ベルギーimecの年次イベント「ITF World 2023」にて、IntelのエグゼクティブVP(EVP)兼テクノロジー開発 ゼネラルマネージャーのAnn Kelleher氏が「Enabling an exponentially better future: A look at the evolution of Moore's law innovation(飛躍的により良い未来を実現する -ムーアの法則に基づくイノベ―ションの進化を振り返る-」と題して、Intelのロジックデバイス技術開発の一端を披露した。

  • ITF World 2023で講演するIntel EVPのAnn Kelleher氏

    図1 ITF World 2023で講演するIntel EVPのAnn Kelleher氏 (提供:imec、以下すべて)

アイルランド出身の同氏は、30年ほど前に学生としてimecで研究を行った後、imecに就職して2年ほど過ごし、1996年にプロセスエンジニアとしてIntelに転職した。個人的にも会社としてもimecとは過去30年にわたって関係を築いており、その取り組みは現在も続いているとし、imecとIntelの協力関係がいかに長期にわたるものであるか、今後も両社の研究協業は継続していくことを強調した。

ムーアの法則こそが半導体や経済発展の原動力

Kelleher氏は、Intel共同設立者であるGordon Moore氏の名を冠し、同社がその継続にこだわり続けてきた、いわゆる「ムーアの法則」が半導体産業発展の原動力になっていることの説明から話を始めた。

まず、「ムーアの法則が経済を加速する」と題するスライド(図1)では、「1バレル当たりの原油価格は、過去70年間ほとんど変わってないが、トランジスタあたりのコストのコストは指数関数的に劇的に減少した」と述べたほか、FLOP当たりのコストも同様に指数関数的に減少しており、これらがコンピュータの需要を喚起したことを強調。シリコンとパッケージングの技術の進歩で、2030年には1兆個のトランジスタが集積されるようになるとの見通しを示した。

また同氏は、欧州での講演であることを意識し、Intel Irlandへの投資額が、同国のGDPに3倍の効果をもたらしたことも指摘。これまでに同社は、アイルランドに1989年以降300億ユーロを上回る投資をおこない、欧州の同社従業員は1万人を超え、EU域内のサプライチェーンは1000社に及ぶとしたほか、imecはじめ20を超える欧州の研究機関や大学と研究協業を行っていることも説明した。

  • ムーアの法則で経済が加速すると同氏は説明する

    図2 ムーアの法則で経済が加速すると同氏は説明する

Intelは将来、imecのCFET構造を採用か?

さらに同氏は今後の微細化に向けたトランジスタ構造の進化についても説明を行った(図3)。1959年のプレーナ構造、2011年のFinFET(Intelの用語ではTri-gate FET)に続いて同社では2024年にも「Intel 20A」技術ノードでGAA(Gate All Around、Intelの用語ではRibbonFET)構造を採用するとして試作品の断面写真を示し、将来の「さらに専有面積が小さく、さらに性能を上げた」構造としてimecのロードマップに取り上げられているCFET(Complementary FET)とそっくりな構造を示した(図3左上部)。

これを受けて欧米の一部メディアからは、「Intelが将来、CFETトランジスタ構造を採用することを明らかにした」と報じている。Intelがこの新構造トランジスタを公の場で披露したのは今回が初めてだが、Kelleher氏は具体的な生産時期やスケジュールについては明らかにしなかった。

  • Intelは2024年にGAA導入予定

    図3 Intelは2024年にGAA導入予定。将来はCFETを導入する可能性が示唆された

高NA EUV露光装置を他社に先駆けて導入

このほか、同氏は、次のような話もしている。

  • 「Intel 20A」から裏面電源供給構造を採用し、これによりトランジスタ密度をさらに向上させることができる
  • ASMLの協力で、近く業界で最初に高NA EUV露光装置を導入することになり、これにより他社よりも微細化を加速する
  • 先端パッケージングによりさらに高密度に機能を搭載できるようにする
  • 微細化するほど信頼性劣化が顕在化してくるが、Intelはシリコンフォトニクスを積極的にシリコンに搭載することでシステムとしての信頼性をあげる

まとめとして、Ann Kelleher氏は、以下の3点を挙げ話を締めくくった。

  • 技術革新がムーアの法則を延命・発展させ、それにより経済および技術が進化する
  • システム設計と回路設計とプロセス技術とパッケージングの同時最適化が今後の技術革新のために必須の課題である
  • 持続可能性に焦点を当てることは、エコシステム全体にとって最も基本的な事柄である