この半導体ニュースのまとめ

・インフィニオンが欧州に300mmウェハを用いるGaNパワー半導体の量産施設を設立へ
・フィラッハ拠点へ2034年までに約11億ユーロを投資し、2027年末までの生産開始を予定
・300mm化により1枚のウェハから200mm比で2.3倍のチップを製造可能に

Infineon Technologies(インフィニオン)は10月27日、オーストリアのフィラッハ拠点に、300mmウェハを使用するGaNパワー半導体の量産施設を設立すると発表した。

同社によると、300mmウェハを用いたGaNパワー半導体の量産施設は世界初となる。フィラッハ拠点の既存クリーンルーム施設へ2034年までに約11億ユーロを投資し、既存インフラと高度化したインフラの双方を活用する。市場需要に応じて生産を立ち上げ、2027年末までの生産開始を予定する。

  • インフィニオンの300mm GaNウェハとGaNパワー半導体

    インフィニオンの300mmウェハを用いた次世代GaNパワー半導体 (出所:インフィニオン)

300mm化でチップの製造数を2.3倍に

インフィニオンは2024年、300mm GaNウェハの加工に世界で初めて成功したと発表。その後、顧客へのサンプル提供に向けた開発を進めてきた。今回の投資では、この300mm GaNウェハ技術を、顧客向け製品を供給する量産施設へ移管する。

300mmウェハは、従来の200mmウェハと比べて面積が大きく、同じサイズのチップであれば1枚のウェハから2.3倍のチップを製造できる。生産効率を高め、GaNパワー半導体の製造コスト低減と供給能力拡大につなげる。

  • 200mm GaNウェハと300mm GaNウェハ

    200mm GaNウェハと300mm GaNウェハの比較 (提供:インフィニオン)

また、フィラッハ拠点の既存クリーンルームや製造インフラを活用することで、新たな製造能力を効率的かつコスト効率よく整備する考えだ。

  • インフィニオンのフィラッハ拠点の全景

    インフィニオンのフィラッハ拠点の全景 (出所:インフィニオン)

AIデータセンターやロボティクスの需要に対応

GaNは、Siと比べて高速なスイッチングと高効率な電力変換を実現できる次世代パワー半導体材料であり、電力変換時のエネルギー損失と発熱を抑えながら、電源やインバータなどの小型化、高性能化、エネルギー効率向上につなげることを可能とする。

インフィニオンは、300mm GaNパワー半導体の用途として、AIデータセンター、エネルギー インフラ、eモビリティ、ロボティクス、コンシューマー エレクトロニクスなどを挙げている。

特にAIデータセンターでは、AIアクセラレータの高性能化に伴って電力消費と電力密度が増加しており、配電や電圧変換に伴う損失と発熱の低減が課題となっている。同社では、GaNを用いた高効率な電源ソリューションを通じて、AIデータセンターにおける電力変換の高効率化と高電力密度化に対応するとしているほか、eモビリティやロボティクスでも、電源やモータ制御回路を小型化しながら、電力損失と冷却要求を抑える用途での活用拡大を見込むとする。

欧州半導体法に基づき3億1900万ユーロを助成

今回の投資は、欧州半導体法に基づく支援対象となっており、欧州委員会がオーストリア政府による3億1900万ユーロの国家助成を承認した。オーストリア連邦経済・エネルギー・観光省による正式な助成決定は、定められた期限内に行われる見込みとしている。また、この助成は、欧州における半導体製造能力の拡大に加え、大学や研究機関との国境を越えた連携や、スタートアップ企業、中小企業による革新的な技術・製品へのアクセス向上にもつなげるものとなるともしている。

フィラッハ拠点は、同社におけるパワー エレクトロニクスと新しい半導体材料のグローバル コンピテンス センターに位置付けられており、オーストリア法人が雇用する約5800人のうち約4800人が同拠点に勤務しているという。

大学、研究機関、スタートアップ企業、産業界のパートナーと連携し、パワー エレクトロニクスに関する研究開発と製造が進められており、新たな300mm GaN製造施設の設立により、こうしたパワー エレクトロニクスの研究開発と量産の連携を強化し、研究成果を産業規模での製造へ移行するまでの期間短縮につなげることを目指すとする。

GaN市場は2031年に約35億ドルへ

Yole Groupの調査によると、GaNパワー半導体市場は2031年までに約35億ドルへ拡大し、2025~2031年に年平均約35%で成長すると予測されている。

AIデータセンターの電力需要増加に加え、エネルギー インフラの高効率化、eモビリティの普及、ロボットの小型・高性能化などが、GaNパワー半導体の需要を押し上げるとみられている。

インフィニオンは、300mmウェハの加工技術を量産へ移行し、1枚当たりのチップ製造数を増やすことで、拡大が見込まれるGaN需要へ対応する。

300mm化による生産効率向上と、フィラッハ拠点の既存インフラを活用した製造能力拡大を組み合わせ、GaNパワー エレクトロニクスの普及と欧州における半導体製造基盤の強化につなげるとしている。