Google Cloudは10月29日~30日、「Agentic AI Summit '26 Fall」を開催した。今回の主軸は「Geminiエージェント」と「Agent Platform」だ。本稿では29日の基調講演「Geminiで実現するエンタープライズ AI エージェント戦略」の内容を紹介する。
登壇は、Google Cloud 執行役員 AI技術統括本部 兼 AIプロダクト開発部門 日本拠点リードの寳野雄太氏、同 AI技術統括本部 AI OCEの森居英之氏、三菱UFJ銀行 執行役員 リテール・デジタル企画部長の金子洋平氏、アフラック生命保険 執行役員の白羽隆浩氏。
変化に対応するGeminiエージェントの強みとは
まず登壇した寳野氏は「この1年でAIの導入・利用率が上がってきている」と話し、2026年8月の調査では約9割がAIを導入・利用しているという数字を示した。
日々AIが進化するなか、AIエージェント領域では「AIコスト、トークン量」「単利のAIから複利のAIの投資へ」「週単位のモデル競争」という3つの大きな変化があるという。
1つ目のAIコスト、トークン量の変化はどのような影響をもたらすのか。
同氏によると、AIのモデル単体のコストは下がってきている。今後もモデル競争により、さらに下がるという予測もあるそうだ。一方で、2025年の調査では1社あたり年間約5.2億円をAIに使っているという結果も出ている。仮に何の対策もしなければAIにかかるコストは増加する見込みだ。
ではなぜ、コストとトークン量が課題となるのか。寳野氏はAIが進化することで、1度のタスクで消費されるトークン量が大幅に増加したことを挙げた。また、ユーザー側がタスクの内容に対し、オーバースペックなモデルを使っている場合も多い。
経営層の立場ではコストが増えることに目がいきがちだが、同氏は「(AIに対する)投資が使い捨てではなく、会社の資産になるのであれば、コスト増も許容されるのではないか」と問いかけた。
そこで提案されたのが2つ目の変化「単利のAIから複利のAIの投資へ」だ。1度の出資で1回のリターンを得る単利ではなく、1度の出資で継続的なリターンを得られれば、将来的には払ったコストを回収できることになる。
その例として寳野氏は、Geminiエージェントの「スキル(Skills)」を挙げた。これは多くの人が使うプロンプトや定型フォーマットを保存する機能で、共有されたメンバーは誰でも使用できる。これにより、AIから受ける恩恵は個人単位ではなく、組織単位になるというわけだ。さらにスキルの改善を続けることで、組織内の業務は「加速度的に向上する」と同氏は説明した。
スキルを使ったAIエージェントの使い方として、森居氏はある営業職メンバーがメーカーへ訪問する場合を例に、状況分析から提案スライドの作成、メールでのレポート送信までを行うデモンストレーションを披露した。
ここで再び登壇した寳野氏は「コストの話に戻りたい」と述べたうえで、コスト制御の鍵はモデル選びにあると続けた。
冒頭の3つの大きな変化の1つ、週単位のモデル競争がこれにあたる。刻々と進化するAIエージェントの領域では、各社から次々に新しいモデルが発表されている。そのどれを採用すべきか、あるいは処理したいタスクにふさわしいモデルはどれなのかをユーザー側が判断するのは難しい。
Geminiエージェントにはタスクに応じ、適切なモデルを選択し、コストを最適化する機能が備わっている。Geminiのほか、OpenAIなど200以上のモデルを選択できるという。同氏は、Geminiエージェントが3つの大きな変化に対応できる存在だと力を込めた。
三菱UFJ銀行はAIエージェントで金融をどう変える?
続いて登壇した金子氏は、三菱UFJフィナンシャル・グループにおけるAIエージェント活用の取り組みを紹介した。
同氏によると、個人顧客の金融を取り巻く環境は大きく変化しているという。例えば、金利のある世界が定着したことで、個人顧客にはこれまで以上に選択肢が広がり、判断が求められる場面が増えた。また、AI技術の進化は顧客体験にも変化を与えるものだ。
このような環境の変化に対応し、顧客と長期的な関係を構築するため、三菱UFJ銀行では新サービスブランド「エムット」を立ち上げた。すでにアプリのリニューアルやポイント制度の変革などを実施している。
エムットが今後目指していく姿の1つとして金子氏が挙げたのが、AIエージェントを活用した自律型金融の実現だ。決済や資産運用、住宅ローン、金融犯罪対策といった銀行業務に対応するエージェントを複数作成し、それを窓口となるエージェントが統合するといったかたちを想定している。
とくに、金融犯罪対策は今後ますます重要になると考えられる。その際に課題となるのが対応の高度化だと同氏は話す。高度な対応が必要となる本人確認代行や不正取引検知などはAIエージェントが担い、最終的な判断は人が行うかたちを目指しているという。
「利便性を高めるAIと安心安全を守るAIの両輪で進めていきます」(金子氏)
アフラックがAIエージェント活用で目指す姿とは
最後に登壇した白羽氏は、アフラック生命保険でのAI活用について紹介した。
同社は従来「DX@Aflac」として、デジタルを活用した業務変革を進めてきた。2026年からはこれを「AX@Aflac」に変更し、AIを企業の中核能力に位置付けたという。
「AX@Aflacで顧客体験や保険代理店支援、社員の働き方そのものを再創造していきます」(白羽氏)
AIエージェントを利用したいくつかの取り組みも進行中だ。顧客向けのプラットフォームでの活用や、代理店向けのエージェントの開発などの検討が進められている。
社内向けには「働き方変革プロジェクト」を立ち上げ、全社員にAIアシスタントを配置。間接業務をAIエージェントに実行させ、人を高付加価値業務へとシフトさせる考えだという。
「Geminiエージェントをフル活用し、業務、人財、組織、カルチャー、商品開発を再創造していきたいと考えています」(白羽氏)



