住友生命とJMDCは11月4日、医療ビッグデータを活用した「インフルエンザ実態調査レポート2026」を発表した。調査の結果、降圧薬を使用している人は、使用していない人と比較して、インフルエンザによる重症入院の発生率が2.88倍となることが分かった。

今回の調査では、2025年時点で分析可能な人数が1000万人を超えるJMDCの医療データを使用。高血圧の治療薬を使用している人は、使用していない人と比較して、インフルエンザによる重症入院の発生率が2.88倍となった。また、家庭内では5~14歳の子どもが最初にインフルエンザと診断される割合が高いことも明らかになった。

インフルエンザの診断発生率は10.91%、重症化すると医療費も増加

今回の調査は、JMDCが保有する健康保険組合由来のレセプトデータと健康診断データを用いて実施したもの。主に2024年9月から2025年8月までの「2024-2025シーズン」を対象とし、インフルエンザの発生状況、健康状態や生活習慣との関連、過去の感染症診断歴、家庭内での感染状況などを分析している。

分析の結果、2024-2025シーズンのインフルエンザ診断発生率は10.91%となり、対象者100人のうち約11人が、同シーズンにインフルエンザと診断された計算となった。

年代別では、5~14歳の子どもで診断発生率が高い一方、肺炎併発や入院、重症入院については、子どもだけでなく60~74歳でも発生率が高い傾向が確認されている。

また、インフルエンザの重症度が高まるほど平均医療費も増加する傾向が見られた。診断のみの場合は1.8万円だったのに対し、入院では57.4万円、重症入院(ICU等)では111.9万円となった。

  • 性別・年齢別のインフルエンザ診断発生指数(2024-2025シーズン)

    性別・年齢別のインフルエンザ診断発生指数(2024-2025シーズン)

降圧薬使用者の重症入院発生率は2.88倍、歩行や睡眠との関連も

住友生命 新規ビジネス企画部 部長代理 アクチュアリーの丸山かおり氏は「健康状態や生活習慣とインフルエンザのリスクの関係」について説明した。

今回の調査では「降圧薬の使用」「糖尿病治療薬の使用」「脂質異常症治療薬の使用」「体重増加」という4つの健康状態に加え、喫煙・歩行習慣・就寝前の夕食・睡眠による休養感という4つの生活習慣を分析対象とした。

  • 住友生命 新規ビジネス企画部 部長代理 アクチュアリーの丸山かおり氏

    住友生命 新規ビジネス企画部 部長代理 アクチュアリーの丸山かおり氏

その結果、降圧薬を使用している人は、使用していない人と比較して、インフルエンザの診断発生率が1.02倍、入院の発生率は1.76倍、重症入院の発生率は2.88倍となることが分かったという。

丸山氏は「生活習慣病の治療を受けている人では、インフルエンザに罹患した際に重症化に関連するリスクが高い傾向がある」と説明。糖尿病治療薬や脂質異常症治療薬を使用している人についても、入院や重症入院の発生率が高い傾向が確認されたという。

  • インフルエンザのリスク因子と相対リスク(2024-2025シーズン)

    インフルエンザのリスク因子と相対リスク(2024-2025シーズン)

生活習慣との関係では、歩行習慣がない人や、睡眠による休養感がない人は、そうでない人と比較してインフルエンザのリスクが高い傾向が見られたものの、健康状態と比較すると、生活習慣によるリスクの差は小さかったという。

前シーズンに風邪と診断された人、翌シーズンのインフルエンザ診断率は1.32倍

また今回の調査では、前シーズンに感染症と診断された経験が、翌シーズンのインフルエンザ診断発生率とどのような関係にあるかについても分析された。

前シーズンに風邪と診断された人の翌シーズンのインフルエンザ診断発生率は12.3%で、診断されていない人の9.3%と比較して1.32倍となった。

  • 前シーズン風邪診断有無別診断発生率(2024-2025シーズン)

    前シーズン風邪診断有無別診断発生率(2024-2025シーズン)

さらに新型コロナウイルス感染症についても同様の傾向が見られており、前シーズンに新型コロナと診断された人のインフルエンザ診断発生率は13.4%で、診断されていない人の10.5%と比較して1.28倍となった。

丸山氏は、こうした結果について、人との接触機会の多さなど感染しやすさに関わる要因に加え、症状が現れた際に医療機関を受診する行動の違いが影響している可能性を指摘した。

一方で、前シーズンにインフルエンザと診断された人では、逆の傾向が確認され、前シーズンにインフルエンザと診断された人の翌シーズンの診断発生率は9.9%で、診断されていない人の11.1%と比較して0.89倍となった。

  • 前シーズンインフルエンザ診断有無別診断発生率(2024-2025シーズン)

    前シーズンインフルエンザ診断有無別診断発生率(2024-2025シーズン)

この結果について丸山氏は「前シーズンにインフルエンザに罹患したことで、ワクチン接種や感染対策に対する意識が高まった可能性がある」と説明した。

また、インフルエンザのA型とB型の関係についても分析。B型が比較的大きく流行した2023-2024シーズンでは、A型流行期にインフルエンザと診断された人の方が、その後のB型流行期にも診断される割合が高かったという。

4人家族の「家庭内感染率」は43.1%、子どもが最初に診断される傾向

また家庭内での感染状況についても分析が行われた。今回の調査では、家庭内感染率を「世帯内で1人以上がインフルエンザと診断された世帯のうち、同一シーズンに複数人が診断された世帯の割合」と定義している。

分析の結果、家族の人数が増えるほど家庭内感染率が高くなる傾向が確認され、4人家族の家庭内感染率は43.1%、5人以上では51.4%となった。

  • 家族人数別の家庭内感染率(2024-2025 シーズン)

    家族人数別の家庭内感染率(2024-2025 シーズン)

また、世帯内で最初にインフルエンザと診断される人を年代別に分析したところ、5~14歳の子どもで初発診断発生率が高いことが明らかになっており、丸山氏は、この背景について、小学校や中学校などで集団活動を行う機会が多いことが影響している可能性を挙げた。

実際に年齢構成別では、6歳以下の子どもが多い世帯よりも、7~12歳の子どもが多い世帯で、子どもが最初に診断される割合が高い傾向が見られたという。

なお、今回の調査はレセプトや健診データを用いた観察研究であり、分析結果は因果関係を示すものではない。また、家庭内感染率は同一世帯で複数人が診断された割合を示しており、実際に家庭内で感染が広がったことを確認したものではない。

住友生命 上席執行役員 データマーケティングオフィサーの工藤征夫氏は、今回の調査について「医療データをもとにインフルエンザの実態を明らかにし、感染対策に役立つ情報を広く提供することが目的」だと説明。

  • 住友生命 上席執行役員 データマーケティングオフィサーの工藤征夫氏

    住友生命 上席執行役員 データマーケティングオフィサーの工藤征夫氏