キリンホールディングスは9月28日、国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所との共同研究で、乳酸菌「L.ラクティス プラズマ」を鼻から接種することで、抗ウイルス反応に関わる遺伝子の発現が高まり、接種7日後も免疫反応が増強されることを確認したと発表した。
未知の感染症にも対応できる新たなワクチン開発への応用が期待される。今回の成果は非臨床段階の実験によるもの。
乳酸菌の経鼻接種で抗ウイルス遺伝子の発現が増加
今回の研究では、キリン独自の乳酸菌素材「L.ラクティス プラズマ」を経鼻接種し、鼻腔粘膜細胞における抗ウイルス遺伝子の発現を解析した。
その結果、接種群では対照群と比較して、抗ウイルス遺伝子「Isg15」「Oasl2」「Rsad2」の発現が接種6時間後に増強し、その傾向が24時間後も持続することを確認した。
さらに、接種から3日後または7日後に回収した鼻腔粘膜細胞に、病原体による刺激を模した物質「CpG」を加えたところ、接種群では対照群よりも抗ウイルス遺伝子の発現が高く誘導された。
特に、接種7日後にも反応が確認されたことから、乳酸菌による免疫活性化が一過性のものにとどまらず、病原体への反応を高める「自然免疫記憶」が形成される可能性が示された。
未知の感染症に対応する新たなワクチン開発に期待
一般的なワクチンは、特定の病原体に対する免疫反応を誘導する「獲得免疫」の仕組みを利用している。一方、自然免疫は体内に侵入した病原体などに対して初期段階で働く免疫機構であり、幅広い病原体に反応する特徴がある。
自然免疫記憶は、一度受けた刺激によって自然免疫の反応性が変化し、その後の刺激に対してより効果的に反応する仕組みを指す。
キリンは、この仕組みを利用することで、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに加え、将来出現する可能性のある未知の感染症への備えにつながると期待している。
同社は2021年から国立感染症研究所と共同研究を進めており、2024年には「L.ラクティス プラズマ」の経鼻接種による新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの増殖抑制効果を非臨床実験で確認したと発表している。
今回の成果は、こうした作用に関わる免疫制御メカニズムの理解を進めるものとなる。
なお、今回確認されたのは非臨床実験における免疫関連遺伝子の反応であり、人での感染予防効果やワクチンとしての有効性が確認されたわけではない。

