オーストラリアの眼に関する研究機関「Centre of Eye Research Australia(CERA)」は2022年8月26日、網膜画像を解析して算出した「網膜年齢」で、心血管疾患やパーキンソン病などの加齢性疾患のリスクを予測することができると発表した。

では、網膜を診断することで、加齢性疾患のリスクを予想できるとはどのようなことなのか。今回は、そんな話題について紹介したいと思う。

AIスキャンによる加齢性疾患リスクの予想

CERAのLisa Zhuoting Zhu博士、Mingguang He教授、「Monash Medical AI」の責任者であるZongyuan Ge教授らの研究チームは、2022年8月26日、網膜画像を解析して算出した「網膜年齢」で、心血管疾患やパーキンソン病などの加齢性疾患のリスクを予測することができると発表した。

  • 網膜画像を取得するLisa Zhuoting Zhu博士

    網膜画像を取得するLisa Zhuoting Zhu博士(出典:CERA)

まず、人の網膜の画像、つまり網膜画像を取得する。この網膜画像で、AIを使って網膜年齢を推定する。このAIは何万枚もの網膜画像で機械学習したものだ。

では、この網膜年齢とはなんだろうか。目の組織は、脳、心臓、肝臓、腎臓などの体のあらゆる組織と類似していて、病気に関係した目の変化というものは、体の臓器の問題を示している可能性があるというのだ。

そのため、実際の人の生年月日の年齢と人の網膜画像から推定される生物学的年齢(網膜年齢)の差が死亡や加齢に伴う疾患のリスクを示唆しているという。

実際に研究を進めると網膜年齢差が1年間増加すると、パーキンソン病のリスクが10%増加することが示され、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患を発症するリスクが3%増加することもわかったとしている。

いかがだったろうか。この網膜画像をAIにかけることで加齢性疾患のリスクを確認できるという素晴らしい研究だ。

これは、疾患のクイックスクリーニングの可能性を秘めているという。これにより、診断による時間の低減や医療費の大幅な削減にも寄与できる可能性があるというのだ。

彼らの目標は、AIアルゴリズムを最適化して、臨床現場で日常的なケアのモデルとして使用できる網膜年齢スコアリングシステムを開発することだという。

また、世界中の網膜画像を疾患を関連づけるAIを開発しより大規模で多様なデータセットを含めて、多くの疾患にも役立てることを目指すとのことだ。