国立情報学研究所(NII)、理化学研究所、東京大学情報基盤センター、NTT東日本、NTT西日本は10月30日、IOWNのAll-Photonics Network(APN)を活用したストレージ間データ転送の実証結果を発表した。兵庫県神戸市と千葉県柏市の拠点を800Gbpsの回線で接続し、2つの実用アプリケーションを同時に使用したところ、最大約775Gbpsの転送速度を記録した。
柏-神戸間を800GbpsのAPN回線で接続
今回の実証は、5者が2025年12月に締結した共同研究契約に基づくもの。理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)と東京大学柏地区キャンパスを、NTT東西の光波長専有接続サービス「All-Photonics Connect powered by IOWN」で直結した。
APNは、ネットワークから端末まで光を中心とした技術を導入し、大容量かつ低遅延の伝送を実現するネットワークである。実証環境では、大阪のNTT西日本局舎と柏のNTT東日本局舎を800GbpsのAPN回線で結び、各局舎と理研神戸拠点、東大柏拠点との間をそれぞれ400Gbpsの2回線で接続した。
両拠点は、NIIが構築・運用する学術情報ネットワーク「SINET」でも接続されている。実証環境で測定したAPNの遅延値は、SINETと比べて約20%低かったという。
実証の背景には、研究機関が扱うデータの大規模化がある。理研と東京大学は、東大柏地区キャンパスとR-CCSにそれぞれ約100ペタバイトのストレージを備えたHPCI共用ストレージを運用している。次世代フラッグシップシステム「富岳NEXT」の開発に伴い、研究データが急増することから、これらを東西の拠点で冗長化し、安全に管理することが求められている。
2アプリの同時利用で最大約775Gbpsを記録
ファイル転送には、理研と東京大学が運用するHPCI共用ストレージと、NIIが開発したファイル転送ツール「MMCFTP」を使用。HPCI共用ストレージについては、現在サービス中の第三世代ではなく、前バージョンに当たる第二世代の検証環境を用いた。
MMCFTPは、通信距離にかかわらず、利用者が指定した一定速度での転送やマルチパス転送に対応するツールである。実証では、NVMe SSDを多数搭載したNIIのサーバを理研と東京大学の各拠点に設置し、両サーバ間でデータを転送した。各サーバは、400Gbpsイーサネット(400GbE)1回線と100GbE 4回線で、各拠点のスイッチに接続した。
回線が所定の性能で動作していることを確認した後、転送アプリケーションのパラメータを変更しながら、断続的に転送実験を実施した。その結果、2つのアプリケーションを同時に使用した際に、800Gbpsの回線帯域の約97%に相当する最大約775Gbpsを記録した。750Gbpsを超える転送速度が数分間続くことも確認したという。
なお、今回の結果は特定の検証環境で得られたものであり、あらゆる環境で同等の性能を保証するものではないとしている。
11月には米国シカゴまで400Gbps回線を延伸
5者は今後も共同研究を続け、APNを活用した大規模かつ高品質なデータ転送の検討やPoCを実施する。NTT東西のAPN基盤、NIIがSINETで培った知見、理研と東京大学の大規模ストレージに関する知見を組み合わせ、データ同期技術の共同研究を進める方針だ。成果は、研究データの利活用環境の拡張や、NIIの次期SINETなどの検討に反映する。
直近では、2026年11月に米国シカゴで開催される国際会議・展示会「SC26」において、今回の実験環境のうち400Gbpsの区間をSC26の会場まで延伸し、MMCFTPによるファイル転送実験を予定する。サーバ間と国際回線を含む全区間に400Gbps以上の回線を使用し、日本と米国の間でデータを転送するという。


