
政治的不安定、自然災害が多発する中で
2026年(令和8年)8月の夏も暑い日が続く。第二次世界大戦の終戦から81年が経つ。いま世界秩序が混沌とし、国益第一主義で国と国が衝突する姿が目立つ。国益を図るのは当然だが、その利害を調整し、共生・共存を図るのが戦後再出発する時点での共通の思いだったのではないか。その結果として生まれた国際連合(国連)やIMF(国際通貨基金)体制であった。
しかし戦後、東西冷戦構造が生まれ、旧ソ連邦を筆頭とする東側(社会主義体制)と米国を中心とする西側(資本主義体制)の対立構造が顕著になり、地域紛争も起きた。1989年にベルリンの壁が崩壊し、旧ソ連邦も崩壊。民主主義・資本主義体制は勝利とされたが、米国自身も相対的に国力を低下。「米国第一主義」を標榜するトランプ大統領が2期目に入り、関税政策や直接米国自身がホルムズ海峡に攻め入るという事態に突入。
まさに先行き不透明な中で、どう国の舵取りを進めるかという命題を抱えている。国の富をつくる源泉は企業活動である。その意味で企業人・経済人の使命と役割は非常に重いものがある。こうした混沌期に、どういう基本軸、基本理念を持って臨んでいくべきか。
今、ウクライナ戦争が4年も続き、米国とイランの間での衝突で資源・エネルギー価格が左右され、その度に株価が揺れ動く。企業の時価総額も大きく変動。まさに変動の激しい時代。加えて、国内では熊本地震が発生。10年前に被災した地域が再び大地震に見舞われるという痛ましい自然の猛威である。
その中で日本の立ち位置と進路をどう構築するか。
「短期的な問題も非常に大事だが、中長期的にどうなるかということを常に念頭に置いておく必要がある」と日本アジア共同体文化協力機構理事長の宮本雄二氏(元駐中国大使)は切り出し、「米国は大きな変動期に入っている。その中で今の仕組みが尺に合わなくなって、それを自己修正するプロセスが、たまたまトランプ現象で表れていると私は思っています」と語る。
トランプ政権の米国第一主義・自己利益中心の政治は当分続く。世界から手を引くと言いながらも、米国の国益に反すると判断すれば、南米ベネズエラに侵攻したり、イランへの攻撃に向かう。しかし、その米国もグローバル経済と一体化しているのは厳然たる事実。そして中国もグローバル経済と完全に一体化している。その中での米国と中国との駆け引きである。
今はAI(人工知能)が登場し、人類は新しい課題に直面。価値観の違いの中で、どう生き抜くかというテーマを抱える。
日本は同じ価値観を共有する西欧やASEAN、さらにはオセアニアなどとつながりを深め、「日本は世界をまとめ、国と国をつなげる役割がある」というのが宮本氏の考え方。厳しい道だが、実践していかなければならない日本の使命だと思う。
日本は高市早苗政権の下で半導体、量子、バイオなど計17分野の成長投資を進める日本再生戦略を実行。経済再生を図ると共に、大事なのは日本の国としての基本軸をどう構築するかという命題。これは日本の歴史・文化・風土をしっかり見直し、自らのアイデンティティ(基本軸)を確立させて他国とどう共生を図るかということである。
先の通常国会で皇室典範が改正された。2000年余り続く皇統の在り方を巡って国会でも議論が交わされた。男系で続いてきた日本の歴史の重みを大事にすべきとの考えがある。一方、女系天皇の登場も考え直すべきという意見もある。意見は違えども、双方に共通するのは、天皇制は日本が国としてまとまるための根本軸で、「天皇は権力ではなく権威」という認識だ。
世界が宗教戦争の様相を呈している。日本は古来、八百万の神や共生思想につながる神道から出発。6世紀に仏教が入り、神仏習合という共生を果たしてきた。多様性を認め、「和」を尊重し課題解決を図るところからの日本の再出発を始めていきたい。
《対談》【小長啓一・元通産事務次官&武藤敏郎・元財務事務次官】「日本も中国も先人の知恵に学び、現実的な対話を継続するパイプづくりが大事」