ここまで5回の連載の中で、コンテンツマーケティング実施にあたっては目的・ゴールを明確に設定し、ペルソナ設計を通して "読者の情報ニーズ" に寄り添った情報発信が重要であることをお伝えしてきました。

顧客視点に立つことがコンテンツマーケティング成功の何よりの秘訣ですが、その際に考えたいのが「コンテンツをどんな形で」届けるか。今回は、コンテンツマーケティングに取り組む際に、最も基本的かつ重要な施策となる「ビジネスブログ」について少し丁寧に説明します。

ビジネスブログはコンテンツマーケティングのハブ

ビジネスブログは、コンテンツマーケティングの実施において最も基本的なものであると同時に最も重要な施策ですが、ブログ記事を1本公開するだけの取り組みに意味はありません。定期的にコンテンツを公開し続けることは、蓄積(ストック)された記事にGoogle検索などを利用した新規の読者がたどり着く可能性が高めるためです。

このように、ストック型のビジネスブログにコンテンツ資産を貯めていきながら、フロー型と呼ばれるソーシャルメディア等でさらなる集客を図るという手法が、コンテンツマーケティングの1つの王道です。運用にはある程度の手間とコストがかかりますが、情報発信の "ハブ" となるオウンドメディアの核ですので、是非継続的な運用を確立してください。

「ビジネスブログを中心にコンテンツを連携」 資料 : 宗像氏著「商品を売るな」

高品質なブログ記事で、信頼を獲得する

ブログと言うと、Amebaブログのような無料のWebサービスを利用した、いわゆる個人の日記のようなものを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、企業がビジネスブログを運用する際には全く異なる水準で記事の内容を吟味する必要があります。

そのブログでなければ読めないことなど、読者の知りたい情報を惜しみなく発信することで信頼を獲得できるほか、競合他社との差別化にもつながります。一方で、不十分な論拠による記事や間違った情報、他で書かれている内容をまとめただけ、といった記事は企業の好感度を下げ、信頼を損なう可能性もあります。

コンテンツマーケティングを成功に導く5つのステップ」で紹介したゴールとペルソナを意識しながらコンテンツを企画しましょう。

キーワードを意識して検索流入を増やす

読者がブログにたどり着く経路は、GoogleやYahoo!といった検索エンジン経由と、ソーシャルメディアのシェアに大別されます。検索からの流入を増やすには、適切なキーワードを組み合わせたコンテンツを重点的に用意することが重要です。これにより、検索結果で上位に表示されるようになり、関連するトピックに注目している読者に見つけてもらいやすくなります。

なお、この時に設定するブログのキーワードとして、会社名や商品名を選ぶことは効果的ではありません。なぜなら、会社名や商品名で検索する人は、すでにそれらの存在を知っているためです。これらの指名キーワードに対しては、検索後、会社のサービスページや商品ページが表示されるようにしましょう。

では、ブログで意識すべきキーワードとは何でしょう。答えは、会社名や商品名は知らないものの、漠然と解決したい問題を抱えており、それを解決するためにあなたのビジネスに関連した情報を調べている人が検索しそうなキーワードとなります。

ブログを通してまだ見ぬ潜在顧客に存在を認知してもらう

例えば、あなたがワインのネット販売を手掛けているとしましょう。

具体的な銘柄や作り手の名前で検索する人たちには、そのワインの販売ページを表示してあげるのが一番です。すでにニーズが顕在化しているため、その場で購入してくれる可能性も高いと想像できます。

しかし、例えば「ワイン ボルドー 飲み方」といった検索キーワードでサイトにたどり着いた人はどうでしょう? 何かの記念にボルドーワインをもらったものの飲み方が分からないのかもしれません。おそらく、あなたの会社や店名は知らずに、サイトを訪問しているのでしょう。

その時に、ワインの飲み方を詳しく説明しているブログ記事を見つけ、内容が参考になるものであれば、そのブログを運営する会社や商品にも興味をもってくれるかもしれません。つまり、商品名や会社名を売り込む前に、コンテンツを通して認知してもらえるのです。

コンテンツはどこに公開する? 自社メディアか、外部サービスか

コンテンツマーケティングのためのビジネスブログを立ち上げる際には、大きく2つの方法があります。

1つは「WordPress(ワードプレス)」や「Movable Type(ムーバブル・タイプ)」といったブログ用のCMS(コンテンツマネジメントシステム)を用いて独自に制作する方法。もう1つは「Amebaブログ」や「はてなブログ」といった外部のブログサービスを活用する方法です。

外部のブログサービスを利用する最大の利点は、専門知識がなくても手軽に無料で利用できることでしょう。しかし、公開出来るコンテンツの自由度は低く、多くの制限が存在します。例えば、「ダウンロード用のコンテンツを用意して、ブログ記事からのリード獲得をはかる」といった仕組みも、用意できないことが多いようです。

また、長期的な取り組みが前提となるコンテンツマーケティングにおいて、外部サービスは運営企業の事情でサービスを停止する可能性もあります。もともと個人利用を想定して作られており、規約変更などによってビジネス目的の利用を禁じられる可能性もゼロとは言い切れません。

こうした場合、それまで蓄積したコンテンツは別のサービスに移行することになりますが、検索エンジン対策(SEO)など、それまで積み上げた蓄積を失ってしまうことになります。長期的な運用を考えると、自社で独自にビジネスブログを構築することをオススメします。

運営に必要な人材と、継続のための仕組みづくり

長期的にブログを運営するためには、チームを作って運用することが有効です。理想的な構成としては、全体を管理する編集長と記事を書くライター、編集者といった役割を分担し、社内に無いリソースに関しては必要に応じて外部のカメラマンやWeb制作会社、デザイナー、校正士といったプロフェッショナルに協力を仰ぐことで補完するといった具合でしょう。

この時のポイントは、内製と外注のバランスです。すべてを外部の会社に任せるのではなく、(兼任でも良いので)自社のコンテンツ発信戦略とブランディングに責任を持つ担当者を置くことをオススメします。これにより、ブランドメッセージがぶれるリスクを回避することができます。

次回は、ビジネスブログと連携させることでコンテンツ発信の効果をさらに拡大してくれる「ブログ以外のコンテンツ」についてお伝えしたいと思います。

執筆者紹介

イノーバ 代表取締役社長 宗像淳

福島県立 安積高等学校出身、東京大学文学部卒業。その後、富士通にて北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等を経験する。MBAを取得するため、ペンシルバニア大学ウォートン校に留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから楽天へ転職。その後、ネクスパス (現 : トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当する。
2011年6月に株式会社イノーバを設立(公式Webサイトはこちら)。著書に『商品を売るなーコンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる (日経BP)』がある。

書籍紹介

商品を売るな

著者 : 宗像淳
発行 : 日経BP 2014年12月8日

生活者の購買行動が大きく変化している。プッシュ型広告で商品を売り込んでも、顧客はそれを無視するようになっている。従来のマーケティングはもう効かないのだ。表立って宣伝せず、見込み客に見つけてもらうための古くて新しいマーケティング手法、それがコンテンツマーケティングである。

この手法は、コカ・コーラやP&Gといったマーケティング先進企業だけでなく、中小・スタートアップ企業が積極的に導入している。では、コンテンツマーケティングとはどのような取り組みかなのか? どんな効果があり、費用はいくらか? 運用のコツは? 成功するポイントは? ――本書では、国内・海外企業の事例紹介を交え、コンテンツマーケティングの全貌を分かりやすく解説する。