
環境に理由を求める人は全て他責
─ 混沌とした世の中にあって、リーダーに求められる条件とは何か? という観点でお聞きしますが、まず、楠木さんは日本の産業界の現状をどのように捉えていますか。
楠木 メディアの皆さんはよく激動期だとか、不確実性が高まっていると言いますが、それは今に始まった話ではありません。昔から今日に至るまで激動期でない時代は無かったわけで、論理的に言って、「激動」は連続しません。今の世の中を激動期と言ったら、明治維新の時代の人は怒ると思います。
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わたしは経営者である以上、一切、外的な環境に理由を求めないことが大切だと思っています。いつの時代でも時代環境から認識が入る人がいます。例えば、今であれば円安だから大変ですと。でも、そういう人は円高の時にも大変だと言っていたと思うんですよ。
これは人口問題でもそうです。人口減少で少子高齢化だから大変だと。でも、そういう人たちは高度成長期に人口が増加すると、おそらく、こんな小さな島国に人口が増えてどうするんだと言っていたはずです。要するに、だったら、あなたはどういう状態ならいいんですかと。誰が考えても最良の状況などあり得ない。わたしは環境に理由を求める人は全て他責だと考えています。
─ 外部環境を問題にしてはいけないと。
楠木 そうです。いつの時代もそうですが、経営者の方に会社の何が問題ですか? と聞いても、経営が悪いと言う人はほとんどいません。
経営が悪いのは自分自身の問題ですからね。多くの人たちは自分を悪者にしたくないから、国が悪いとか、時代が悪い、社員が悪いと言って、他人に責任をなすりつけたがる。でも、それではリーダーの資格がないというのが、わたしの意見です。
─ では、それを踏まえた上で、リーダーに求められる要素とは何だと思いますか。
楠木 リーダーにしかできない一番重要な仕事は決断です。
ただ、この「決断」の中身が肝心でして、決断というのは良いことと悪いことのどちらを選ぶという話ではありません。その2択なら良い方を選べばいいだけの話なので。
ですから、本当の決断というのは、戦略的な意思決定として、良いことと良いことのどちらを選ぶかということです。
─ 両方良いこと?
楠木 ええ。少し生意気な言い方に聞こえるかもしれませんが、わたしは……。