ベルギーimecの年次イベント「ITF World 2023」では、世界中の著名な半導体および関連IT企業経営者らによる講演会に併設して、imecの研究者による過去の研究成果やデバイス試作受託事業の展示・デモが42件行われた。その中から、半導体関連のテーマをいくつか紹介したいと思う。
優れた高密度ファインピッチ配線
HPC向けアプリケーションでは、インターポーザー上、またはシリコン貫通ビア(TSV)を使用してチップ同士を重ねた、高度なチップ間の高密度の相互接続が必要となっており、そのためには、ダイとウェハ間の相互接続ピッチを縮小し、高度なチップレット相互接続を可能にする必要がある。
imecでは、優れた高密度およびファインピッチ相互接続技術の開発を継続して行っており、当該ブースでは、マイクロバンプやハイブリッドボンディングなど、改良された技術のいくつかを実演していた。
イメージセンサのピクセル技術
新しい光学スタック、吸収材、ピクセル・エンジンを使用した、最先端技術を超えたイメージセンサテクノロジーに関する研究の紹介をimecは行っていた。
1つ目のデモは、薄膜光検出器(TFPD)テクノロジーに基づく短波赤外線(SWIR)イメージセンサを備えたモジュラカメラで、SWIRイメージセンサは例えば自動車用途で悪天候時の認識率の増強や、サングラスをかけたドライバーの目の追跡なども可能とする技術となる。2つ目のデモは、将来のイメージセンサの新しい光学コンポーネントであるカラースプリッタで、これにより、回折限界以下のイメージセンサがすべての入射光子を捕捉できるようになり、感度、色の明るさ、コンパクトなシステム サイズが重要なパラメータとなる小型民生用カメラなどのアプリケーションでの品質向上が可能になるという。
シリコンフォトニクスを使用したコンパクトLiDARコンセプト
シリコンフォトニック集積テクノロジーを使用した、コンパクトかつ低電力、潜在的に低コストのソリッドステートLiDARシステム用の概念実証デモを行っていた。ADASなどの自動車アプリケーションでは、車の周囲の3Dマッピングのためのこのようなシステムが切望されているという。
持続可能な半導体技術とシステムプログラム
半導体サプライチェーン全体と連携して、最先端の現在および将来のチップテクノロジーの環境保全への影響について、より優れたデータ主導型の洞察をパートナーに提供する新たなプログラムをimecでは提案していた。imecではメンバーカンパニーと共同開発したカーボンニュートラルを目指した製造手法をTSMC、Samsung Electronics、GlobalFoundriesにて実証することが決まっていると説明している。
CO2に付加価値をもたらすナノテクノロジー
2050年のネットゼロエミッション目標を見据え、低炭素社会への移行には効果的なCO2削減技術が不可欠となることからimecでは、Power-to-Molecules(P2M)という電気分解を用いたCO2変換技術による合成ガス、エチレン、メタノールなどの分子に変換する新しい技術研究に取り組んでいるとしている。
シリコンフォトニクスの試作と少量生産の実施へ
imecの集積シリコンフォトニクスプラットフォーム(iSiPP)は、半導体サプライチェーン全体と連携して、フォトニックウェハのプロトタイピング、少量生産、さらには大量生産をファブレスの顧客に提供するという。ブースでは、研究者、フォトニックチップ設計会社、ファウンドリに、imecのプラットフォームが提供するさまざまなオプションについての説明が行われ、試作依頼企業の募集が行われていた。
フルサイズまで拡張可能なペロブスカイトシリコン太陽電池
太陽光の発電コスト低減手法の1つとして、変換効率の向上がある。iemcでは、タンデム型太陽電池デバイスの開発を進めている。デモでは、単接合型の太陽電池よりも効率が高く、効率を30%以上に高める可能性があることを示すデモを行っていた。
独自のプロセスデザインキットを公開
imec独自の高度なプロセス設計キット(PDK)の紹介も行っていた。これらのプレシリコンPDKは、今後のテクノロジーノードでの仮想設計を可能にし、CFET、バックサイドインターコネクト、STTメモリなどの将来のブレークスルーへの早期アクセスを提供するものとなるという。その結果、イノベーションが促進され、人材の育成につながるとする。これらの研究用PDKは、高度なCMOS研究と製品開発に取り組みたい大学や研究機関、ファブレス企業が利用できる状況にあるという。
ASIC設計・生産受託サービスも提供
ASICのアイデアを実際の製品として実現するには複雑なプロセスになる場合がある。imecでは、製品ライフサイクル全体を管理するフルサービスのASICソリューション「imec.IC-link」を提供している。サービス内容としては、設計、チップ製造、組み立て、テスト、および認定が含まれており、場合によっては、サードパーティのIPを提供することもできるという。
imec.IC-linkは、中小企業からの少量多品種ASIC設計を請け負い、TSMCのサイバーシャトルサービスを利用して製造まで行うimecの半導体サービスであり、TSMCをはじめとする主要な半導体ファウンドリと長年にわたる製造契約を締結しているという。