夏目綜合研究所は、自社がもつ眼の瞳孔反応解析技術を応用して、医療、セキュリティ、労働・産業、生活環境、人材育成などの多くの分野で貢献している。では、この瞳孔反応解析技術とはどのような技術なのか、そして、具体的にどのような分野でどのように応用されているのか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。
夏目綜合研究所の瞳孔反応解析技術とは?
まず、夏目綜合研究所について紹介しよう。東京を拠点とする企業で、2013年に設立されたとある。しかし、夏目綜合研究所の生い立ちはもっと過去に遡るようだ。創業者は菊池光一氏。1998年に郵政省の教育コンテンツ事業を受注し、その事業の一環として瞳孔の特性に着目したという。また映像演出事業においても、自身の作品を見ている人の感情や関心などの反応を数値化することに興味があり、瞳孔反応解析技術の研究を開始。2006年に夏目綜合研究所を設立したとのことだ。
なお、現在の代表取締役社長は臼倉正氏。取引先のIT企業の役員に「瞳孔と表情を解析した嘘発見器の研究をしている面白い技術があるので見に行こう」と誘われ、デモンストレーションを見学した臼倉氏は、ある文献で「瞳孔は鍛えられないし、瞳孔は嘘をつけない」ことを知っていたことから、この技術の可能性を信じ、2015年に夏目綜合研究所の営業活動支援を開始。2016年に会社組織を改め、現在の新生、夏目綜合研究所として活動を開始したのだ。
では、この瞳孔反応解析について説明したい。瞳孔反応というものは、心臓や肺と同様で、生来的な本能レベルでコントロールされる。そして、人種を問わない、自身でコントロールできない、嘘をつけない、動物の最も原始的な生体反応であるということが特徴だ。
では夏目綜合研究所は、どのような瞳孔反応解析技術の研究を実施しているのだろうか。
例えば、「メイクアップ(化粧)の心理的効果の測定」というものがある。被験者が、いつものメイクをした自らの写真とプロのメイクアップアーティストがメイクを施した自分の写真を見て、瞳孔反応を数値化して比較した様子が以下の図だ。赤色系の四角が、写真を見つめる瞳孔が拡大していたことを示す部分、すなわち興味を持って見ていた部分。一方の青系の四角は、視線を向ける際の瞳孔が縮小していた、つまり興味がなくただ呆然と視線を向けていたことを示す部分だ。
この実験では、メイクアップを施した写真の方が注目の度合いを示す指標が8%も上昇し、写真の中で注目して見ていたエリアの面積が3.5倍に増加したことがわかったという。
ちなみにこの「メイクアップ(化粧)の心理的効果の測定」を説明している動画が紹介されているので、ぜひご覧いただきたい。
他に、ウェブサイトのユーザビリティ測定というものもある。これは、ウェブサイト閲覧中のユーザーの瞳孔反応を測定することで、ユーザーが注目したパート、興味を失っているパートを明確に把握することができるもの。ウェブサイト上に四角が表示され、ユーザーの視点を表している。そして、その四角の色が赤色系の場合は、興味を持って見ている(瞳孔が大きく開いている)ことを意味し、青色系の場合は興味がなく、ただ漫然と視線を向けている(瞳孔が小さくなっている)ことを示しているという。動画も紹介されているのでぜひご覧いただきたい。
いかがだったろうか。夏目綜合研究所の瞳孔反応解析技術は、これら以外にもセキュリティの分野において、テロ対策、自動運転補助、防犯活動支援、冤罪根絶などに貢献し、また医療の分野では、遠隔医療、嘘患者排除、精神疾患の客観的診断指標などに応用されている。「瞳孔は人種・性別・年齢によらず、嘘をつけない」という本質的な特徴を利用した、とても興味深い技術とビジネスだ。