とても小さい人工飛行物、マイクロフライヤーが開発された。開発したのはノースウェスタン大学のJohn Rogers氏。蟻の頭よりも小さいという画像が公開されている。

2021年9月23日号の科学雑誌「Nature」の表紙にもなっているという。では、このマイクロフライヤーとはどのようなものなのか、今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

史上最小のマイクロフライヤーとは?

2021年9月23日、ノースウェスタン大学のプレスサイト「NORTHWESTERN NOW」に、「Winged microchip is smallest-ever human-made flying structure」という研究報告がなされた。

これは、史上最小の人工飛行物を開発したというニュースだ。この人工飛行物は、フライングマイクロチップなどという呼称があるようだが、ここでは、その呼称の1つであるマイクロフライヤーと呼ぶことにする。

このマイクロフライヤーを開発したのは、ノースウェスタン大学のJohn Rogers氏。材料工学やナノテクノロジーなどを専門としている。

  • ースウェスタン大学のJohn Rogers氏

    ノースウェスタン大学のJohn Rogers氏(出典:ノースウェスタン大学)

では、このマイクロフライヤーとはどのようなものなのだろうか。

まず、マイクロフライヤーの大きさについて。大きさはアリとの比較や、中指の第1関節上に乗せた様子などが公開されている。これを見る限り、アリの頭よりも小さい。Rogers氏は、砂粒ほどの大きさと表現している。重さについては、記載はないが、飛ぶことを鑑みると相当軽いだろう。

また、マイクロフライヤーという呼称を聞くと、動力源があり空を飛ぶのだろうとイメージするだろう。しかし、モーターやエンジンは取り付けられていない。竹とんぼやヘリコプターに近いイメージのプロペラが取り付けられており、それを利用することで風などに乗って飛行するものだ。

Rogers氏は、植物の種子を研究したという。これらの種子は、風によってうまく浮き、飛行し、分散する。この種の形状をヒントにマイクロフライヤーを最適化し、飛行が安定し、広範囲に分散し、低速で落下するなど、空気との相互作用時間が長くなる工夫を施したという。

  • ノースウェスタン大学が開発したマイクロフライヤー

    ノースウェスタン大学が開発したマイクロフライヤー(出典:ノースウェスタン大学Youtube)

では、このマイクロフライヤーは何に使うのだろうか。現在公表されている用途は、大気汚染、空気感染症、環境汚染を調査、監視などという。ちなみに、John Rogers氏は次のように述べている。

“Our goal was to add winged flight to small-scale electronic systems, with the idea that these capabilities would allow us to distribute highly functional, miniaturized electronic devices to sense the environment for contamination monitoring, population surveillance or disease tracking.”(私たちの目標は、小型の電子システムに飛行を加えることだった。この能力によって、汚染の監視、人口の監視、疾病の追跡のために環境を感知する高機能の小型電子デバイスを配布できるようになると考えた)

このマイクロフライヤーには、大気などからエネルギーを得ることができる装置、スマートフォン、タブレット、PCなどにデータをワイヤレスで転送できるアンテナ、そして各種センサを搭載することができるという。

例えば、水質を監視するためにpHセンサを搭載したり、各波長での太陽への露出を測定するための光検出器が搭載されたり、化学物質の流出後の環境の修復を監視のためのセンサや、さまざまな高度での大気汚染のレベルを調べるためのセンサを搭載して飛行機やビルからマイクロフライヤーを散布したりといった取り組みを、すでに実施しているという。

しかし、このマイクロフライヤーは飛行後、散らばってしまうため回収はしない、いや、できないだろう。そのため、分解性ポリマー、堆肥化可能な導体、水で自然に消失する溶解可能な集積回路チップを使用することで環境にも配慮しているという。

  • 環境にも優しいマイクロフライヤー

    環境にも優しいマイクロフライヤー。自然に小さくなっていっている様子(出典:ノースウェスタン大学Youtube)

いかがだっただろうか。今回は、ノースウェスタン大学のマイクロフライヤーを紹介した。

このマイクロフライヤーの技術にも驚くが、マイクロフライヤーの大気汚染、空気感染症、環境汚染など以外の別の利活用方法もたくさんありそうだ。また、多数のマイクロフライヤーで大気汚染、空気感染症、環境汚染などを調査することで、新たな発見があるのではないかと、そのような話題にも興味が湧いた。