシル基という水素と炭素からなる化合物に置換して、分散性、耐久性、発光効率を向上させた最終生成物がシリコン量子ドットである。その発光効率は21%であったという。

  • もみ殻から得られたオレンジ色を放つシリコン量子ドット

    もみ殻から得られたオレンジ色を放つシリコン量子ドット(出典:広島大学)

次に量子ドット化したものをLEDにする。LEDにするためには、透明電極付きガラスに、電荷が流れる多層膜をそれぞれ成膜する。出来上がったLEDの両面の電極から電気を流すと発光するのだ。今回開発したLEDの大きさは2cm四方で、発光面の面積は4mm2のもの。

  • もみ殻から開発されたシリコン量子ドットLED

    もみ殻から開発されたシリコン量子ドットLED(出典:広島大学)

いかがだっただろうか。もみ殻から、シリコンを作ることができるのも初耳であったし、そこからオレンジ色に発光する量子ドットLEDも作ることができるとは、さらに驚いた。

広島大学が開発したもみ殻LEDの先には、とてつもないエコで最先端な未来を想像してしまうのは私だけだろうか。今後の広島大学の研究成果が楽しみである。

文中注釈

※1https://doi.org/10.1021/acssuschemeng.1c04985