• 若い時期の太陽型星におけるスーパーフレア発生のイメージ(ChatGPT 5.6 Sol、Gemini Pro 作成者:行方宏介特定助教) (出所:京大ニュースリリースPDF)

    若い時期の太陽型星におけるスーパーフレア発生のイメージ(ChatGPT 5.6 Sol、Gemini Pro 作成者:行方宏介特定助教) (出所:京大ニュースリリースPDF)

近年、赤色矮星だけでなく、太陽のような黄色矮星も若い時期はフレアの発生頻度が高いことがわかってきた。そのため、フレアが惑星に対して大きな影響を及ぼしている可能性がある。しかし、恒星におけるフレアの発生メカニズムなどの詳細は、まだ十分には解明されていないのが現状だ。

そうした中、京都大学は、NASAが2018年に打ち上げた系外惑星探査用の宇宙望遠鏡「TESS」が約7年間にわたって取得したデータを解析。年齢約3,000万年から1億年の3つの若い太陽型星において、きわめて大規模な「スーパーフレア」が発生し、恒星表面の「巨大黒点」の面積が大きい時期ほどその発生頻度や総エネルギーが大きくなることを明らかにしたと、10月19日に発表した。

同成果は、京大 理学部の一柳大治朗学部生(研究当時)、同・山田大翔学部生(研究当時)、同・山敷大亮学部生(研究当時)、同・石原一真学部生(研究当時)、京大 白眉センター/大学院 理学研究科の行方宏介特定助教、京大 総合生存学館の山敷庸亮教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する英文論文誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。

若い太陽型の恒星で発生する「スーパーフレア」の謎

太陽の表面に現れる黒点には、非常に強い磁場が集中している。この磁場に蓄えられたエネルギーが急激に解放されることで、爆発現象であるフレアが発生する。フレアが発生すると、強いX線や紫外線、高エネルギー粒子が宇宙空間へ放出されるため、大規模なフレアは、人工衛星の損傷やそれに伴う通信障害などを発生させるリスクがある。

誕生して間もない時期の太陽は、現在よりも速く自転し、より活発な黒点活動やフレア活動を起こしていたと考えられている。太陽の若い時期の活動を直接観測することは不可能なため、重要となるのが、太陽と酷似した質量や表面温度を持つ、年齢が数千万年から1億年程度の若い太陽型星の観測だ。

それらの観測により、若い太陽型星では、現在の太陽で起こる最大規模のフレアを10倍以上も上回る「スーパーフレア」を発生させることがわかってきた。しかし、スーパーフレアは惑星環境にきわめて大きな影響を与え得るにもかかわらず、発生頻度や磁場(黒点)との詳細な関係など、未解明な部分も多い。

太陽では、黒点が大きな時期にフレアが発生しやすくなるという時間変化が知られている。しかし、他の恒星で、黒点が時間とともにサイズが変化した際、その星のフレア活動も一緒に変化するのかは、これまで十分に調べられていなかった。そこで研究チームは今回、若い太陽型星の長期間の観測データを解析することにした。

今回の研究成果

今回の研究で調べられた若い太陽型星は、「りゅう座EK星」(地球から約112光年)、「きょしちょう座DS星A」(同約146光年)、「ヘルクレス座V889星」(同約115光年)の3つである。TESSが7年かけて観測したデータが使用され、約27日間ずつの観測データを合計21期間に分け、それぞれの時期について黒点とフレアの活動が調べられた。

星の表面に黒点があると、星の自転に伴って観測される明るさが周期的に変化する。この明るさの増減の大きさから、それぞれの時期に星の表面をどの程度の黒点が覆っていたのかが推定された。一方、フレアの発生により、星の明るさは短時間だけ急上昇することから、独自の解析プログラムを用いてTESSの観測データから自動検出が行われ、各時期にフレアが何回発生したのか、フレア活動全体がどの程度の規模だったのかが調査された。

その結果、3つの星の全てで、太陽で発生するよりも巨大な黒点、そしてスーパーフレアが発生していることが判明した。さらに、時期ごとの解析から、黒点が大きい時期ほどフレアが頻繁に発生することが改めて確認された。フレアによる増光の大きさと継続時間から個々のフレアのエネルギーを推定し、期間ごとに足し合わせてエネルギーの総量が求められた。その結果、黒点が大きい時期ほど、一定期間にフレアとして放出されるエネルギーの総量も大きくなることが確認された。

これらの結果は、若い太陽型星においても、黒点面積とフレア活動の活発さが深く関係していることを示している。太陽で知られている黒点とフレアの関係が、最大級の太陽フレアを大きく上回るスーパーフレアを起こす若い星にも共通していることが明らかにされた。

今回の研究により、現在の太陽で知られている黒点とフレアの関係を、若く非常に活動的な太陽型星にまで広げて理解できるようになった。このことから、かつての若い太陽も現在よりも大きな黒点を持ち、巨大なフレアを頻繁に発生させていた可能性があることも明らかにされた。

フレアに伴う強いX線や紫外線、高エネルギー粒子は、形成されて間もない水星から火星までの地球型惑星の大気や表面環境に繰り返し降り注いだことが考えられる。若い星で黒点とフレア活動がどのように変化するのかを明らかにすることは、太古の太陽の活動を推定し、地球などの形成初期の時代に、太陽の活動が惑星環境へどのような影響を与えたのかを理解することにつながるとした。

一方、今回のような星全体の明るさの観測だけでは、推定された黒点が1つの巨大な黒点なのか、複数の小さな黒点の集合なのかを区別することができない。そのため、観測された黒点の総面積から、その時期に発生し得る最大規模のフレアを正確に予測することは、現時点では困難とする。

今後は、星の表面にある黒点の位置や形状を調べる分光観測と、TESSのような長期の観測データを組み合わせることで、どのような黒点が巨大フレアを引き起こすのかを詳しく調べる必要があるという。また、より多くの若い星を長期間観測することで、若い時期の太陽の活動や、それが惑星の環境に与えた影響をさらに明らかにすることができる可能性があるとしている。