NTT東日本とブロードバンドタワーは10月27日、東京と北海道のデータセンター拠点をIOWN APNで接続し、遠隔地に分散配置したストレージを統合的に利用する共同実証を実施したと発表した。
近年、生成AIや機械学習の普及により、企業が扱うデータ量は増加している。一方、データセンターについては、首都圏への集中による電力や用地の不足、災害対策、再生可能エネルギーの活用などを背景に、地方への分散が求められている。
しかし、データセンターを分散すると、拠点間で大容量データを移動する必要が生じるほか、ストレージの管理も複雑になる。ストレージは機器間の通信遅延や遅延の変動(ゆらぎ)の影響を受けやすく、従来は機器を近接して配置する必要があった。
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、NTTが提唱する次世代の情報通信基盤構想で、APN(All-Photonics Network)はその構成要素の1つ。光技術を活用することで、大容量・低遅延・低消費電力の通信を目指しており、通信遅延の変動(ゆらぎ)を抑えられることも特徴だ。両社は今回、IOWN APNを活用し、離れた拠点に設置したストレージを1つの基盤として利用できるか検証した。
東京と北海道を100GbpsのIOWN APNで接続
実証では、ブロードバンドタワーの新大手町サイト(東京都大手町)とNTT東日本の札幌東局(北海道札幌市)を、100Gbpsの通信サービス「All-Photonics Connect powered by IOWN」で接続した。
両拠点には、それぞれデル・テクノロジーズのストレージ製品「Dell PowerScale F200」を3台ずつ配置し、拠点をまたぐストレージバックエンドネットワークを構築した。
ブロードバンドタワーはストレージや検証環境の提供、性能・機能検証を担当し、NTT東日本はIOWN APN技術や実証回線、北海道側の実証環境を提供した。
東京~北海道間のネットワーク性能を測定した結果、実証回線の片道遅延は7.14ミリ秒、ゆらぎは16ナノ秒未満だった。
また、大容量ファイルの読み出し性能を検証したところ、同一拠点内にストレージを構成した場合と比較して、読み出し速度の低下は約3%にとどまった。ファイルの読み出しに要する時間の差も1秒未満で、両社は利用者が体感する性能差は極めて小さいと評価している。
さらに、ランサムウェア対策製品「Superna Eyeglass」を使用し、ランサムウェア攻撃を想定した検証も実施した。監視サーバを1拠点に集約した構成でも、東京と北海道の両拠点に対する疑似攻撃を正常に検知・防御できることを確認した。
今回の実証により、1,000km以上離れた場所にストレージを分散配置しても、同一拠点内に近い読み出し性能を維持しながら、統合的に運用できる可能性が示された。
データセンターの地方分散を後押し、石狩で進む取り組み
両社は今回の成果を、データセンターの地方分散に生かす考えだ。想定する用途として、地方のデータセンターに保存した学習データを首都圏から直接利用する生成AI開発や、複数拠点にまたがる映像・コンテンツ制作、ランサムウェア対策の一元化などを挙げている。
北海道石狩市では、再生可能エネルギーの活用や首都圏の電力不足への対応を背景に、データセンターの集積が進んでいる。
2026年7月には、石狩市がデータセンター事業者や電力・通信インフラ事業者と連携する「石狩データセンターコンソーシアム(石狩DCC)」を設立した。NTT東日本とブロードバンドタワーも参加予定企業に名を連ねており、データセンター間のAPN接続や計算資源の共同利用などが検討されている。
また、NTT東日本グループのNTT-MEも石狩市でコンテナ型データセンター「JPDC AI Container Village@石狩」の整備を進めている。
NTT-MEの水津次朗氏は、2025年11月のTECH+の取材で、東京と石狩のデータセンターをIOWNで結び、1つのデータセンターのように運用する構想を説明していた。
さらに、2026年5月の着工に向けた地鎮祭では、NTT東日本の池田敬氏が、石狩市に複数のデータセンター事業者が集積していることに触れ、ネットワークで接続することで、地域全体を1つの大きなデータセンターとして活用できる可能性を示していた。
こうしたデータセンターの分散・連携を目指す動きが進む中、今回の実証は、離れた拠点間でストレージを統合するための技術的な可能性を示したものとなる。
ブロードバンドタワーは2026年9月14日、石狩市で「石狩新港サイト」の運用を開始した。同施設は石狩市産を中心とする再生可能エネルギー100%で運営され、IOWN APNを通じて新大手町サイトと直接接続されている。
同社は今回の実証で得られた知見を基に、石狩新港サイトをはじめ、全国の拠点をつなぐストレージシステムの実現に向けた検討を進める。
