この半導体ニュースのまとめ
・TDKがフィジカルAI向けTMRセンサの開発・量産に約1000億円を投資
・新潟県小千谷市の信濃川テクノ工場を活用し、2029年中の稼働開始を予定
・省スペース/低消費電力/高速応答を備えた高付加価値センサを世界市場へ展開
TDKは10月30日、フィジカルAI向けの高性能磁気センサ事業を拡大するため、新潟県小千谷市のTDK信濃川テクノ工場に約1000億円を投資すると発表した。
新しい磁気センサであるTMR(トンネル磁気抵抗効果)センサの開発を強化するとともに、本格的な量産体制を構築する。新製品では省スペース化と低消費電力化に加え、次世代パワー半導体に対応する高速応答などの高性能化を進める。
フィジカルAIの「目」となるセンサを強化
フィジカルAIは、AIがカメラやセンサで現実世界の状態を取得し、その情報を基にロボットや機械を制御する技術となる。
ロボティクス、スマートインフラ、自動化システムなどへのAI導入が進むことで、位置、角度、回転、電流などの物理情報を高精度かつリアルタイムに取得するセンサの重要性が高まっている。
TDKは、こうしたフィジカルAIの普及に伴い、センサを含むAIエコシステム市場が中長期的に拡大すると予測。現実世界のデータをAIへ入力する役割を担う磁気センサを、今後の成長分野の1つに位置付ける。
低消費電力と高速応答を両立
TMRは「トンネル磁気抵抗効果」の略で、磁場の変化によって電気抵抗が変化する現象を利用する。
今回の投資では、省スペースかつ低消費電力で動作するとともに、次世代パワー半導体に対応できる高速応答性能を備えたTMRセンサの開発を強化する。
機器の小型化やバッテリー駆動時間の延長が求められるロボットなどでは、センサにも小型化と低消費電力化が必要となる。また、パワー半導体の高速スイッチングに対応して電流などを測定するには、センサ側にも高速な応答性能が求められる。
TDKは、高性能TMRセンサと独自のパッケージング技術を組み合わせ、省エネルギー化と高性能化に貢献する高付加価値製品として世界市場へ展開する。
旧半導体工場をセンサ量産拠点へ転換
投資先となるTDK信濃川テクノ工場は、新潟県小千谷市にある。
TDKは2026年6月、旧JSファンダリの工場跡地を取得し、センサ製品の新たな生産拠点として活用する方針を公表していた。
敷地面積は17万3335m2、建屋面積は13万2075m2。主にTMRセンサ製品を生産し、2029年中の稼働開始を予定する。
既存の半導体工場を活用することで、フィジカルAI向けセンサの開発・量産体制を構築し、将来の需要拡大へ対応する。
今回の約1000億円の投資について、具体的な実施期間や生産能力、売上高への影響は明らかにしていない。
独自のパッケージング技術で高付加価値化
TDKは、TMRセンサ単体の性能向上だけでなく、独自のパッケージング技術と組み合わせることで、用途ごとの要求へ対応する。
センサを実際の機器へ導入する際には、検出性能に加え、実装面積、消費電力、応答速度、耐環境性などを含めた設計が必要となる。
TDKは磁性材料や薄膜技術、センサ設計、製造、パッケージングなどの技術を組み合わせ、フィジカルAIを支えるセンサソリューションとしての競争力を高める考えだ。
同社はAIエコシステムを重要市場に位置付けており、自動車、ICT、産業機器などで培った顧客基盤を活用して事業を拡大する。
約1000億円の戦略投資を通じ、高性能TMRセンサの量産体制を構築するとともに、国内の関連産業や地域経済の活性化にもつなげるとしている。